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25不老不死のイメージ
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「新しい派遣社員はどんな感じでしたか?」
「社会慣れしていない、口下手な人でした」
相沢と別れた後、永徳が待つ駐車場まで歩き、待っていた車に乗り込む。実乃梨が車に乗ったことを確認して、永徳はすぐに車を発進させる。
今日は永徳の方から実乃梨に質問があった。特に考えることなく、実乃梨は相沢の印象を正直に口にする。そのまま、昔の自分と重ねてしまったことも話してしまう。
「まるで、昔の私を見ているようでした」
「昔の栄枝さん、ですか?」
「今でこそ、世の中を知りすぎて、斜に構えた態度を取っていますが、私にだって若い頃がありました。当然、社会人になりたての頃もありました」
首をかしげる永徳の姿に、実乃梨は言葉を続ける。永徳はそんな実乃梨の姿を見て、何が面白いのか、口元を片手で押さえて笑い出す。
「なんか、想像がつきません。どちらかというと、今でもあまり、社会人としての貫禄がない気がします。栄枝さんが不老不死と言われても、すぐには信じられませんでした」
今も、半信半疑ですよ。と話す永徳に悪気はなさそうだった。そのため、疑問に思ったことを口にする。
「永徳さんは、不老不死について、どんなイメージを持っていますか?」
「どんなと言っても……。なんとなくですが、長く生きているから『偉そうなイメージ』ですかね。後は年を取らないから、いつまでも若者気分の『ナルシスト』とか」
どうやら、永徳も不老不死の間違ったイメージを持っているようだ。どちらかといえば、その真逆に位置するのが、実際の不老不死の女性たちである。
「言っておきますが、それは永徳さんたち一般人の勝手なイメージで、実際は」
いざ、言葉を口にしようとすると、なぜか言葉に詰まってしまう。それがなぜか実乃梨にはわかっていた。そもそも、考えればわかることだ。不老不死になるための、いや、不老不死になってしまう条件を思い出せば、おのずと答えは出てくる。
「そもそも、永徳さんは不老不死になってしまう条件は知っていますよね?」
自分から間違いを正すのはあきらめ、条件から徐々に気付かせることにする。
「あれ、ですよね。三十歳までに性行為をしていない女性」
「正解です。そこから、私を含めた彼女たちが、どのような性格なのか想像は尽きませんか?いくら年を重ねても、人間、根本的な性格が変わることはありません」
「それは……」
ようやく、自分の不老不死に対するイメージが間違っていることに気付いたのか、永徳は申し訳なさそうな顔をする。
「わかっていただけましたか?不老不死というと、『偉そうなナルシスト』みたいなことをイメージしがちですが、実際は違います。他にも、『人生経験が豊富』『人をだまして、好き勝手生きている』『年齢にとらわれない自由人』などと言うのは、ただの妄想でしかありません。現実に存在している不老不死の女性たちは、みな、私と同じように口下手で人生を必死に生きている人たちだと思います」
話しているうちに、家の近くの駐車場に到着したようだ。駐車場に停められた車から降りた実乃梨は、何か口にしようとして、口を開いては閉じることを繰り返している永徳の姿を見つめる。
自分のような人間に対しても、真摯に向き合うこの人は、きっと結婚してもよい家庭を築いていけるだろう。そんな男性と結婚する女性もきっと、素敵な人だろう。そんな彼に、さっさと自分の護衛任務を終わってもらえるようにしなくては。
「今日もありがとうございました。明日もよろしくお願いします」
結局、永徳は実乃梨とアパートの前で別れるときも言葉を口にすることはなかった。そのことが気になったが、実乃梨はそのまま玄関で別れて家に入る。
「もし、不老不死が栄枝さんみたいな人ばかりなら、僕は……。ああ、本当に僕は、あなたをずっと……」
