双子~それでも二人は共に生きていく~

折原さゆみ

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17夏休み終盤

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 お盆も終わり、夏休みも終盤に近付いてきた。そろそろ、新学期に向けての準備を始めなければならない。一度、母親がいる家に戻って、今後を話しあう必要がある。


「おじいさん。すいません。夏休みが終わる前に一度、母のもとにもどろうと思うんですが。」

 祖父は相変わらず、双子を父が子供の姿になって戻ってきたと勘違いしていた。現実逃避を続けていた。それでも、双子が父のふりをすることはなかった。それにも慣れたようで、祖父は双子がおじいさんと呼ぶことを訂正しなくなった。


「そうかい。夏休みも、もうすぐ終わりだからねえ。しかし、匠。その格好であずささんの前に戻るのはお勧めしないなあ。まるで、あずささんの息子のような年ごろではないか。そういえば……。」


「はあ。」

 ミツキは大きなため息をつく。ヒナタも同じだったが、祖父の前ではさすがに遠慮していた。そもそも、自分たちはあずさの正真正銘の息子である。その恰好でといわれても、大人の姿になることもできないし、若返ることもできない。


「しかし、あずささんもきっと匠のことを心配していると思うから、一度あずささんに顔を見せるのもいいだろう。」


 ただし、と付け加えた言葉は、いまだに祖父が現実逃避をしているという証拠だった。

「あずささんを困らせないように、一人だけで行きなさい。私はもう慣れたが、いきなり匠が二人も現れたら、さすがのあずささんも驚くだろうから。」


 祖父は、いまだに、ヒナタとミツキのどちらかが偽物であると信じていたが、どちらが匠か判断に迷っていた。そのため、最近では、どちらも本物の匠で、自分の愛が深すぎて、双子に分裂してしまったと思うことにしたようだ。どちらにしよ、現実逃避なのは変わりがない。


「僕たちは二人で一つのようなものです。だから、いつも二人で行動をしなくてはいけません。もし、離れ離れにしたら、きっと僕たち二人は生きてはいないでしょう。」

 ヒナタは宣言する。その言葉に祖父は納得したのだろうか。二人で家に戻ることに反対はされなかった。


「ごほ、ごほっ。では、あずささんの家までは、執事に頼むとしよう。私は少し気分がすぐれないので、一緒に行くことは遠慮しておくよ。」

 話は終わったようで、祖父は双子の前から去っていく。去っていく姿からは、弱弱しさが感じられた。



「じいさん、どこか身体の具合でもわるいのか。」

「わからないけど、僕たちが来る前から、持病があって、病院にはよくいっていたみたいだから、悪いところはあるだろうね。」

 双子が祖父の家で夏休みを過ごしている間に、祖父の容態は悪化していた。先ほどのように急に咳をしたり、青白い顔をしていたりと、具合が悪そうだった。そのたびに大丈夫だと気を張っていたが、それでも心配になった。


「このまま家に帰って、戻ってきたら、じいさんが、なく……。」

「口に出していいことと悪いことがあるぞ。とはいっても、やばいかもしれない。」


 双子の嫌な予感は的中していたが、それを知るのはもう少し先のことだった。




 荷物をまとめ、久しぶりに実家に向かっていた車の中で、執事が双子に話しかけてきた。普段、双子に話しかけることはなく、身の回りの世話を黙々としている影のような人だった。


「あなたたちのおじい様、幸之助様のことは、執事として申し訳なく思っています。しかし、それも長くはないでしょう。老人の最後の気の迷い、願いとして、もう少しおつきあいください。」

「やはり、どこか身体の調子がすぐれないのでしょうか。」

「お恥ずかしいことで。隠しているようなので、執事の私が話していいことかわかりませんが、それでも、私個人としては、話しておきたいことです。」

 夏休みも終わりに近づいていたが、外は相変わらずの猛暑であった。車の中は冷房が効いていたので、涼しい空間であった。



「下屋敷家には息子が二人いました。二人の息子をおじい様は、それはそれはかわいがっておられました。それこそ、目に入れてもおかしくはないほどに。ただし、それは幼いころのこと。兄の方は優秀だったが、弟の方は出来があまりよくありませんでした。両者の差が広がるにつれて、兄弟での扱いに差が生まれました。兄の方は、兄弟での差別を良しとはしませんでした。もちろん、弟の方もですが……。」


 話は実家に着く直前まで続いた。話を聞いた双子は、衝撃を受けた。とはいえ、先が長くないと言われた祖父のために、自分たちができることは限られていた。不本意ながら、老人の最後の願いをかなえることに決めた双子だった。
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