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「う~ん、マイナス100点」


突然部屋の扉が開くと、中にずかずかと、ロランが入って来た。

「きゃっ‼︎」

ロランにすぐに反応を見せたのは、アンジェリカだった。驚き悲鳴を上げる。だがその間も、ディルクはアンジェリカを組み敷いたままだ。


「ロラン、何度も言うけど勝手に入らないでくれるかな?今、取り込み中なんだけど」

「見れば分かるよ。でもさ、ちょっと強引過ぎない?嫌われちゃうよ?ねぇ、アンジェ」


ロランは、アンジェリカを見て満面の笑みを浮かべる。余りにも、この状況に似つかわしくない様子に、アンジェリカは呆然とした。

「……」

だが、ディルクには効果があったようで、暫くアンジェリカを凝視していたが、静かに上から退いた。


「……ディルク、さま」


心配そうに、アンジェリカはディルクを見遣るも、立ち上がり距離を取るように後ずさった。

「…………」

「ディルク様⁈」


ディルクは、苦虫を潰したような表現を浮かべ、何も言わずに部屋を出て行ってしまった。アンジェリカは立ち尽くし、ロランはディルクの後ろ姿を見て、軽くため息を吐くと「マイナス20点」と呟いた。



「で大丈夫?アンジェ。先ずは、部屋移動しようか」





「落ち着いた?」

アンジェリカのドレスの乱れを侍女が直している間、他の侍女がお茶の用意をしていた。

アンジェリカが、連れて来られた部屋はどうやらロランの部屋らしいが、とても第2王子の部屋には見えない。部屋は広いが、物が異様に少なく必要最低限の物しかないようだ。

ベッド、クローゼット、テーブル、椅子、それしかない。ディルクやアルフィオの部屋は、もっと豪華で煌びやかだった。何に使うか分からないような物から、置物まであったのに、この部屋は随分と、淋しい。


「はい、申し訳ありません……」

何に対しての謝罪なのか、アンジェリカ自身も分からないが、口を突いて出たのはそんな言葉だった。

アンジェリカの最後の記憶は、アルフィオの部屋で急な睡魔に襲われ、それから……覚えていない。次に目を覚ましたら、今度はディルクの部屋のベッドに、寝かされていた。そして、ディルクから急な告白を受けたと思ったら……押し倒された。


一体何が何だかんだ、アンジェリカには分からない。


「アンジェが、無事で良かったよ。危うく兄さんに、犯されるところだったね」


ロランの言葉に、アンジェリカはハッとして、一気に顔を赤く染めた。

「ねぇ、アンジェは……兄さんと結婚、したい?」


「ま、まさか‼︎そんんな事っ……」


何故だか、顔が熱い。きっとあんな事されたからだと、アンジェリカは思うが……落ち着かない。

「そっか、なら良かった」

「え?」

「じゃあ、僕と結婚しようか」

ロランは、まるで「散歩しようか」くらいの軽い感じで話している。アンジェリカは、始め何を言われたのか分からず呆然としていた。

「あ、あの……誰と、誰がですか」

「ん?勿論、僕とアンジェしかいないよね?」


さも当然のように、ロランは言うが。普通におかしい。

「な、何故、私とロラン、様が……」


「だって、僕と君は運命だから」

「運命?」

「運命だ、にゃ~ん」


ロランは、不意に猫の鳴き真似をした。アンジェリカは、ハッとして、ロランの顔をまじまじと見遣る。


「猫、さん……?」


「そう、ネタバラシするとね。実は、僕が猫のフリをしてたんだよ、にゃ~ん」





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