47 / 47
43二人は共に生きていく
しおりを挟む
ヒナタとミツキの家が放火されてから、八年が経過した。二人は無事に目標の大学に入学することができた。学部は違うが、大学は同じなので、一緒に大学近くのアパートで暮らしていた。
双子の面倒を見ていた祖母は病気で亡くなった。自分の娘が亡くなったストレスもあるのだろう。双子を引き取った苦労もあったのだろう。それでも、双子の生活を守るために必死で耐えてきたのだろうか。高校を卒業するまでは命にかかわるような病気にかかったことはなかった。もともと、祖母はシングルマザーとして一人で必死に働いて母を育てていた。その時に過剰に働いた影響か、身体を酷使して体調はあまり芳しくはなかった。
双子が大学一年生秋ごろから、咳を繰り返すようになった。病院を受診するように電話で伝えた双子に祖母は素直に従った。そして、受診したら入院ということとなった。それからはあっという間だった。
双子が就職を決める前になくなってしまった。葬式は家族葬で行われ、つつましく開かれた。
「これで、俺達の親戚はいなくなったということか。」
「いや、父さんの弟がいたはずだ。いや、もういない、か。」
父、匠の弟は数年前に自殺したとニュースで報道されていた。祖父が亡くなって事業を引き継げると思ったのだろうが、祖父が弟を後継者に指定しなかったようだ。遺言に記載されていたようで、そこには会社の社員が書かれていた。それに激怒した弟はその社員の家に乗り込んで、傷害事件となった。
その後、精神を病み、自殺してしまったようだ。
大学を卒業した双子は、それぞれ別の道を歩み始めた。ヒナタは少しずつ声が出るようになってきた。時間がすべてを解決するということはないが、それでも前に一歩ずつ歩みだしているのだろう。
ヒナタは、教育学部に進学し、教員免許を取得した。この春からは、正式に中学校の教師として働くことになっていた。大学四年生の時に受験した教員採用試験に合格できなかったため、一年目は講師として働いていた。二度目の試験には無事合格したので、本当の意味での教員生活が幕を開けようとしていた。
ミツキは、心理学部に進学したが、心理カウンセラーになることはあきらめた。心理カウンセラーになりたい人はたくさんいるが、誰もがなれる職業ではない。さらに、心理カウンセラーになるためには、経験を積む必要もある。そのため、大学卒業後すぐに働きたかったミツキはあきらめることになった。
「俺が塾の先生とか似合わないな。」
「そうでもないよ。彰人に似たいい先生になると思うけど。」
ミツキは大手の塾講師としてこの春から働き始めることとなった。
「ここまで生きてきたけど、いろいろな人に出会った。」
「そう、いろいろあったよな。」
二人は今までの人生を振り返る。彼らは、それぞれの職場で定年まで働いた。職場での出会いや別れを幾度も経験した。そのたびに彼らは痛感していた。自分たちが今までいかに二人の世界に固執していたのかを知った。
「結局、この年まで独身なんて笑えるな。」
「バカだな。ヒナタなんか、結構いい感じな女がいただろう。」
双子は生涯独身を貫いた。付き合った女性はいたのだが、結婚に至ることはなかった。
「彰人さんもすでにおじいさんになったらしい。」
「好きだった身としては辛いけど、すでに孫だからな。今更悲しむことはないから、しっかりと祝福してやったよな。」
「相沢も杉浦も、他の高校の同級生もほとんど結婚して幸せな家庭を築いているようだ。あの渡辺も結婚したというから驚きだな。まあ、俺たちはそれができるとは思っていないが。」
「残り少ない人生だ。ちょうどいい機会だ。一緒にまた住むのもいいだろう。」
ミツキが提案すれば、ヒナタもうっすらとほほ笑んだ。自分たちは結局、別れが怖かったのかもしれない。一度、身近な大事な人を失い、その影響で壊れて狂気にまみれていく人々を見てきた。
最愛を作れば、別れも必然と出てくる。その時に彼らのように狂気にのまれないとは言い切れない。それがトラウマとなって、この年まで独身となってしまった。
「そうだな、これで最後だ。一緒に死ねるなんて思っていないが、それでも最期まで一緒に居たいと思うのは、お前だけだよ、ミツキ。」
「俺もそうだよ。」
双子は生涯独身を貫いた。そして、残りの人生を一緒に過ごしたのだった。
双子の面倒を見ていた祖母は病気で亡くなった。自分の娘が亡くなったストレスもあるのだろう。双子を引き取った苦労もあったのだろう。それでも、双子の生活を守るために必死で耐えてきたのだろうか。高校を卒業するまでは命にかかわるような病気にかかったことはなかった。もともと、祖母はシングルマザーとして一人で必死に働いて母を育てていた。その時に過剰に働いた影響か、身体を酷使して体調はあまり芳しくはなかった。
双子が大学一年生秋ごろから、咳を繰り返すようになった。病院を受診するように電話で伝えた双子に祖母は素直に従った。そして、受診したら入院ということとなった。それからはあっという間だった。
