双子~それでも二人は共に生きていく~

折原さゆみ

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1突然の訃報

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 物心ついた時から、二人はいつも一緒だった。幼稚園、小学校、中学校、二人は一緒に学校へ通い、一緒に家に帰ることが普通だった。クラスは違っても、休み時間にはいつも互いの教室に行って、一緒に過ごすことが当たり前だった。それくらいに仲が良い双子の兄弟だった。

 その双子は、容姿が瓜二つの一卵性だった。見分けがつくのは両親だけというくらいによく似ていた。しかし、性格は正反対で、兄の太陽ヒナタは、優しい頼りがいのあるしっかりした性格で、弟の三日月ミツキは、反対にいたずら好きでやんちゃな性格であった。両親は二人をとてもかわいがっていた。幼稚園、小学校での行事では、必ず両親ともに参加し、カメラを構えて我が子を見守っていた。

 そんな彼らの生活が一変したのは、双子が中学三年生の春のことだった。それは、突然の出来事だった。彼らの父親が事故で亡くなった。



「いってきます。」
「いってらっしゃい。今日も仕事頑張ってね。」

そうやって、いつものように、朝の何気ない会話をして、自分の夫を仕事に送り出した母親。夕方自分の夫が帰らぬ人となったと知らせを受け、ショックでしばらく放心していた。

車で帰宅途中、父親は交通事故にあったようだ。相手の車は、スピード違反で警察に追跡されていた。
警察の追跡から逃れるために、相手の車は無我夢中で走り続けた。走行中に信号を無視し、青信号で走行しようとした父と、正面衝突となった。父親が乗っていた車は大破。父親は即死だったらしい。相手も重傷を負ったが、命に別状はなかったようだ。


「かわいそうに。子供が二人いて、父親を亡くしてしまうなんて。」
「運が悪かったわね。これから、あの家族はどうするのかしら。」

 あちこちで、ひそひそと聞こえる声。葬式は、事故ということもあり、マスコミも来ていて、騒がしいものとなった。葬式の最中、母親はずっと、涙を流していた。双子の息子も涙を流して泣いていた。




 この葬式を境に、母親は狂っていった。葬式前までは、最愛の夫を亡くしたと実感が湧かなかったのか、気を張っていたのか。それとも、葬式の準備などで忙しくて何も考えられなかったのか。いずれにしろ、普通に会話をし、息子たちにも弱弱しいながらも笑顔を見せていた。


「私が頑張らなくちゃね。あんたたち二人をしっかり、私が育てて見せるから。」

 母親は、そう言って自分に言い聞かせていた。息子二人は、そのけなげな言葉を聞き、なるべく母親に迷惑をかけないようにしようと心に誓った。




 葬式を境に母親は何もしなくなった。朝起きて、そのまま一日中、ぼうっと無為に過ごしている。いままで行っていた家事を一切やらなくなった。食事の用意、洗濯、掃除などすべてを放棄した。

 息子二人は驚いた。自分の母親はどうしてしまったのだろう。父親がいなくなることで、こうも魂が向けたようになるのだろうか。

 疑問に思ったが、生きていくためには自分たちが家事を行うしかない。双子で手分けして、家事を行う毎日となった。



 そんな日々を過ごしていたが、彼らは中学三年生。卒業後の進路を決めなければならない大事な時期になっていた。母親はもはや、生きた屍のように何もしない。一応、食事を用意すると、食べてくれ、トイレも自分で行くし、着替えも行っている。

 しかし、ただそれだけだ。生活に必要なことは惰性で行っているようだが、それ以外は何もしていない。進路のことももう、一緒に考えることもできないだろう。



「ミツキ、進路だけど、どうする?高校にはもちろん行きたいけど、母さんが心配だよ。」

「別に心配しなくても大丈夫でしょ。生きる上での必要最低限のことはしているし。高校も同じところにして、二人で一緒に通おうよ。」

 双子は、学校からの帰り道、進路について話し合っていた。母親のことは心配だが、病気ではないし、双子が学校へ通っている間に問題を起こしているわけでもない。ただ、何もしていないだけだ。


 双子は、特にこの状況を深刻に受けることなく、進路についても、当たり前のように双子で一緒の高校に通えると思っていた。





 家の前には、一台の見知らぬ車が止まっていた。そして、玄関前には一人の老人が母親と話をしていた。母親は、必死に何かを訴えている。その様子は尋常ではなかった。髪を振り乱し、大声で喚き散らしている。

 双子は近くの物陰に隠れて、様子をうかがうことにした。


「どうして、あなたたちに息子を預けなければならないのですか。息子は私がしっかり責任もって面倒を見ます。どうかお引き取りください。これ以上、私から何も奪わないで。」

「そうはいっても、母親一人で子供を育てるのは大変だろう。幸い、私にはあなたたちを養うだけのお金がある。息子も、あなたたち家族に幸せに生きてもらいたいと思っているだろう。ぜひ、うちに来て一緒に暮らさないかね。」

「そうやって、私をだまそうとしても無駄です。母親から息子を奪おうとするくそじじいの助けなんていらない。何度も言いますが、とっとと自分の家に帰ってもう二度と私たち家族に近づかないで。」

「だが、息子双子の今後はどうするのかね。双子を養っていけるだけの資金はあるのかね。」

「そんなこと、あんたには関係ない。これ以上、ここにとどまるようなら、警察呼びますよ。」

「仕方ない。今日はこれでお暇するとしよう。」



 どうやら話は終わったらしい。こっそり物陰から双子が顔をのぞくと、老人と目があった。老人は悲しそうに微笑むと、車に乗り込み、走り去っていった。

「あれは、きっと僕たちのおじいさんだね。」
「そうだろうね。母さん、断ってたけど、俺たち、これからどうなるんだろう。」

 双子は老人が走り去った後を見つめ、母親がいる家に入っていった。今後、さらに大変な展開になることをこの時の双子は想像することができなかった。
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