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11予想外の展開
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メガネをかけ始めてから、一週間が経過した。いよいよ、目黒君は私と目が合わないようになり、話しかけても逃げられることが日常となり始めていた。
これは由々しき事態である。せっかく、彼に好意を持ってもらおうと「メガネ女子」になろうとしているのに、これでは本末転倒だ。
「みさと、私の『メガネ女子』計画、失敗だったのかなあ」
「ううん、どうだろうね。失敗とは言えないんじゃないの?現にメガネをかけ始めたら急に避けられ始めたわけでしょ?」
「そうだけど……」
「だったら、こう考えたらいいのでは?仁美のメガネ姿を意識している」
「つまり、どういうこと?」
「少女漫画とか読まないわけ?それくらい自分で考えなさい。とにかく、嫌われていないことは確かだから」
私がメガネをかけ始めた日から、昼休みに目黒君は自分の席、つまり私の隣の席で昼食を取ることがなくなった。メガネをかける前はひとりで自分の席で黙々と昼食を取っていたのに、これはとても寂しいことだ。明らかに嫌われているとしか思えない行動の数々なのに、どうして親友はそんなに楽観的なことが言えるのか。
昼休み、今日もまた、目黒君はクラスメイトの男子たちと購買に出掛けている。私とみさとは一緒にお弁当を食べていた。
「少女漫画の内容なんて、非現実すぎるから現実には当てはまらないと思うけど」
「うわあ、でたよ。真面目な現実主義者は頭が固いねえ。娯楽として楽しめたら、多少のファンタジーにも目をつむるでしょ」
「私はファンタジーが苦手なの。少女漫画とか読む暇があったら、その時間をほかのことに使うわ」
基本的に私は漫画があまり好きではない。読むとしたら、小説などの活字の方が好きだ。そんなことは親友なら知っているはずなのに、わざわざ少女漫画を勧めてくる理由がわからない。
「なあなあ、目黒。お前、今日、隣のクラスの女子に告白されてただろ」
「うわあ。転校早々、モテるねえ。それで、返事はどうした?付き合うのか?」
「羨ましいなあ。オレも転校したら、転校生としてもてはやされてモテるかな」
教室に購買組の男子が戻ってきた。その中には目黒君もいるのだが、どうにも様子がおかしい。男子たちの会話が聞こえてきたが、不穏なワードが多すぎる。
隣のクラスの女子、告白、付き合う、転校生、モテる。
「ちょ、ちょっと、顔が怖いから。仁美、その顔を目黒君には見せない方が」
「僕がどうかした?」
クラスメイトの男子の会話に気を取られて、目黒君の接近に遅れてしまった。先ほどまで教室の入り口で他の男子たちと話をしていたはずだ。瞬間移動でもしたのだろうか。いや、そんなわけがない。
「目黒、いつの間に自分の席に。今日はこっちで食べないのか?」
「告白の返事はどうした?」
「日好に弁解でもするのか?」
「もし、女子から本当にモテたいなら、あんまりつるんで行動しないほうがいいと思うよ。自分ひとりだと行動できない奴だと思われるから」
ずいぶんと厳しいお言葉だ。それにしても、男子たちも言っていたが、今日は彼らと一緒に食べないのだろうか。もし、隣の自分の席で食べるなら、私としてはとても嬉しいが。
「丁寧なアドバイス、ありがとな。ひとりで食べているから誘ってやったのに、薄情な奴だ」
一人の男子がそうつぶやくと、周りの男子も「そうだ、そうだ」と同調する。彼らはいつも食べているグループのひとりの席に向かっていく。
「それで、どうして今日は自分の席に?」
自分の席で昼食を取ることを決めてくれたのは嬉しいが、何が決め手となったのだろう。クラスメイトの男子が話していた告白の件と関係があるのかもしれないが、因果関係がわからない。
「別に気分の問題だよ」
「こ、答えて、くれた!」
「別に無視していたわけじゃあ」
『無視してたよね?』
つい、突っ込みを入れてしまった。しかし、その突っ込みは私の声だけではなかった。前の席に座る親友も同時に突っ込みを入れていた。二人からの言葉に目黒君は困った顔をしていたが、図星らしい。顔に手を当ててがっくりとうなだれている。
「男子も仁美も聞いていたけど、その様子だと、告白は断ったみたいね」
「えっ!そうなの?」
「断るに決まっているだろ。まだ転校して日にちが浅いのに、隣のクラスの女子のことなんてわかるわけがない」
「断わったことを仁美に知らせたいから、自分の席に戻ってきたのかなあ?」
「う、うるさい」
みさとは目黒君の事情を察したのか、にやにやと笑いながら目黒君をいじっている。目黒君もまた、みさとの言葉に対して、顔を赤くしている。私だけ蚊帳の外な気がして面白くない。
「目黒君の運命の相手は私だから!」
しっかりと親友には釘をさしておく。目黒君のメガネ姿の魅力に気づいてしまったら困る。
「はいはい」「違うから」
言葉は違ったが、二人が同時に口を開いたので、二人の声が重なって教室内に響き渡る。とはいえ、いつも通り教室内は賑わっていたので、誰も私たちのことを気にすることはなかった。
「と、とりあえず、さっさとお弁当を食べてしまおうか」
「そ、そうだな」
みさとはお弁当箱に入っているタコ型に切られたウインナーを口に運んでいく。目黒君はメロンパンの袋を破って大きくかぶりつく。
「……」
じとりと二人を睨みつけ、私も急いで卵焼きを口にした。
これは由々しき事態である。せっかく、彼に好意を持ってもらおうと「メガネ女子」になろうとしているのに、これでは本末転倒だ。
「みさと、私の『メガネ女子』計画、失敗だったのかなあ」
「ううん、どうだろうね。失敗とは言えないんじゃないの?現にメガネをかけ始めたら急に避けられ始めたわけでしょ?」
「そうだけど……」
「だったら、こう考えたらいいのでは?仁美のメガネ姿を意識している」
「つまり、どういうこと?」
「少女漫画とか読まないわけ?それくらい自分で考えなさい。とにかく、嫌われていないことは確かだから」
私がメガネをかけ始めた日から、昼休みに目黒君は自分の席、つまり私の隣の席で昼食を取ることがなくなった。メガネをかける前はひとりで自分の席で黙々と昼食を取っていたのに、これはとても寂しいことだ。明らかに嫌われているとしか思えない行動の数々なのに、どうして親友はそんなに楽観的なことが言えるのか。
昼休み、今日もまた、目黒君はクラスメイトの男子たちと購買に出掛けている。私とみさとは一緒にお弁当を食べていた。
「少女漫画の内容なんて、非現実すぎるから現実には当てはまらないと思うけど」
「うわあ、でたよ。真面目な現実主義者は頭が固いねえ。娯楽として楽しめたら、多少のファンタジーにも目をつむるでしょ」
「私はファンタジーが苦手なの。少女漫画とか読む暇があったら、その時間をほかのことに使うわ」
基本的に私は漫画があまり好きではない。読むとしたら、小説などの活字の方が好きだ。そんなことは親友なら知っているはずなのに、わざわざ少女漫画を勧めてくる理由がわからない。
「なあなあ、目黒。お前、今日、隣のクラスの女子に告白されてただろ」
「うわあ。転校早々、モテるねえ。それで、返事はどうした?付き合うのか?」
「羨ましいなあ。オレも転校したら、転校生としてもてはやされてモテるかな」
教室に購買組の男子が戻ってきた。その中には目黒君もいるのだが、どうにも様子がおかしい。男子たちの会話が聞こえてきたが、不穏なワードが多すぎる。
隣のクラスの女子、告白、付き合う、転校生、モテる。
「ちょ、ちょっと、顔が怖いから。仁美、その顔を目黒君には見せない方が」
「僕がどうかした?」
クラスメイトの男子の会話に気を取られて、目黒君の接近に遅れてしまった。先ほどまで教室の入り口で他の男子たちと話をしていたはずだ。瞬間移動でもしたのだろうか。いや、そんなわけがない。
「目黒、いつの間に自分の席に。今日はこっちで食べないのか?」
「告白の返事はどうした?」
「日好に弁解でもするのか?」
「もし、女子から本当にモテたいなら、あんまりつるんで行動しないほうがいいと思うよ。自分ひとりだと行動できない奴だと思われるから」
ずいぶんと厳しいお言葉だ。それにしても、男子たちも言っていたが、今日は彼らと一緒に食べないのだろうか。もし、隣の自分の席で食べるなら、私としてはとても嬉しいが。
「丁寧なアドバイス、ありがとな。ひとりで食べているから誘ってやったのに、薄情な奴だ」
一人の男子がそうつぶやくと、周りの男子も「そうだ、そうだ」と同調する。彼らはいつも食べているグループのひとりの席に向かっていく。
「それで、どうして今日は自分の席に?」
自分の席で昼食を取ることを決めてくれたのは嬉しいが、何が決め手となったのだろう。クラスメイトの男子が話していた告白の件と関係があるのかもしれないが、因果関係がわからない。
「別に気分の問題だよ」
「こ、答えて、くれた!」
「別に無視していたわけじゃあ」
『無視してたよね?』
つい、突っ込みを入れてしまった。しかし、その突っ込みは私の声だけではなかった。前の席に座る親友も同時に突っ込みを入れていた。二人からの言葉に目黒君は困った顔をしていたが、図星らしい。顔に手を当ててがっくりとうなだれている。
「男子も仁美も聞いていたけど、その様子だと、告白は断ったみたいね」
「えっ!そうなの?」
「断るに決まっているだろ。まだ転校して日にちが浅いのに、隣のクラスの女子のことなんてわかるわけがない」
「断わったことを仁美に知らせたいから、自分の席に戻ってきたのかなあ?」
「う、うるさい」
みさとは目黒君の事情を察したのか、にやにやと笑いながら目黒君をいじっている。目黒君もまた、みさとの言葉に対して、顔を赤くしている。私だけ蚊帳の外な気がして面白くない。
「目黒君の運命の相手は私だから!」
しっかりと親友には釘をさしておく。目黒君のメガネ姿の魅力に気づいてしまったら困る。
「はいはい」「違うから」
言葉は違ったが、二人が同時に口を開いたので、二人の声が重なって教室内に響き渡る。とはいえ、いつも通り教室内は賑わっていたので、誰も私たちのことを気にすることはなかった。
「と、とりあえず、さっさとお弁当を食べてしまおうか」
「そ、そうだな」
みさとはお弁当箱に入っているタコ型に切られたウインナーを口に運んでいく。目黒君はメロンパンの袋を破って大きくかぶりつく。
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