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ヒナタが入学式に出ている間、ミツキはバイト先で面接を受けていた。アルバイト先に選んだのは、家から電車で通わなければならない、少し遠い場所にあるファミリーレストランだった。
自分の家の近くにしようと思ったのだが、そうなると、中学の同級生が来る可能性がある。そうなると、近況報告をしあうことになるのは目に見えているので、仕方なく別の町でバイトをするしかなかった。
「10時に面接を予約している水藤ミツキ(すいとうみつき)です。」
ファミリーレストラン「ジョイハッピー」の面接に来ていた。中に入って店員に面接の旨を伝えると、店長らしき女性が控室に案内してくれた。
「あなたが面接希望の子ね。さっそく、面接を始めましょうか。」
面接を進めていくのは、やはりこの店の店長だった。事前に履歴書を持参とのことだったので、ミツキは用意した履歴書を店長に渡していた。
「A高校に行っているということだけど、あそこは進学校でバイト禁止だったはずだけど、うちで働く許可はもらっているのかしら。」
バイトは、ミツキの名前で行うことにしていた。そして、実際に通ってはいないが、A校に通っているということにした。ミツキはヒナタと考えた通りの言い訳を話すことにした。
「実は、うちは母子家庭で父親が早くに亡くなってしまって。それで、学費のために働くことを許してもらったんです。」
悲しそうに目を伏せて話すミツキに何を思ったのか、店長は、急にヒナタの顔を掴んで上を向かせた。当然、悲しそうなふりをしていただけなので、顔を見られてしまえば、本当に悲しんでいないということがばれてしまう。
「いきなり何を……。」
「別に、バイト禁止で働いている奴もいるし、うちは慢性的に人手不足だから、そんな言い訳はいらない。要は、働く気があるかないかで判断するだけ。」
店長は、ミツキの働く意欲を確かめるための確認をする。
「水藤ミツキ君。あなたはここで働きたいのかい。」
「ぜひ、働かせてください。」
はっきりと彼女の目を見て答えたミツキ。その様子に満足したのだろう。
「その心意気でこれからしっかりと働いてくれ。」
バイトは採用されそうだったのだが、バイトの仕事内容で、ミツキと店長の意見の食い違いがあり、口論となった。
「それで、ミツキ君には、ホールを手伝ってほしいの。」
「ええと、できればキッチンを希望したいんですけど……。」
ミツキはホールではなく、キッチンを希望していた。ホールで働くということは、店に来た客対応の仕事だ。わざわざ、中学の同級生に鉢合わせないように別の市でバイトしようと決めたのに、バイト内容が接客では意味がない。
「そう言わないで。ミツキ君はイケメンでしょう。それに、見た限り、好青年と見た。そんな接客で必要な要素を備えている学生を私がキッチンに回すはずないでしょう。」
「ええと、それはどういう意味……。」
「若いイケメンの学生は接客に決まっているという話です。」
「そこを何とか……。そうだ。俺、実は人前に出るのが苦手なんです。それに笑顔が作れないです。それって、接客をするうえで致命的ですよね。」
店長には申し訳ないが、ミツキは絶対に接客になるものかと反論を続けた。あまりの勢いに店長も驚いたのか、最終的には、キッチンで働くことで合意した。
「そこまでミツキ君が言うのなら、仕方ない。でも、ホールに人が足らないときは入るように。よし、それでは、バイトに必要な書類を書いていくとしようか。」
「人が足らなくならないことを祈ります。」
バイトが決まり、こちらも新しい日常が始まるのだった。
「まあ、ミツキ君は顔がいいから、どうにかしてホールにしてみせるけど。ていうか、ホールで即採用にしたかったけど、手放すよりはましか。」
ぼそっとつぶやいた店長のつぶやきはミツキには聞こえなかった。
自分の家の近くにしようと思ったのだが、そうなると、中学の同級生が来る可能性がある。そうなると、近況報告をしあうことになるのは目に見えているので、仕方なく別の町でバイトをするしかなかった。
「10時に面接を予約している水藤ミツキ(すいとうみつき)です。」
ファミリーレストラン「ジョイハッピー」の面接に来ていた。中に入って店員に面接の旨を伝えると、店長らしき女性が控室に案内してくれた。
「あなたが面接希望の子ね。さっそく、面接を始めましょうか。」
面接を進めていくのは、やはりこの店の店長だった。事前に履歴書を持参とのことだったので、ミツキは用意した履歴書を店長に渡していた。
「A高校に行っているということだけど、あそこは進学校でバイト禁止だったはずだけど、うちで働く許可はもらっているのかしら。」
バイトは、ミツキの名前で行うことにしていた。そして、実際に通ってはいないが、A校に通っているということにした。ミツキはヒナタと考えた通りの言い訳を話すことにした。
「実は、うちは母子家庭で父親が早くに亡くなってしまって。それで、学費のために働くことを許してもらったんです。」
悲しそうに目を伏せて話すミツキに何を思ったのか、店長は、急にヒナタの顔を掴んで上を向かせた。当然、悲しそうなふりをしていただけなので、顔を見られてしまえば、本当に悲しんでいないということがばれてしまう。
「いきなり何を……。」
「別に、バイト禁止で働いている奴もいるし、うちは慢性的に人手不足だから、そんな言い訳はいらない。要は、働く気があるかないかで判断するだけ。」
店長は、ミツキの働く意欲を確かめるための確認をする。
「水藤ミツキ君。あなたはここで働きたいのかい。」
「ぜひ、働かせてください。」
はっきりと彼女の目を見て答えたミツキ。その様子に満足したのだろう。
「その心意気でこれからしっかりと働いてくれ。」
バイトは採用されそうだったのだが、バイトの仕事内容で、ミツキと店長の意見の食い違いがあり、口論となった。
「それで、ミツキ君には、ホールを手伝ってほしいの。」
「ええと、できればキッチンを希望したいんですけど……。」
ミツキはホールではなく、キッチンを希望していた。ホールで働くということは、店に来た客対応の仕事だ。わざわざ、中学の同級生に鉢合わせないように別の市でバイトしようと決めたのに、バイト内容が接客では意味がない。
「そう言わないで。ミツキ君はイケメンでしょう。それに、見た限り、好青年と見た。そんな接客で必要な要素を備えている学生を私がキッチンに回すはずないでしょう。」
「ええと、それはどういう意味……。」
「若いイケメンの学生は接客に決まっているという話です。」
「そこを何とか……。そうだ。俺、実は人前に出るのが苦手なんです。それに笑顔が作れないです。それって、接客をするうえで致命的ですよね。」
店長には申し訳ないが、ミツキは絶対に接客になるものかと反論を続けた。あまりの勢いに店長も驚いたのか、最終的には、キッチンで働くことで合意した。
「そこまでミツキ君が言うのなら、仕方ない。でも、ホールに人が足らないときは入るように。よし、それでは、バイトに必要な書類を書いていくとしようか。」
「人が足らなくならないことを祈ります。」
バイトが決まり、こちらも新しい日常が始まるのだった。
「まあ、ミツキ君は顔がいいから、どうにかしてホールにしてみせるけど。ていうか、ホールで即採用にしたかったけど、手放すよりはましか。」
ぼそっとつぶやいた店長のつぶやきはミツキには聞こえなかった。
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