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前までの自分なら、素直に姉の幸せを喜べていた筈なのに、今は祝福出来そうにない。表面上は平然を装い何時も通りに振る舞っていたが、ユスティーナの首元の赤い痕を見た瞬間、頭に血が上り怒りに震えた。
ユスティーナが帰宅する一刻程前に、ロイドは帰宅したのだが、珍しく父から話があると呼び出された。
「……僕と姉さんは、血の繋がりがない」
ユスティーナの母は平民出身で父の愛妾くらいの認識だった。そしてユスティーナはその女性と父との娘だと信じて疑った事など無かった。だが今日、父から衝撃の真実を告げられた……。
『お前はオリヴィエ公爵家の跡取りだ。事実を知っておく必要がある』
ずっと腹違いの姉弟だと思っていたのに……ー。
ロイドは、頭がついていかず、暫し呆然とした。仲の良い大好きな姉と血の繋がりがないなんて聞かされたら、普通はショックを受けるに決まっている。それなのに、ロイドは落ち込むどころか、変な高揚感に包まれた。
昔から優しくて面倒見がよく、少し抜けているがしっかり者でもあるそんな姉が好きだった。大好きだった。大切だった。愛していた。だが無論それは家族としてだ。幸せになって貰いたいと何時も願っていた。
ただレナードに邪険にされている姉を見る度に、モヤモヤした気持ちになった。
もし自分がユスティーナの婚約者なら絶対に悲しませたりしないのに……そんな風に思う事もあった。
あの日、ヴォルフラムが姉を王太子妃にすると約束してくれた時は「これで姉さんは幸せになれる」と安堵したが、やはりモヤモヤとした気持ちになった。
その理由は自分でも分からなかったし、その時は別段気に留めることは無かった。
『ただこれはユスティーナには、言う必要はない』
父は本当に不器用な人だ。
一見すると父は冷徹で淡々とし、家族に興味がない様に見える。だがそれは感情表現が苦手なだけであり、ユスティーナの事も大切に思っているとロイドは知っている。
父が言った「必要がない」は、裏を返せば「話すな」との意味だろう。
父とも弟とも血の繋がりがないと知れば、ユスティーナは絶対に傷付く。しかもあの姉の事だ、きっと迷惑を掛けたくないと言って屋敷を出て行ってしまうのは目に見えている。多分父もそれを分かっているのだろう。
ロイドは自室に戻ると、一人悶々と頭を悩ませた。冷静になろうとするが、中々苛々が治らない。
「まさか、婚前に手を出すなんてっ」
これまで想像すらしなかった……少し考えれば分かる事なのに。婚約しているのだから、男女の関係になっても何ら不思議ではない。よく聞く話だ。ただずっと、あの姉に無関心なレナードが婚約者であった為、そんな発想次第が無かったのだ。
頭の中にユスティーナがヴォルフラムに抱かれて乱れる姿が浮かび、更に怒りが湧いてくる。部屋の中を意味もなく動き回り、時折ため息と独り言を吐く。
「姉さん……」
レナードは論外だったが、冷静に考えればヴォルフラムも微妙だ。あの時は王太子妃になる事が姉の幸せに繋がり、彼に任せれば大丈夫だと思ったが……今となってはそんな思いは消え失せた。
そもそもだ。ヴォルフラムは確かに王太子としては優秀かも知れないが、人間性にかなり難ありだ。策略家で腹黒く、目的の為なら何でも利用する……人間としては最悪だ。
何時ユスティーナの事を裏切り切り捨てるか正直分からない。幾ら政略的なものとはいえど、そんな人間に大切な姉を任せるなんて危険過ぎる。
ロイドはそこまで考えて、はたと気が付いた。
「血の繋がりはないんだから、僕が姉さんを幸せにすれば良いんだ……」
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