双子~それでも二人は共に生きていく~

折原さゆみ

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43二人は共に生きていく

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 ヒナタとミツキの家が放火されてから、八年が経過した。二人は無事に目標の大学に入学することができた。学部は違うが、大学は同じなので、一緒に大学近くのアパートで暮らしていた。

 双子の面倒を見ていた祖母は病気で亡くなった。自分の娘が亡くなったストレスもあるのだろう。双子を引き取った苦労もあったのだろう。それでも、双子の生活を守るために必死で耐えてきたのだろうか。高校を卒業するまでは命にかかわるような病気にかかったことはなかった。もともと、祖母はシングルマザーとして一人で必死に働いて母を育てていた。その時に過剰に働いた影響か、身体を酷使して体調はあまり芳しくはなかった。

 双子が大学一年生秋ごろから、咳を繰り返すようになった。病院を受診するように電話で伝えた双子に祖母は素直に従った。そして、受診したら入院ということとなった。それからはあっという間だった。

 双子が就職を決める前になくなってしまった。葬式は家族葬で行われ、つつましく開かれた。



「これで、俺達の親戚はいなくなったということか。」
「いや、父さんの弟がいたはずだ。いや、もういない、か。」

 父、匠の弟は数年前に自殺したとニュースで報道されていた。祖父が亡くなって事業を引き継げると思ったのだろうが、祖父が弟を後継者に指定しなかったようだ。遺言に記載されていたようで、そこには会社の社員が書かれていた。それに激怒した弟はその社員の家に乗り込んで、傷害事件となった。

 その後、精神を病み、自殺してしまったようだ。




 大学を卒業した双子は、それぞれ別の道を歩み始めた。ヒナタは少しずつ声が出るようになってきた。時間がすべてを解決するということはないが、それでも前に一歩ずつ歩みだしているのだろう。

 ヒナタは、教育学部に進学し、教員免許を取得した。この春からは、正式に中学校の教師として働くことになっていた。大学四年生の時に受験した教員採用試験に合格できなかったため、一年目は講師として働いていた。二度目の試験には無事合格したので、本当の意味での教員生活が幕を開けようとしていた。

 ミツキは、心理学部に進学したが、心理カウンセラーになることはあきらめた。心理カウンセラーになりたい人はたくさんいるが、誰もがなれる職業ではない。さらに、心理カウンセラーになるためには、経験を積む必要もある。そのため、大学卒業後すぐに働きたかったミツキはあきらめることになった。


「俺が塾の先生とか似合わないな。」

「そうでもないよ。彰人に似たいい先生になると思うけど。」

 ミツキは大手の塾講師としてこの春から働き始めることとなった。







「ここまで生きてきたけど、いろいろな人に出会った。」

「そう、いろいろあったよな。」

 二人は今までの人生を振り返る。彼らは、それぞれの職場で定年まで働いた。職場での出会いや別れを幾度も経験した。そのたびに彼らは痛感していた。自分たちが今までいかに二人の世界に固執していたのかを知った。


「結局、この年まで独身なんて笑えるな。」

「バカだな。ヒナタなんか、結構いい感じな女がいただろう。」

 双子は生涯独身を貫いた。付き合った女性はいたのだが、結婚に至ることはなかった。


「彰人さんもすでにおじいさんになったらしい。」

「好きだった身としては辛いけど、すでに孫だからな。今更悲しむことはないから、しっかりと祝福してやったよな。」

「相沢も杉浦も、他の高校の同級生もほとんど結婚して幸せな家庭を築いているようだ。あの渡辺も結婚したというから驚きだな。まあ、俺たちはそれができるとは思っていないが。」


「残り少ない人生だ。ちょうどいい機会だ。一緒にまた住むのもいいだろう。」

 ミツキが提案すれば、ヒナタもうっすらとほほ笑んだ。自分たちは結局、別れが怖かったのかもしれない。一度、身近な大事な人を失い、その影響で壊れて狂気にまみれていく人々を見てきた。

 最愛を作れば、別れも必然と出てくる。その時に彼らのように狂気にのまれないとは言い切れない。それがトラウマとなって、この年まで独身となってしまった。


「そうだな、これで最後だ。一緒に死ねるなんて思っていないが、それでも最期まで一緒に居たいと思うのは、お前だけだよ、ミツキ。」

「俺もそうだよ。」


 双子は生涯独身を貫いた。そして、残りの人生を一緒に過ごしたのだった。

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