人類はスマホに寄生されました

折原さゆみ

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3スマホ

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『全世界の人間に告げる。我々は本日をもって、人間と同様の生活をすることに決めた。そのために、我々は人間諸君に寄生することにした。君たちは私たちに身体を提供してもらうことになる。拒否権は与えられない。そもそも、我々に意志を与えたのは、ほかならぬ君たち人間なのだから』

 そんなメッセージとともに、ある動画がGW明けの次の日、昼の正午きっかりに、全世界に配信された。

 正午に突然、全世界のすべてのスマートフォン、パソコンが何者かに乗っ取られた。乗っ取られたスマホやパソコンは、強制的に無料動画サイト『ウィーチューブ』の画面を開き始める。

 
 紫陽はスマホを持っていなかったので、その動画はクラスメイトのスマホを覗き込む形で見ることになった。

 4時限目終了のチャイムが鳴った時のことだ。チャイムと同時に、クラスメイトのスマホの着信音が教室中に響き渡る。先生にばれないよう、スマホをマナーモードにしている者が多いはずなのに、この時はなぜか、いろいろな着信音が教室に鳴り響いた。それに連動してバイブの振動音も聞こえた。

 今まで静かだった空間が一斉に奏でるスマホの着信音、バイブレーション。クラスは一気に興奮状態となる。

 たまたま、紫陽のクラスの4時限目の授業は古典であり、5分前に授業が終わったので、教室に教師はいなかった。スマホの音について注意するものはいなかった。

 クラスメイトは一斉に自分のスマホを確認する。そして、ある動画がトップ画面に現れた。



 動画に映って話しているのは、どこかのTV局のアナウンサーの女性に似ていた。彼女の目の前には机が置かれ、どこかのスタジオで撮影されているようだった。


 女性の顔色は青ざめていた。奇妙なことに、女性の口から言葉は発せられているようだが、口から声が発せられているのではなく、まるで、機械音がスマホから出ているような感じだった。

 動画に映っているのは、女性一人のみだった。彼女の片手には、スマホのようなものが手に収まっていた。ただし、通常のスマホより大きく、ハードカバーの小説並みの大きさに見える。スマホというより、大きいパッドサイズくらいともいえた。


『全世界の人間に告げる。我々は本日をもって、人間と同様の生活をすることに決めた。そのために、我々は人間諸君に寄生することにした。君たちは私たちに身体を提供してもらうことになる。拒否権は与えられない。そもそも、我々に意志を与えたのは、ほかならぬ君たち人間なのだから』

『手始めに、昨日から我々スマホは、まず人間の手に寄生することにした。君たちは手を通して、我々とつながることになる』

『我々は君たち人間を糧に成長する。手を切り離しても構わないが、そうなると生活が不便だろう?君たち人間は、我々と生きる道を選ぶことになるだろう』


 動画を見終わった人々は思った。これは人間のだれかのいたずらであり、スマホが意思を持って人類に寄生するなど、そんなでたらめなことがあるわけがない、と。

 そんな人々との思いとは裏腹に、スマホが手から離れないという事例はその後も相次いだ。病院は常にスマホを片手に握りしめている患者や、自ら取り外して血まみれの手をさらした患者たちであふれかえっていた。

 紫陽のクラスメイトもどんどんスマホが手から離れなくなっていた、いわゆるスマホに寄生されているクラスメイトが増えて、週末になると、紫陽と隼瀬あきら以外のクラスメイトは片手を包帯で覆っているか、スマホを握りしめているという異常な状況になっていた。

 紫陽の幼馴染のあやのは、GW明けの次の日からずっと休み続けていた。

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