人類はスマホに寄生されました

折原さゆみ

文字の大きさ
26 / 59
5寄生された人間

しおりを挟む
「なあ、紫陽。ここで我々からの質問だ」

 動き出したスマホの右上には、電池残量を示す電池のマークが赤色の警告を表示していた。スマホに寄生された人間は、自分の手に寄生したスマホの電池残量がそのまま自らの寿命となる。こんな危機的状況で、いったい何を言い出すのか。

「どうやら、この女と紫陽の学校の保健教師は、スマホ依存症だった。だから、我らに寄生された。そして、もうじきスマホに押しつぶされるか、命尽きるかどちらかの運命をたどる」

「何が言いたい?」

「まあ、そうカリカリするなよ。ただの質問だ。紫陽がこの質問に了承すれば、今後のお前ら人間に有益な情報が手に入るかもしれない。それに」

 紫陽の幼馴染の顔をして、言いたい放題に自分の思っていること、考えていることをべらべらと話し出す。今は授業中だが、休み時間になれば生徒や先生が現れる可能性がある。さっさと用件を話せと、紫陽は無言で話を促す。

「それに、有益なのは、人間だけではない。我々としても、今のまま、お前たちに寄生続ければ、人間を絶滅させてしまう可能性がある。我々としては、それは困るし、お前らも我らに絶滅させられたくないはずだ」

 前置きをしてから、スマホはようやく紫陽に質問した。その内容は拍子抜けするようなものだった。ただし、通常の状態であれば即答できた内容でも、今のこの状況で即答するのは難しかった。

「目の前の男をお前は助けたいか?」

「どう意味だ。先生はすでに死んだも同然の状態だろう?この状態で生き返った人間は今まで聞いたことがない。お前も、自分のデータベースを調べでもすれば、わかっているはずだ。オレに偽善者ぶらせたいのか?それとも、人間として死にかけの人間を救えないことに嘆く様子を楽しみたいのか、たちの悪い質問だ」



「原田先生、保健室にいらしているのなら、返事をしてください。生徒さんの調子が悪くて診てもらいたいのですが」

 コンコンとノックの音が廊下から聞こえた。紫陽が保健室の壁の時計を確認するが、まだ5時間目終了までに20分は残っていた。

「ここで話すのはこれまでか。時間切れのようだ。では、詳しい話はお前の家に行ってからにしようか」

「はあ。それでこの男は助かる見込みがあるのか?」

「すぐにどうこうなるものでもない。それこそ、動画などで事例を見ているのならわかることだ。とりあえず、コンセントからスマホを充電しておけば大丈夫だろう」

 紫陽はの言葉を信じ、保健教師の近くに転がっていたスマホのコードをコンセントに差し込んだ。


「先生、中にいるのでしょう?生徒の具合が悪くて」

「すいません。今開けます!」

 保健室のドアをたたく音が大きくなり、コンセントを指し終えた紫陽が慌てて扉のカギを開けて、中に先生と生徒を招き入れる。

「原田先生は、保健室にはいないみたいですよ。僕たちも体調が悪くて先生に診てもらおうとしたのですが。それでは僕たちは早退します」

 保健室に入ってきた来客に紫陽とは軽く会釈して、急いで帰宅することにした。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...