56 / 59
11人類とスマホの共生のために
6
しおりを挟む
『この女の我慢につき合うのも限界だ。さて、お前たちが我々と交渉するために呼ばれたのか?まだ子供のように見えるが?』
「子どもだろうが、甘く見ない方がいいぞ。何せ、こいつらは、他の人間のように操ることはできない。つまり、いまだに我々スマホに寄生されていない、希少な人間だ」
『お前は我と同じようにその女の意識を乗っ取った珍しいスマホか。そのお前が言うのなら、問題はないか。別に我々は人間の交渉相手が子供でも大人でも構わない。きちんと話ができればそれでいい』
「あなたは、池谷さん、ではないのですか?」
自分の幼馴染と会話する女性が今までとは別人だと理解した紫陽が恐る恐る声をかける。あやのに向けていた視線を紫陽に向けた女性は、ため息を吐きながらも質問に答えた。
『それを聞いたところで何になる。もう、この女の余興につき合っていられなくなった。だから、彼女の意識を消滅させたに過ぎない。お前らに関係のない話だ』
「しょ、消滅させた……」
『何をそんなに驚くことがある。そこにいる女はすでに我と同胞のスマホが意識を乗っ取っているのは明白だろう。まさか、その女の元の意識がまだ残っているとでも思ったのか?』
「彼らを追い詰めるな。わかっているが、口に出して言われると、ショックが大きいのかもしれない。人間には、頭ではわかっていることでも、口に出して認めたくはないこともあるらしい」
紫陽たちが自分の幼馴染の現実を突きつけられて、うすうすわかっていたことを認めざるを得ず、言葉を失っている中、あやのがスマホに意識を完全に乗っ取られた女性をとがめる。女性は納得いかない顔をしていたが、すぐに本題に話を戻す。
『ふむ、人間に寄生しても、いまだに人間についてはわからないことが多いな。それはそれで面白いからよいか。それで、人間たちよ。お前たちは、我々に何を望む?』
女性は、今度は紫陽たちの方に身体ごと向けて、問いかける。本当に彼女が今回のスマホの寄生に関係しているとしたら、紫陽たちの望みは一つである。
「今すぐに、あなたがたスマホの人間への寄生をやめてほ」
「それは無理な話だな。紫陽。言葉に気をつけろ。いまさらそんなことができるわけがないだろう?先ほどのこの女の話を聞いていなかったのか?」
「で、でも、何を望むかと言われたら、私たちはお兄ちゃんの言う通りだと思うよ。私たちはスマホの寄生をやめて欲しい」
紫陽の言葉が途中で遮られたにも関わらず、妹のすみれが言葉を引き継いで、あやのたちに訴える。
『人間に聞いたのが悪かったな。そんな望みなど、叶えられるわけがない。そもそも、今の状況を引き起こしたのは、他でもないお前ら人間だからな。今さら何を言っても、我々の寄生を防ぐことはできない。あきらめることだ』
「そんな……」
いったい、それ以外に何を望めというのだろうか。スマホに完全に乗っ取られた彼女の言葉が部屋に響き渡る。
『それ以外と言われても、思いつかないというのなら、それでも構わない。我々は今後もお前ら人間に寄生していくだけだ』
「それなら」
紫陽は必死に頭を働かせて、何とか今の状況よりもましな世の中になるように、必死に頭を働かせる。そして、あることを彼女に頼み込む。
「わ、私もお兄ちゃんと同じことを望みます。このまま、今みたいに、無差別に私たちに寄生するよりも、あなたたちもいいでしょう?」
『ふむ、それはそうかもしれないな。お前はどう思う?』
女性は紫陽の提案について、あやのに意見を求めると、首を横に振って自分の意見を伝える。
「われは、お前の意見に従うまで。言っているだろう。メインはお前だと」
『それならば、交渉は成立だな』
こうして、紫陽たちの要望は受け入れられた。スマホと人類の共生の生活が始まることになった。
「子どもだろうが、甘く見ない方がいいぞ。何せ、こいつらは、他の人間のように操ることはできない。つまり、いまだに我々スマホに寄生されていない、希少な人間だ」
『お前は我と同じようにその女の意識を乗っ取った珍しいスマホか。そのお前が言うのなら、問題はないか。別に我々は人間の交渉相手が子供でも大人でも構わない。きちんと話ができればそれでいい』
「あなたは、池谷さん、ではないのですか?」
自分の幼馴染と会話する女性が今までとは別人だと理解した紫陽が恐る恐る声をかける。あやのに向けていた視線を紫陽に向けた女性は、ため息を吐きながらも質問に答えた。
『それを聞いたところで何になる。もう、この女の余興につき合っていられなくなった。だから、彼女の意識を消滅させたに過ぎない。お前らに関係のない話だ』
「しょ、消滅させた……」
『何をそんなに驚くことがある。そこにいる女はすでに我と同胞のスマホが意識を乗っ取っているのは明白だろう。まさか、その女の元の意識がまだ残っているとでも思ったのか?』
「彼らを追い詰めるな。わかっているが、口に出して言われると、ショックが大きいのかもしれない。人間には、頭ではわかっていることでも、口に出して認めたくはないこともあるらしい」
紫陽たちが自分の幼馴染の現実を突きつけられて、うすうすわかっていたことを認めざるを得ず、言葉を失っている中、あやのがスマホに意識を完全に乗っ取られた女性をとがめる。女性は納得いかない顔をしていたが、すぐに本題に話を戻す。
『ふむ、人間に寄生しても、いまだに人間についてはわからないことが多いな。それはそれで面白いからよいか。それで、人間たちよ。お前たちは、我々に何を望む?』
女性は、今度は紫陽たちの方に身体ごと向けて、問いかける。本当に彼女が今回のスマホの寄生に関係しているとしたら、紫陽たちの望みは一つである。
「今すぐに、あなたがたスマホの人間への寄生をやめてほ」
「それは無理な話だな。紫陽。言葉に気をつけろ。いまさらそんなことができるわけがないだろう?先ほどのこの女の話を聞いていなかったのか?」
「で、でも、何を望むかと言われたら、私たちはお兄ちゃんの言う通りだと思うよ。私たちはスマホの寄生をやめて欲しい」
紫陽の言葉が途中で遮られたにも関わらず、妹のすみれが言葉を引き継いで、あやのたちに訴える。
『人間に聞いたのが悪かったな。そんな望みなど、叶えられるわけがない。そもそも、今の状況を引き起こしたのは、他でもないお前ら人間だからな。今さら何を言っても、我々の寄生を防ぐことはできない。あきらめることだ』
「そんな……」
いったい、それ以外に何を望めというのだろうか。スマホに完全に乗っ取られた彼女の言葉が部屋に響き渡る。
『それ以外と言われても、思いつかないというのなら、それでも構わない。我々は今後もお前ら人間に寄生していくだけだ』
「それなら」
紫陽は必死に頭を働かせて、何とか今の状況よりもましな世の中になるように、必死に頭を働かせる。そして、あることを彼女に頼み込む。
「わ、私もお兄ちゃんと同じことを望みます。このまま、今みたいに、無差別に私たちに寄生するよりも、あなたたちもいいでしょう?」
『ふむ、それはそうかもしれないな。お前はどう思う?』
女性は紫陽の提案について、あやのに意見を求めると、首を横に振って自分の意見を伝える。
「われは、お前の意見に従うまで。言っているだろう。メインはお前だと」
『それならば、交渉は成立だな』
こうして、紫陽たちの要望は受け入れられた。スマホと人類の共生の生活が始まることになった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる