33 / 59
7仲間
3
しおりを挟む
家に帰宅した紫陽は、今日の放課後の光景について考えていた。あやのは教室に残っていたクラスメイトに何らかのことをした。そしてそれは、隼瀬にも有効な手段だった。彼女が使える能力と言えば、スマホ関連しか思いつかない。
「あんな力を使えるということは、クラスメイトも、もしかしたら……」
嫌なことが頭に浮かぶが、紫陽の電話に着信があり思考は遮られた。
「もしもし」
「まだ寝ていないようだな。よかった。これから、あの教室で起きていたことを説明してやろうかと思ったんだが、今時間は大丈夫か?」
「連絡がなかったら、こちらから電話しようと思っていたところだ。自分の部屋にいるから、問題ない」
「電話でもいいが、直接会って話したいところだ。こんな時間だが、外に出ることは可能か?」
電話の相手はあやのだった。わざわざ外に出て話したいと言ってきたが、電話では話しにくいことなのだろうか。窓の外を見るとザーザーと音を立てて雨が降っている。
「雨が結構降っている。お前は、濡れても大丈夫なのか?」
「私の心配をしてくれているのか。スマホ相手に優しい男だな。確かに、あまり本体が濡れるのは好ましくない。仕方ない。電話で我慢するとするか。電話はあまり好かないのだがな。何せ」
「ああ、もしかして、あやのの身体に響いて、慣れないからか?」
「デリカシーのない奴だ」
彼女が電話を嫌がる理由が頭に浮かび、無意識のうちに言葉にしていた。その言葉に苛立ったように言葉が返される。
しかし、すぐに気持ちを切り替えたのか、電話越しに咳払いの音が聞こえる。そして、彼女は紫陽に電話してきた用件を話し始める。
「教室でのことだが、あれは、我らに乗っ取られている人間になら、誰にでも使えるものだ。我らから出ている微弱な電波を介して、他人のスマホの動きを止めることができる。我ほどの上位になってくると、そこらのスマホなど簡単に動きを封じることが可能だ」
「上位?」
聞きなれない言葉に紫陽は首をかしげる。スマホにそんな序列があるとは初耳だ。
「スマホにもそんなものが存在するのか。だとすると、それはどうやって」
「人間と同じだ。スペックによって序列がついてくる。そして、我のスペックは」
「トントン」
「悪い。いったん電話を切るぞ」
突然、部屋のドアがノックされた。無視するわけにもいかず、紫陽は部屋に入っていいと告げる。電話をさりげなくベッド淵に置き、ゴロゴロとベッドの中央で転がっていると、ゆっくりとドアを開けて入ってきたのは、妹のすみれだった。
「ごめんね、お兄ちゃん、ちょっとお兄ちゃんに相談したいことがあって」
暗い表情の妹が気にかかり、つい明るい表情で気にしないでと答えてしまう。年は三つ下の妹だが紫陽は妹のことを可愛がっていた。
部屋に招き入れたはいいが、妹は所在なさげに部屋に立ったまま動かない。とりあえず、イスに座るよう指示を出すと、ようやくイスに腰を下ろす。
「お兄ちゃんは、スマホを持たなくても大丈夫なんだね」
「まあ、これだけ世間でやばそうなことになっていたら、当然だろ。スマホがらみの相談なのか?」
妹はきゅっと口を引き結び、彼の質問に答えようとしなかった。紫陽の部屋に来たということは、話があるからだろう。優しい調子で紫陽は妹に話を促す。
「オレは、相談には乗れても、解決策を出してやることは無理だからな。オレに解決策が出るようなら、世界はこんな状況になっていない。だが、話を聞くことで、お前の気持ちが楽になるというなら、お兄ちゃんは話を聞いてやってもいい。何があった?」
「わた、私の友達が」
すみれは、話す決心がついたのか、ようやく言葉をこぼし始めた。感情が高ぶっているのか、すでに涙が瞳から零れ落ちている。すみれは兄に悩んでいることを正直に話すことにした。
「あんな力を使えるということは、クラスメイトも、もしかしたら……」
嫌なことが頭に浮かぶが、紫陽の電話に着信があり思考は遮られた。
「もしもし」
「まだ寝ていないようだな。よかった。これから、あの教室で起きていたことを説明してやろうかと思ったんだが、今時間は大丈夫か?」
「連絡がなかったら、こちらから電話しようと思っていたところだ。自分の部屋にいるから、問題ない」
「電話でもいいが、直接会って話したいところだ。こんな時間だが、外に出ることは可能か?」
電話の相手はあやのだった。わざわざ外に出て話したいと言ってきたが、電話では話しにくいことなのだろうか。窓の外を見るとザーザーと音を立てて雨が降っている。
「雨が結構降っている。お前は、濡れても大丈夫なのか?」
「私の心配をしてくれているのか。スマホ相手に優しい男だな。確かに、あまり本体が濡れるのは好ましくない。仕方ない。電話で我慢するとするか。電話はあまり好かないのだがな。何せ」
「ああ、もしかして、あやのの身体に響いて、慣れないからか?」
「デリカシーのない奴だ」
彼女が電話を嫌がる理由が頭に浮かび、無意識のうちに言葉にしていた。その言葉に苛立ったように言葉が返される。
しかし、すぐに気持ちを切り替えたのか、電話越しに咳払いの音が聞こえる。そして、彼女は紫陽に電話してきた用件を話し始める。
「教室でのことだが、あれは、我らに乗っ取られている人間になら、誰にでも使えるものだ。我らから出ている微弱な電波を介して、他人のスマホの動きを止めることができる。我ほどの上位になってくると、そこらのスマホなど簡単に動きを封じることが可能だ」
「上位?」
聞きなれない言葉に紫陽は首をかしげる。スマホにそんな序列があるとは初耳だ。
「スマホにもそんなものが存在するのか。だとすると、それはどうやって」
「人間と同じだ。スペックによって序列がついてくる。そして、我のスペックは」
「トントン」
「悪い。いったん電話を切るぞ」
突然、部屋のドアがノックされた。無視するわけにもいかず、紫陽は部屋に入っていいと告げる。電話をさりげなくベッド淵に置き、ゴロゴロとベッドの中央で転がっていると、ゆっくりとドアを開けて入ってきたのは、妹のすみれだった。
「ごめんね、お兄ちゃん、ちょっとお兄ちゃんに相談したいことがあって」
暗い表情の妹が気にかかり、つい明るい表情で気にしないでと答えてしまう。年は三つ下の妹だが紫陽は妹のことを可愛がっていた。
部屋に招き入れたはいいが、妹は所在なさげに部屋に立ったまま動かない。とりあえず、イスに座るよう指示を出すと、ようやくイスに腰を下ろす。
「お兄ちゃんは、スマホを持たなくても大丈夫なんだね」
「まあ、これだけ世間でやばそうなことになっていたら、当然だろ。スマホがらみの相談なのか?」
妹はきゅっと口を引き結び、彼の質問に答えようとしなかった。紫陽の部屋に来たということは、話があるからだろう。優しい調子で紫陽は妹に話を促す。
「オレは、相談には乗れても、解決策を出してやることは無理だからな。オレに解決策が出るようなら、世界はこんな状況になっていない。だが、話を聞くことで、お前の気持ちが楽になるというなら、お兄ちゃんは話を聞いてやってもいい。何があった?」
「わた、私の友達が」
すみれは、話す決心がついたのか、ようやく言葉をこぼし始めた。感情が高ぶっているのか、すでに涙が瞳から零れ落ちている。すみれは兄に悩んでいることを正直に話すことにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる