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67これからも不老不死として生きていく
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「12月24日。奥入瀬商社に不法侵入した男二人が逮捕されました。男はこの会社の従業員の女性に対して、自分の婚約者だと名乗っていて、もう一人はその彼女の知り合いだと、容疑を否認しています」
実乃梨はスマホでニュースを見ていたが、自分が関係した事件が書かれた記事を見つけると、最後まで読まずにスマホを閉じてしまう。永徳たちの事件はネットに上がっているが、和音や相沢の死はネットで探しても見つからなかった。相沢については、難産の末、親子ともに亡くなったと聞いた。しかし、和音については、殺されたというのに、一言もネットで情報が上がっていない。永徳からもたらされた情報から、セイという男性が殺害したのだろう。理由は不明だが、彼の心情を考える意味はない。
「私に関わった人間は誰であれ、消えていく」
朝食を食べながら、実乃梨はこれまでのことを振り返る。あの日、永徳たちは実乃梨が意識を失っている間に、警察によって取り押さえられたらしい。そして、今回の事件は幕を閉じたかのように思われた。実乃梨が目を覚ましたのは会社の医務室で、古屋敷に永徳たちが警察に連行されたと聞かされた。その後は事件を聞きつけたマスコミによって、会社の周りが騒がしくなると思われたが、そういったことはなく、実乃梨は古屋敷に家まで送ってもらった。
「【速報】逮捕された男性二人が、警察署内で自殺しているのが見つかりました」
朝食を食べ終えて、手持無沙汰に再度、スマホでニュースを眺めていると、ある速報が目に入る。
「ごちそうさま」
実乃梨はその記事を見ても、表情が変わることはなかった。朝食の雑煮で使ったお椀を片付けるためにキッチンに向かう。外を見ると、雪は降っておらず、雲一つない青空が窓から見えた。
事件の翌日、実乃梨は会社に退職届を提出した。
「あんな事件があった後だもんね。仕事には慣れてきたころだと思っていたけど、仕方ないね」
退職届を受け取った社長は、実乃梨の事情を知り、特に反論されることなく退職届は受理された。
「あの、社長。昨日はどうして、マスコミが会社に」
「それは企業秘密。ただ、これだけは言っておくよ。僕は不老不死の女性の味方だよ。僕の妻は不老不死だった。それが回答になるといいけど」
来なかったのですか、と口にすることはなかった。六十を超えた社長が実乃梨の口元に人差し指を向けて首を振る。そして、にっこり笑い、これ以上の詮索を実乃梨に許すことはなかった。
新しく引っ越した場所は、東北から離れた九州のとある県。あんな事件があったら、同じ会社に勤めることはできない。社長は不老不死に理解ある人間だった。そして、権力を持った人間であったようだ。一企業の社長であるにも関わらず、実乃梨のことがマスコミに嗅ぎまわれないように規制してくれた。
さらには、新しい実乃梨の仕事場と住む場所までも提供してくれた。永徳とセイの二人の死も社長が関与しているのだろうと、実乃梨は推測しているが、実際のところはわからない。
不老不死はいまだに世間からしたら、マイノリティな存在であり、腫れ物扱いされることが多い。和音が起こした事件がきっかけとなったのか、時折、殺される直前までは不老不死であった女性が殺害される事件が起こっていた。
そんな不老不死にとって、生きやすいとは言えない世の中で、実乃梨は新たな地で、また一人の人生を歩むことになるのだった。
実乃梨はスマホでニュースを見ていたが、自分が関係した事件が書かれた記事を見つけると、最後まで読まずにスマホを閉じてしまう。永徳たちの事件はネットに上がっているが、和音や相沢の死はネットで探しても見つからなかった。相沢については、難産の末、親子ともに亡くなったと聞いた。しかし、和音については、殺されたというのに、一言もネットで情報が上がっていない。永徳からもたらされた情報から、セイという男性が殺害したのだろう。理由は不明だが、彼の心情を考える意味はない。
「私に関わった人間は誰であれ、消えていく」
朝食を食べながら、実乃梨はこれまでのことを振り返る。あの日、永徳たちは実乃梨が意識を失っている間に、警察によって取り押さえられたらしい。そして、今回の事件は幕を閉じたかのように思われた。実乃梨が目を覚ましたのは会社の医務室で、古屋敷に永徳たちが警察に連行されたと聞かされた。その後は事件を聞きつけたマスコミによって、会社の周りが騒がしくなると思われたが、そういったことはなく、実乃梨は古屋敷に家まで送ってもらった。
「【速報】逮捕された男性二人が、警察署内で自殺しているのが見つかりました」
朝食を食べ終えて、手持無沙汰に再度、スマホでニュースを眺めていると、ある速報が目に入る。
「ごちそうさま」
実乃梨はその記事を見ても、表情が変わることはなかった。朝食の雑煮で使ったお椀を片付けるためにキッチンに向かう。外を見ると、雪は降っておらず、雲一つない青空が窓から見えた。
事件の翌日、実乃梨は会社に退職届を提出した。
「あんな事件があった後だもんね。仕事には慣れてきたころだと思っていたけど、仕方ないね」
退職届を受け取った社長は、実乃梨の事情を知り、特に反論されることなく退職届は受理された。
「あの、社長。昨日はどうして、マスコミが会社に」
「それは企業秘密。ただ、これだけは言っておくよ。僕は不老不死の女性の味方だよ。僕の妻は不老不死だった。それが回答になるといいけど」
来なかったのですか、と口にすることはなかった。六十を超えた社長が実乃梨の口元に人差し指を向けて首を振る。そして、にっこり笑い、これ以上の詮索を実乃梨に許すことはなかった。
新しく引っ越した場所は、東北から離れた九州のとある県。あんな事件があったら、同じ会社に勤めることはできない。社長は不老不死に理解ある人間だった。そして、権力を持った人間であったようだ。一企業の社長であるにも関わらず、実乃梨のことがマスコミに嗅ぎまわれないように規制してくれた。
さらには、新しい実乃梨の仕事場と住む場所までも提供してくれた。永徳とセイの二人の死も社長が関与しているのだろうと、実乃梨は推測しているが、実際のところはわからない。
不老不死はいまだに世間からしたら、マイノリティな存在であり、腫れ物扱いされることが多い。和音が起こした事件がきっかけとなったのか、時折、殺される直前までは不老不死であった女性が殺害される事件が起こっていた。
そんな不老不死にとって、生きやすいとは言えない世の中で、実乃梨は新たな地で、また一人の人生を歩むことになるのだった。
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