双子~それでも二人は共に生きていく~

折原さゆみ

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5三者面談~ヒナタ~

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 三者面談は結局、母親が来ることになった。二回も学校に来てもらうのは申し訳ないという学校の判断により、放課後にヒナタ、ミツキの順番で面談が行われた。

 季節は夏休み目前の7月半ば。蒸し暑い日に三者面談は行われた。

 放課後、生徒が教室からいなくなり、ヒナタと担任だけが教室に残っている。外からは部活をやっているのだろう。運動部の掛け声が教室まで響いてくる。


「ヒナタ君のお母さん、遅いですね。きちんと今日面談があると言いましたか。」
「言いました。ただ、最近の母は物忘れが多いので、もしかしたら忘れているのかもしれません。電話してみたいのですが、借りてもいいですか。」

「いいですよ。お母さんはずいぶん、お父さんを愛していたのですね。ああ、すみません、この話題は禁句でしたね。」

「いえ、大丈夫ですよ。確かに母は父を愛していたみたいです。ただ、今思うと、愛していたというよりは執着していたという方があっているような気がしますが。」

 時間つぶしにそんな話をしていると、廊下から足音が聞こえてきた。そして、教室の扉が勢いよく開かれた。

「遅れてすいません。水藤ヒナタの母です。今日はよろしくお願いします。」

 やっと母親がやってきた。母親は急いできたのだろう。髪が乱れて、息も上がっている。服装は珍しく、正装していた。母親のしっかりした格好をしているのをヒナタは久しぶりに見た。父親が亡くなってからは初めてのような気がする。白いジャケットにスカートのスーツ姿である。ただし、スカートは膝丈より少し短く、母親にしては短い気がする。さらにブラウスのボタンも大胆に開けていて、露出していた。

「いえいえ。そこまで遅れてはいませんよ。では、ヒナタ君の進路について話していきましょう。」

 こうして、ヒナタと先生と母親の三者面談が始まった。

「まずは、ヒナタ君本人の希望ですが、彼は県立のA高校に進学を希望しています。彼の成績なら、このまま勉強を怠らなければ、問題はないでしょう。」

「私はヒナタにはK学園に進学してほしいと考えています。K学園は大学進学率もトップクラスだし、何より、私の夫の出身校でもあります。男子校で女子に構うことなくしっかりと勉強ができる良い環境だと思うので、そちらに進学させるつもりです。」

「ええと、あの進学率県内トップのK学園ですか。ですが、K学園は私立でお金がかかると思いますが、費用は大丈夫なのですか。ほら、あなたの息子はヒナタ君だけでなく、弟のミツキ君もいるでしょう。双子ですから、一度に高校生が二人ということになりますから。」

「先生は私に文句を言うつもりですか。先生は母親の言うことに頷くだけでよいと思います。これは家族間の問題です。大丈夫かと、心配される筋合いはありません。私が彼らのたった一人の保護者です。保護者である私がしっかり進路を導いていくことが必要でしょう。息子たちはまだ中学生で幼いのですから。」

「まあ、そうだとは思いますが、ヒナタ君はA高校に進学を希望していますよ。ヒナタ君の意見は聞いてないのですか。」


 母親が、自分をK学園に通わせたいということをヒナタは初めて聞いた。父親が生きているときにそのような話を聞いたことは一度もなかった。中学卒業後の進路は、ヒナタの自由に決めればいいと両親は言っていた。本人に進路を丸投げしていた感じだった。

 だから、彼は母親に迷惑をかけないように、県立でなおかつ家から近いA高校を受験しようと決めていた。たまたま、A高校が進学率が高い高校であっただけで、近いならどこでもよかった。


 母親と担任の会話を聞きながら、自分の進路なのに始めて聞くことばかりで、なぜか他人ごとのように考えていたら、先生と母親が言い争いをしていることに気付いた。仕方なく、この場を収めるためにヒナタは口を開いた。

「先生、母さんがそう言っているので、もう一度、家に帰って母と相談します。」
「そうだね。それがいいよ。ヒナタ君の人生だから、ヒナタ君の行きたい高校に行けばいいと先生は思うよ。」

「ヒナタはK学園に行くと決まっています。ヒナタを惑わすのはやめていただけますか。」
「そうは言っても……。」

「先生、次の生徒が控えているでしょう。僕のことは大丈夫ですから、後日、希望の受験先を言いますから、これで終わりましょう。母もミツキの面談がこの後控えていますので。」

 無理やり面談を終わらせたヒナタだったが、この後、母に自分が受験したい高校を押し通す仕事が待ち受けているため、憂鬱な気分だった。
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