家の中に入った実乃梨を確認した永徳が一人ぼそりとつぶやく。永徳の独り言は誰に聞かれることはなかった。
「社会慣れしていない、口下手な人でした」
相沢と別れた後、永徳が待つ駐車場まで歩き、待っていた車に乗り込む。実乃梨が車に乗ったことを確認して、永徳はすぐに車を発進させる。
今日は永徳の方から実乃梨に質問があった。特に考えることなく、実乃梨は相沢の印象を正直に口にする。そのまま、昔の自分と重ねてしまったことも話してしまう。
「まるで、昔の私を見ているようでした」
「昔の栄枝さん、ですか?」
「今でこそ、世の中を知りすぎて、斜に構えた態度を取っていますが、私にだって若い頃がありました。当然、社会人になりたての頃もありました」
首をかしげる永徳の姿に、実乃梨は言葉を続ける。永徳はそんな実乃梨の姿を見て、何が面白いのか、口元を片手で押さえて笑い出す。
「なんか、想像がつきません。どちらかというと、今でもあまり、社会人としての貫禄がない気がします。栄枝さんが不老不死と言われても、すぐには信じられませんでした」
今も、半信半疑ですよ。と話す永徳に悪気はなさそうだった。そのため、疑問に思ったことを口にする。
「永徳さんは、不老不死について、どんなイメージを持っていますか?」
「どんなと言っても……。なんとなくですが、長く生きているから『偉そうなイメージ』ですかね。後は年を取らないから、いつまでも若者気分の『ナルシスト』とか」
どうやら、永徳も不老不死の間違ったイメージを持っているようだ。どちらかといえば、その真逆に位置するのが、実際の不老不死の女性たちである。
「言っておきますが、それは永徳さんたち一般人の勝手なイメージで、実際は」
いざ、言葉を口にしようとすると、なぜか言葉に詰まってしまう。それがなぜか実乃梨にはわかっていた。そもそも、考えればわかることだ。不老不死になるための、いや、不老不死になってしまう条件を思い出せば、おのずと答えは出てくる。
「そもそも、永徳さんは不老不死になってしまう条件は知っていますよね?」
自分から間違いを正すのはあきらめ、条件から徐々に気付かせることにする。
「あれ、ですよね。三十歳までに性行為をしていない女性」
「正解です。そこから、私を含めた彼女たちが、どのような性格なのか想像は尽きませんか?いくら年を重ねても、人間、根本的な性格が変わることはありません」
「それは……」
ようやく、自分の不老不死に対するイメージが間違っていることに気付いたのか、永徳は申し訳なさそうな顔をする。
「わかっていただけましたか?不老不死というと、『偉そうなナルシスト』みたいなことをイメージしがちですが、実際は違います。他にも、『人生経験が豊富』『人をだまして、好き勝手生きている』『年齢にとらわれない自由人』などと言うのは、ただの妄想でしかありません。現実に存在している不老不死の女性たちは、みな、私と同じように口下手で人生を必死に生きている人たちだと思います」
話しているうちに、家の近くの駐車場に到着したようだ。駐車場に停められた車から降りた実乃梨は、何か口にしようとして、口を開いては閉じることを繰り返している永徳の姿を見つめる。
自分のような人間に対しても、真摯に向き合うこの人は、きっと結婚してもよい家庭を築いていけるだろう。そんな男性と結婚する女性もきっと、素敵な人だろう。そんな彼に、さっさと自分の護衛任務を終わってもらえるようにしなくては。
「今日もありがとうございました。明日もよろしくお願いします」
結局、永徳は実乃梨とアパートの前で別れるときも言葉を口にすることはなかった。そのことが気になったが、実乃梨はそのまま玄関で別れて家に入る。
「もし、不老不死が栄枝さんみたいな人ばかりなら、僕は……。ああ、本当に僕は、あなたをずっと……」
家の中に入った実乃梨を確認した永徳が一人ぼそりとつぶやく。永徳の独り言は誰に聞かれることはなかった。
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