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66予想外の展開
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「ねえ、受付から悲鳴みたいな声が聞こえなかった?何かあったのかしら」
「ああ、それはたぶん」
古屋敷さんが実乃梨に不安そうに話しかける。実乃梨が会社を出たのに、また戻ってきたことを不思議がっていたが、忘れ物を取りに来たのだとごまかした。しかし、実乃梨のことよりも、受付での悲鳴が気になるようだ。
「栄枝さん、永徳という男性の方が『自分は実乃梨さんの婚約者』だって……」
実乃梨と古屋敷が話していると、入り口から受付を担当している社員が駆け込んでくる。近づいてきた社員と実乃梨を見比べて、古屋敷が不審そうに実乃梨を見つめる。
「それって、今朝の電話の」
「そろそろ、警察の方が来ると思うので、少しの間、耐えていただけると」
助かります、と言葉を続けようとしたが、途中で止まってしまう。受付担当の社員の後ろから、実乃梨の元護衛、現ストーカーの姿を目にしたからだ。
「ああ、栄枝さん、やっと会えました。探すのに苦労したんですよ。僕に行き先を教えてくれないから……」
実乃梨と視線が合った永徳が、嬉しそうに笑って近づいてくる。実乃梨と永徳との間には人がおらず、二人の距離は縮まっていく。
「あ、相沢が亡くなったことを和音から聞いたの。難産の末、だったみたいね。生まれた子供はドウシタノ?」
「永遠と子供、ですか?どちらも亡くなってしまいました。やはり、不老不死でないただの女性はモロいですね」
「わ、私の勤めている会社と、居場所はどうやって、つ、突き止めたの?」
何とか会話を続けることで、永徳との距離をできる限り遠ざけようと、実乃梨は永徳に必死に質問する。永徳が一歩近づくごとに、一歩ずつ後退する。そんな実乃梨の様子を楽しそうに目で追いながら、永徳は質問に一つずつ答えていく。
「実乃梨さんの言う和音さんから、聞き出しました。苦労したんですよ」
「か、和音は、わ、私のことを、素直に、あなたに、教えたかしら?」
和音は、相沢としか連絡を取り合っていなかったはずだ。実乃梨のことを考慮して、永徳がもし、実乃梨と接触しようと試みても、簡単に居場所や連絡先を教えるとは思えない。
二人のただならぬ関係を察した社員は、緊迫した空気の中、二人の会話を黙って聞いていた。声をかける勇気のある社員がその場にはいなかった。
「栄枝さんの言う通り、一筋縄ではいきませんでした。なので、無理やり聞き出す羽目になりました。あなたの知り合いだからと、手加減をしようとしましたが、相手の抵抗がすごくて」
「こ、殺したの。か、和音を」
永徳なら、必要とあれば簡単に和音のことを殺してしまいそうだ。実際、彼はあの日、和音が雇った男五人を全員殺害している。最悪な事態になってしまったと、内心で焦っていると、意外な言葉を永徳は口にする。
「いえ、僕は彼女を殺してはいません。殺したのは」
「お初にお目にかかります、実乃梨さん。セイと申します。よろしくね」
いったい、どういう状況だろうか。実乃梨は突然、永徳の後ろから現れた謎の男の出現に情報量が追い付かず、床に倒れそうになる。ふらりと床に手をつきかけると、隣にいた古屋敷が彼らを睨みつけ、実乃梨を守るため、前に進み出る。
「栄枝さんが怖がっているようですが、あなたたちは栄枝さんの敵ですか?」
古屋敷の声に、ようやくこの場の異常な状況を止めようと、事務所内に残っていた社員が動き出す。
社員数人が永徳とセイと名乗る男を取り囲むところまでは目撃したが、それ以降、実乃梨はどうなったのか知ることはなかった。精神がギリギリにすり減り、そのまま意識を失った。
「ああ、それはたぶん」
古屋敷さんが実乃梨に不安そうに話しかける。実乃梨が会社を出たのに、また戻ってきたことを不思議がっていたが、忘れ物を取りに来たのだとごまかした。しかし、実乃梨のことよりも、受付での悲鳴が気になるようだ。
「栄枝さん、永徳という男性の方が『自分は実乃梨さんの婚約者』だって……」
実乃梨と古屋敷が話していると、入り口から受付を担当している社員が駆け込んでくる。近づいてきた社員と実乃梨を見比べて、古屋敷が不審そうに実乃梨を見つめる。
「それって、今朝の電話の」
「そろそろ、警察の方が来ると思うので、少しの間、耐えていただけると」
助かります、と言葉を続けようとしたが、途中で止まってしまう。受付担当の社員の後ろから、実乃梨の元護衛、現ストーカーの姿を目にしたからだ。
「ああ、栄枝さん、やっと会えました。探すのに苦労したんですよ。僕に行き先を教えてくれないから……」
実乃梨と視線が合った永徳が、嬉しそうに笑って近づいてくる。実乃梨と永徳との間には人がおらず、二人の距離は縮まっていく。
「あ、相沢が亡くなったことを和音から聞いたの。難産の末、だったみたいね。生まれた子供はドウシタノ?」
「永遠と子供、ですか?どちらも亡くなってしまいました。やはり、不老不死でないただの女性はモロいですね」
「わ、私の勤めている会社と、居場所はどうやって、つ、突き止めたの?」
何とか会話を続けることで、永徳との距離をできる限り遠ざけようと、実乃梨は永徳に必死に質問する。永徳が一歩近づくごとに、一歩ずつ後退する。そんな実乃梨の様子を楽しそうに目で追いながら、永徳は質問に一つずつ答えていく。
「実乃梨さんの言う和音さんから、聞き出しました。苦労したんですよ」
「か、和音は、わ、私のことを、素直に、あなたに、教えたかしら?」
和音は、相沢としか連絡を取り合っていなかったはずだ。実乃梨のことを考慮して、永徳がもし、実乃梨と接触しようと試みても、簡単に居場所や連絡先を教えるとは思えない。
二人のただならぬ関係を察した社員は、緊迫した空気の中、二人の会話を黙って聞いていた。声をかける勇気のある社員がその場にはいなかった。
「栄枝さんの言う通り、一筋縄ではいきませんでした。なので、無理やり聞き出す羽目になりました。あなたの知り合いだからと、手加減をしようとしましたが、相手の抵抗がすごくて」
「こ、殺したの。か、和音を」
永徳なら、必要とあれば簡単に和音のことを殺してしまいそうだ。実際、彼はあの日、和音が雇った男五人を全員殺害している。最悪な事態になってしまったと、内心で焦っていると、意外な言葉を永徳は口にする。
「いえ、僕は彼女を殺してはいません。殺したのは」
「お初にお目にかかります、実乃梨さん。セイと申します。よろしくね」
いったい、どういう状況だろうか。実乃梨は突然、永徳の後ろから現れた謎の男の出現に情報量が追い付かず、床に倒れそうになる。ふらりと床に手をつきかけると、隣にいた古屋敷が彼らを睨みつけ、実乃梨を守るため、前に進み出る。
「栄枝さんが怖がっているようですが、あなたたちは栄枝さんの敵ですか?」
古屋敷の声に、ようやくこの場の異常な状況を止めようと、事務所内に残っていた社員が動き出す。
社員数人が永徳とセイと名乗る男を取り囲むところまでは目撃したが、それ以降、実乃梨はどうなったのか知ることはなかった。精神がギリギリにすり減り、そのまま意識を失った。
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