双子が就職を決める前になくなってしまった。葬式は家族葬で行われ、つつましく開かれた。
「これで、俺達の親戚はいなくなったということか。」
「いや、父さんの弟がいたはずだ。いや、もういない、か。」
父、匠の弟は数年前に自殺したとニュースで報道されていた。祖父が亡くなって事業を引き継げると思ったのだろうが、祖父が弟を後継者に指定しなかったようだ。遺言に記載されていたようで、そこには会社の社員が書かれていた。それに激怒した弟はその社員の家に乗り込んで、傷害事件となった。
その後、精神を病み、自殺してしまったようだ。
大学を卒業した双子は、それぞれ別の道を歩み始めた。ヒナタは少しずつ声が出るようになってきた。時間がすべてを解決するということはないが、それでも前に一歩ずつ歩みだしているのだろう。
ヒナタは、教育学部に進学し、教員免許を取得した。この春からは、正式に中学校の教師として働くことになっていた。大学四年生の時に受験した教員採用試験に合格できなかったため、一年目は講師として働いていた。二度目の試験には無事合格したので、本当の意味での教員生活が幕を開けようとしていた。
ミツキは、心理学部に進学したが、心理カウンセラーになることはあきらめた。心理カウンセラーになりたい人はたくさんいるが、誰もがなれる職業ではない。さらに、心理カウンセラーになるためには、経験を積む必要もある。そのため、大学卒業後すぐに働きたかったミツキはあきらめることになった。
「俺が塾の先生とか似合わないな。」
「そうでもないよ。彰人に似たいい先生になると思うけど。」
ミツキは大手の塾講師としてこの春から働き始めることとなった。
「ここまで生きてきたけど、いろいろな人に出会った。」
「そう、いろいろあったよな。」
二人は今までの人生を振り返る。彼らは、それぞれの職場で定年まで働いた。職場での出会いや別れを幾度も経験した。そのたびに彼らは痛感していた。自分たちが今までいかに二人の世界に固執していたのかを知った。
「結局、この年まで独身なんて笑えるな。」
「バカだな。ヒナタなんか、結構いい感じな女がいただろう。」
双子は生涯独身を貫いた。付き合った女性はいたのだが、結婚に至ることはなかった。
「彰人さんもすでにおじいさんになったらしい。」
「好きだった身としては辛いけど、すでに孫だからな。今更悲しむことはないから、しっかりと祝福してやったよな。」
「相沢も杉浦も、他の高校の同級生もほとんど結婚して幸せな家庭を築いているようだ。あの渡辺も結婚したというから驚きだな。まあ、俺たちはそれができるとは思っていないが。」
「残り少ない人生だ。ちょうどいい機会だ。一緒にまた住むのもいいだろう。」
ミツキが提案すれば、ヒナタもうっすらとほほ笑んだ。自分たちは結局、別れが怖かったのかもしれない。一度、身近な大事な人を失い、その影響で壊れて狂気にまみれていく人々を見てきた。
最愛を作れば、別れも必然と出てくる。その時に彼らのように狂気にのまれないとは言い切れない。それがトラウマとなって、この年まで独身となってしまった。
「そうだな、これで最後だ。一緒に死ねるなんて思っていないが、それでも最期まで一緒に居たいと思うのは、お前だけだよ、ミツキ。」
「俺もそうだよ。」
双子は生涯独身を貫いた。そして、残りの人生を一緒に過ごしたのだった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
神木さんちのお兄ちゃん!
雪桜
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます!
神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。
美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者!
だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。
幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?!
そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。
だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった!
これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。
果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか?
これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。
***
イラストは、全て自作です。
カクヨムにて、先行連載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる