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11今季アニメ、何をみる?③~話は脱線するものです~
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「さっさと会議を始めましょう」
芳子は本当に祖母のことを気にしていないようだ。強引に昼休みの話の続きを開始するために声を上げる。
私たちは芳子が取り出した折り畳み机の周りに集まり、床に腰を下ろす。ようやく腰を下ろすことができてほっとした。机と一緒に部屋の隅に置かれていたクッションを人数分持ってきた芳子に感謝して、クッションをありがたく使用することにした。芳子はベッドに座り、そこから会議に参戦するようだ。
恒例の二次元会議が開かれることに異論はないが、その前に、彼女たちには聞いておきたいことがあった。
「ねえ、今日が木曜日だから部活が休みって言っていたけど、一学期は木曜日だからって部活が休みじゃなかったでしょう?二学期も9月は確か、木曜日でも普通に部活があったと思うけど」
どうなっているのか。
私の問いは最後まで口に出されることはなく、途中で遮られてしまう。
「そんなの、決まっているでしょう?こなでに麗華。あなたたちは当然、理由を知っているよね?陽咲も」
『当然!』
『もちろんです!』
『当たり前でしょ』
私が話しているのに、途中で話に割り込んでくるなんて失礼な奴らである。とはいえ、私以外は理由をすでに知っているらしい。私の周りに味方はいないらしい。
「では、まだ気づかないお姉さんに説明をお願いします」
そういえば、教室でも芳子は妹の陽咲に説明を丸投げしていた。急に指名されたにも関わらず、陽咲は元気よく返事をして説明を始めた。
「それはねえ、ずばり!私たちの親の功績よ!ほら、教室でも話したでしょ。麗華のユニホーム事件。その時に両親が何か学校に文句をつけたのよ!」
同意を求めるように芳子たちの方に視線を向けた妹に、彼女たちはうんうんと頷いていた。陽咲の言葉は彼女たちにとって同意すべき内容らしい。
「私たちの両親が、うちの高校の部活の休養日について言及したってこと?」
麗華の陸上部のユニホームを変えて欲しいと頼んだだけだったはずなのに、さらに両親は踏み込んだことをしていたようだ。
「ほんと、きさきっちたちのご両親には感謝しかないね。ご両親のおかげで私たちは、週に一度の部活の休養日を、こうして貴重な会議の場とできているってわけだからね」
「まあ、うちの両親がそこまですごいことをしたとは思えないけどね。でも、そのおかげで私たちは今、こうして芳子の家に集まれているわけよ」
「その節は本当にありがとうございました」
「私からもありがとうとお礼を言わせて。部活は辞めている身だけど、こうして放課後、友達と遊べるわけだからね」
話が思わぬ方向に進んでしまい、焦ってしまう。別に私と陽咲は大したことは何もしていない。ただ、友達が困っているから、助けてやりたいから、協力してほしいと両親に頼んだだけだ。
「ええと、その話は別にいいよ。前にも言ったけど」
『両親が子供のために動いただけだから気にしないで』
私が言おうとしていた言葉は妹とかぶってしまった。私たち姉妹の両親に対する考えは一致していた。きれいなハモりが部屋に響き渡った。
「じゃあ、だいぶ話が脱線したけど、今度こそ、会議を始めましょう!」
再び、芳子の一声で会議がようやく再開された。
「今期の視聴するアニメが決まらない、ということですよね。それについて、私が勘違いをしていました。改めて説明する機会を与えてはもらえないでしょうか」
陽咲が右手を挙げて芳子に発言の許可を求める。いつものごとく、芳子が司会者を務めるようだ。昼休みに何やら『飽きが来た』とかなんとか言っていたが、それについての説明だろうか。芳子はどうぞと妹の発言を促した。
「飽きが来たというのは、文字通りの意味となります。そもそも、毎クールごとにラインナップがあまり変わらない、という点にもっと早く気付くべきでした」
はあと、まるで小学生でもできる足し算の問題も解けなかったのを悔しがるような表情で陽咲がうなだれる。いったい、それのどこにそんな感情を乗せる部分があったのか理解不能だ。
「どういうことか理解していない方が約一名、いらっしゃるようですね。そんなアニメ初心者の方に、詳しく説明してあげてくださいね」
「ハイ!」
とんだ茶番である。とはいえ、このままでは私は彼女たちにバカにされたままで、それはそれで悔しい。ここで怒りをぶつけても仕方ないので、静かに話の続きを聞くことにした。
「……つまり、毎度、同じような内容のアニメばかりやるから、視聴者である私たちが飽きてしまって、アニメを視聴しなくなったと」
ふたを開ければ何と言うことはない、簡単な話だった。妹の説明を要約して彼女たちに伝える。確かに最近のアニメは、一話を見ただけで、すでに最終回の結末がわかってしまうものも多い。もっと言ってしまえば、タイトルだけ、あらすじだけでお腹いっぱいになってしまう物語も存在する。
「さすが、私のお姉ちゃん、理解が早くて助かります」
「でも、そうだとしたら、これからアニメは視ないってこと?タイトルやあらすじだけで満足してしまったら、もう30分もアニメを見る必要がないってことでしょ」
可哀想に。
毎クール、一生懸命に全力を尽くしているアニメ会社、アニメに携わる関係者がこれでは不憫な気がした。まあ、そんな作品をアニメ化している時点で何とも言えないのが本音だが。
「そこなのよねえ。アニメ卒業って、なんだかオタクにとって、オタク卒業って言っていいほどのもので、どうしようかと思っているの」
ううん。
芳子の言葉にその場にいる全員が頭を抱える。別にアニメを見るのも見ないのも自由であり、オタクにだっていろいろな種類の人間がいる。アニメを見ないオタクだっているはずで、悩む必要はないはずだ。
「じゃ、じゃあ、こういうのはどうですか?」
悩んでいると、突然、小声ながらも皆に聞かせるように、一人の男装の麗人が声を上げる。皆の視線を一心に浴びながら、麗華はたどたどしく、自分の思いついたアイデアを皆に提案する。恰好こそは学校の制服でスカートを履いているが、見た目だけは完全にイケメン男子である。
「ええと、その、面白いアニメがないのならば、自分たちで作るというのは、ど、どうで、しょうか……」
提案した割に、どうにも自身がなさそうで、言葉の最後の方はかすれて、かろうじて聞こえるような小声となっていた。
芳子は本当に祖母のことを気にしていないようだ。強引に昼休みの話の続きを開始するために声を上げる。
私たちは芳子が取り出した折り畳み机の周りに集まり、床に腰を下ろす。ようやく腰を下ろすことができてほっとした。机と一緒に部屋の隅に置かれていたクッションを人数分持ってきた芳子に感謝して、クッションをありがたく使用することにした。芳子はベッドに座り、そこから会議に参戦するようだ。
恒例の二次元会議が開かれることに異論はないが、その前に、彼女たちには聞いておきたいことがあった。
「ねえ、今日が木曜日だから部活が休みって言っていたけど、一学期は木曜日だからって部活が休みじゃなかったでしょう?二学期も9月は確か、木曜日でも普通に部活があったと思うけど」
どうなっているのか。
私の問いは最後まで口に出されることはなく、途中で遮られてしまう。
「そんなの、決まっているでしょう?こなでに麗華。あなたたちは当然、理由を知っているよね?陽咲も」
『当然!』
『もちろんです!』
『当たり前でしょ』
私が話しているのに、途中で話に割り込んでくるなんて失礼な奴らである。とはいえ、私以外は理由をすでに知っているらしい。私の周りに味方はいないらしい。
「では、まだ気づかないお姉さんに説明をお願いします」
そういえば、教室でも芳子は妹の陽咲に説明を丸投げしていた。急に指名されたにも関わらず、陽咲は元気よく返事をして説明を始めた。
「それはねえ、ずばり!私たちの親の功績よ!ほら、教室でも話したでしょ。麗華のユニホーム事件。その時に両親が何か学校に文句をつけたのよ!」
同意を求めるように芳子たちの方に視線を向けた妹に、彼女たちはうんうんと頷いていた。陽咲の言葉は彼女たちにとって同意すべき内容らしい。
「私たちの両親が、うちの高校の部活の休養日について言及したってこと?」
麗華の陸上部のユニホームを変えて欲しいと頼んだだけだったはずなのに、さらに両親は踏み込んだことをしていたようだ。
「ほんと、きさきっちたちのご両親には感謝しかないね。ご両親のおかげで私たちは、週に一度の部活の休養日を、こうして貴重な会議の場とできているってわけだからね」
「まあ、うちの両親がそこまですごいことをしたとは思えないけどね。でも、そのおかげで私たちは今、こうして芳子の家に集まれているわけよ」
「その節は本当にありがとうございました」
「私からもありがとうとお礼を言わせて。部活は辞めている身だけど、こうして放課後、友達と遊べるわけだからね」
話が思わぬ方向に進んでしまい、焦ってしまう。別に私と陽咲は大したことは何もしていない。ただ、友達が困っているから、助けてやりたいから、協力してほしいと両親に頼んだだけだ。
「ええと、その話は別にいいよ。前にも言ったけど」
『両親が子供のために動いただけだから気にしないで』
私が言おうとしていた言葉は妹とかぶってしまった。私たち姉妹の両親に対する考えは一致していた。きれいなハモりが部屋に響き渡った。
「じゃあ、だいぶ話が脱線したけど、今度こそ、会議を始めましょう!」
再び、芳子の一声で会議がようやく再開された。
「今期の視聴するアニメが決まらない、ということですよね。それについて、私が勘違いをしていました。改めて説明する機会を与えてはもらえないでしょうか」
陽咲が右手を挙げて芳子に発言の許可を求める。いつものごとく、芳子が司会者を務めるようだ。昼休みに何やら『飽きが来た』とかなんとか言っていたが、それについての説明だろうか。芳子はどうぞと妹の発言を促した。
「飽きが来たというのは、文字通りの意味となります。そもそも、毎クールごとにラインナップがあまり変わらない、という点にもっと早く気付くべきでした」
はあと、まるで小学生でもできる足し算の問題も解けなかったのを悔しがるような表情で陽咲がうなだれる。いったい、それのどこにそんな感情を乗せる部分があったのか理解不能だ。
「どういうことか理解していない方が約一名、いらっしゃるようですね。そんなアニメ初心者の方に、詳しく説明してあげてくださいね」
「ハイ!」
とんだ茶番である。とはいえ、このままでは私は彼女たちにバカにされたままで、それはそれで悔しい。ここで怒りをぶつけても仕方ないので、静かに話の続きを聞くことにした。
「……つまり、毎度、同じような内容のアニメばかりやるから、視聴者である私たちが飽きてしまって、アニメを視聴しなくなったと」
ふたを開ければ何と言うことはない、簡単な話だった。妹の説明を要約して彼女たちに伝える。確かに最近のアニメは、一話を見ただけで、すでに最終回の結末がわかってしまうものも多い。もっと言ってしまえば、タイトルだけ、あらすじだけでお腹いっぱいになってしまう物語も存在する。
「さすが、私のお姉ちゃん、理解が早くて助かります」
「でも、そうだとしたら、これからアニメは視ないってこと?タイトルやあらすじだけで満足してしまったら、もう30分もアニメを見る必要がないってことでしょ」
可哀想に。
毎クール、一生懸命に全力を尽くしているアニメ会社、アニメに携わる関係者がこれでは不憫な気がした。まあ、そんな作品をアニメ化している時点で何とも言えないのが本音だが。
「そこなのよねえ。アニメ卒業って、なんだかオタクにとって、オタク卒業って言っていいほどのもので、どうしようかと思っているの」
ううん。
芳子の言葉にその場にいる全員が頭を抱える。別にアニメを見るのも見ないのも自由であり、オタクにだっていろいろな種類の人間がいる。アニメを見ないオタクだっているはずで、悩む必要はないはずだ。
「じゃ、じゃあ、こういうのはどうですか?」
悩んでいると、突然、小声ながらも皆に聞かせるように、一人の男装の麗人が声を上げる。皆の視線を一心に浴びながら、麗華はたどたどしく、自分の思いついたアイデアを皆に提案する。恰好こそは学校の制服でスカートを履いているが、見た目だけは完全にイケメン男子である。
「ええと、その、面白いアニメがないのならば、自分たちで作るというのは、ど、どうで、しょうか……」
提案した割に、どうにも自身がなさそうで、言葉の最後の方はかすれて、かろうじて聞こえるような小声となっていた。
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