人類はスマホに寄生されました

折原さゆみ

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9狙われた兄妹

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「はあはあ。ここまでくればいいだろう」

「突然、教室を、出て、何が、したいんだ」

 彼女が足を止めたのは、紫陽の家に入ってからだった。玄関に入り、ドアのカギを施錠して、ようやく口を開く。高校から全速力で走って帰宅したため、紫陽もも全身汗だくで、息が切れている。玄関にへたり込むように倒れこんだ彼女に、紫陽はようやく、彼女の突然の行動を問い詰めることができた。


「お兄ちゃん!」

「どうしてすみれが家に居る?今日は平日で、オレと一緒で学校があるはずだろう?」

帰宅すると、妹が家の中にいた。玄関のドアが開く音で、彼らが帰宅したことに気付いたのだろう。二人に駆け寄ってくる。妹は朝、出かける前に見た制服姿のままだった。

「ええと、あやのさんからメールが届いて、今すぐ帰宅した方がいいって。お兄ちゃんも家に連れて帰るっていうから」

「こいつの指示に従ったと?こいつの言うことをそう簡単に」

 すみれが不安そうに、兄とあやのの顔を交互に見ながら、家に居た理由を説明する。幼馴染の言葉を簡単に信用してしまった妹に、紫陽は文句を言おうと口を開く。

「その辺にしておけ。妹を責めることはない。我の指示と妹の行動が正しかったことは、今にわかる」

「じゃあ、さっさとオレ達を帰宅させたことを説明しろよ」

「我の予想が正しければ、そろそろ動画が終わる頃だ。すみれ、部屋の施錠はしてあるか。すべての窓はしっかりと施錠がされているか、いますぐ確認した方がいい」


「おい、人の話を」

 は、紫陽の言葉を無視して、すみれに指示を出す。すみれは彼女のただならぬ雰囲気に戸惑っていたが、素直に指示に従い、二階の窓のカギを確認するため、階段を上がっていく。

「それと、紫陽。今から誰が来ても、家のカギを開けるなよ。知り合いでも親でもカギを開けてはダメだ。開けてしまえば最後、我はお前らを守り切れる保証はない」

 切羽詰まった様子で話す彼女の様子は、どこか焦っているように見えた。これから自分たちの身に何が起こるというのだろうか。それを事前に予測した彼女が、自分たち兄妹を守ってくれるとでもいうのか。ここは、素直に従った方がいいと思い、彼女の忠告を聞き入れる。

「わ、わかった」

「素直でいいな。では、我の行動を説明する前に、動画の方を見てみるか」

 幼馴染の特権からか、勝手には、玄関からリビングに向けて歩き出す。いつまでも玄関に居ても仕方ないと、紫陽も慌てて彼女の後ろについていく。

 リビングにたどりつくと、彼女はソファに座り、スマホを左手で操作する。すぐに動画の画面に切り替わる。動画はまだ続いていた。画面の中の女性が説明を続けていた。



『……ということで、周囲に不自然にスマホの成長が止まっている者、人格がここ最近で急に変わったように見える者、彼らは我々や人間にとって、救世主になりえる存在かもしれない。彼らを研究することで、我々スマホや人間により良い共生社会が見えてくるだろう。すでに我々と人間の科学者は提携を結び、研究を始めている。そのような人間を見かけたら、すぐに専門機関に連絡を入れて欲しい』

「こ、この動画で言われている人間って……」

「最後まで動画を見ろ」


『以上で今回の動画は終わりだ。言い忘れていたが、我も、この女性の身体に寄生してだいぶたつが、彼らと同じような存在らしい。我はスマホの代表者として、このまま動画配信を続けていくつもりだ。我の正体は秘匿されるよう伝えている。我以外の人間やスマホを探すことが大切だ。では、また、動画配信できる日を楽しみにしている』

 動画はようやく終わったようだ。最後の方に、とんでもない情報が解禁された。ちらりと彼女の顔を盗み見るが、彼女の無表情な顔からは、何も読み取ることができなかった。この情報が動画で全世界に配信されることを彼女はあらかじめ知っていたのだろうか。だから、動画で言っていた特別な人間、スマホに寄生された人格を乗っ取られた人間、という自分たちが狙われることを見越して、紫陽たちを帰宅させたのかもしれない。


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