45 / 59
9狙われた兄妹
6
しおりを挟む
「あれ?さっきまで両手に荷物を持っていたのに、今は持っていないよ。それに、手にはタブレットサイズのスマホ?がくっついている」
「本当だ」
あやのの言葉の真偽を確認するため、紫陽とすみれが画面越しに自分たちの母親だと思われる人間を観察する。すると、ある違和感が目についた。すみれの言葉に紫陽も頷くが、そうなると、隣で二人の様子をうかがっている幼馴染の言葉を肯定することになる。
「あやのさんは、『スマホ』って言っていたけど、実はうちの親、スマホに寄生されたくないから、スマホを解約したはずだよね?私のスマホも危うく解約されそうになって、さすがにそれは嫌だって反論した記憶があるよ」
「確かに、それはオレも知っている」
『ということは、本当に……』
「だから言っただろう?あれは、お前らを研究対象として誘拐しようとしている奴らが放った、スマホに寄生された憐れな犠牲者だ」
二人の言葉はハモりを見せた。その言葉にあやのは驚くことなく、冷静に彼らの正体を説明する。
「私たちはこれから、どうしたらいいのかな」
残酷な事実を述べた彼女に対し、兄に助言を求める妹。紫陽はあやのに問いかける。
「オレからも教えてくれ。もしかしたら、お前もオレ達を利用しようという魂胆かもしれないが、まだお前の方が信じられる気がする」
「ふん、我もお前たちと同じような、狙われている存在。どうしたらいいかと言われても、それはお前たち次第だ。とりあえず、今日のところはこのまま家でおとなしくしているのが正解だな」
ちらりとインターホン越しの画面を見ると、いまだに玄関から離れず、じっと一人の人間が座り込んでいる。もっと自分を家に入れろと主張してもいいはずなのに、最初に一声以外に言葉を発する様子は見られない。それが余計に不気味で、急いで画面の電源を落とした。
母親だと思っていた玄関前の人間を無視して、夕飯を適当に済ませ、順番に入浴を済ませると、三人は紫陽の部屋に集まった。すでに深夜に近い時刻となり、辺りはしんと静まり返っている。
「今日はお兄ちゃんの部屋で一緒に寝てもいいかな?なんだか、一人で寝るのは怖くて」
「我もこの部屋で寝るつもりだ。三人仲良く、同じ部屋で寝ることにしよう」
紫陽も三人で同じ部屋で寝ることに賛成だった。一人になるには、この状況は不安すぎる。軽く頷いて同意した。
「じゃあ、今日はもう遅いし、寝るか」
紫陽は自分のベッドに、二人は床に敷いた布団に横になる。紫陽が部屋の電気を消すと、部屋が一気に暗くなる。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
兄弟二人は、疲れが一気に押し寄せ、すぐに寝息を立ててぐっすりと寝てしまった。あやのだけは、じっと天井の壁を見つめ、なかなか眠りにつくことができなかった。
「本当だ」
あやのの言葉の真偽を確認するため、紫陽とすみれが画面越しに自分たちの母親だと思われる人間を観察する。すると、ある違和感が目についた。すみれの言葉に紫陽も頷くが、そうなると、隣で二人の様子をうかがっている幼馴染の言葉を肯定することになる。
「あやのさんは、『スマホ』って言っていたけど、実はうちの親、スマホに寄生されたくないから、スマホを解約したはずだよね?私のスマホも危うく解約されそうになって、さすがにそれは嫌だって反論した記憶があるよ」
「確かに、それはオレも知っている」
『ということは、本当に……』
「だから言っただろう?あれは、お前らを研究対象として誘拐しようとしている奴らが放った、スマホに寄生された憐れな犠牲者だ」
二人の言葉はハモりを見せた。その言葉にあやのは驚くことなく、冷静に彼らの正体を説明する。
「私たちはこれから、どうしたらいいのかな」
残酷な事実を述べた彼女に対し、兄に助言を求める妹。紫陽はあやのに問いかける。
「オレからも教えてくれ。もしかしたら、お前もオレ達を利用しようという魂胆かもしれないが、まだお前の方が信じられる気がする」
「ふん、我もお前たちと同じような、狙われている存在。どうしたらいいかと言われても、それはお前たち次第だ。とりあえず、今日のところはこのまま家でおとなしくしているのが正解だな」
ちらりとインターホン越しの画面を見ると、いまだに玄関から離れず、じっと一人の人間が座り込んでいる。もっと自分を家に入れろと主張してもいいはずなのに、最初に一声以外に言葉を発する様子は見られない。それが余計に不気味で、急いで画面の電源を落とした。
母親だと思っていた玄関前の人間を無視して、夕飯を適当に済ませ、順番に入浴を済ませると、三人は紫陽の部屋に集まった。すでに深夜に近い時刻となり、辺りはしんと静まり返っている。
「今日はお兄ちゃんの部屋で一緒に寝てもいいかな?なんだか、一人で寝るのは怖くて」
「我もこの部屋で寝るつもりだ。三人仲良く、同じ部屋で寝ることにしよう」
紫陽も三人で同じ部屋で寝ることに賛成だった。一人になるには、この状況は不安すぎる。軽く頷いて同意した。
「じゃあ、今日はもう遅いし、寝るか」
紫陽は自分のベッドに、二人は床に敷いた布団に横になる。紫陽が部屋の電気を消すと、部屋が一気に暗くなる。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
兄弟二人は、疲れが一気に押し寄せ、すぐに寝息を立ててぐっすりと寝てしまった。あやのだけは、じっと天井の壁を見つめ、なかなか眠りにつくことができなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる