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15裏通りにあるカフェ
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「あの、先輩、何処に向かっているのですか?私の家はそっちではないのですが」
「本当に僕を君の家に招待するつもりだったとは驚きだよ。今はやめておこう。まずは座って話せる場所に移動しよう。この近くにオレがよく利用するカフェがあるから、そこによって少し話をしよう」
歩武と清春は学校を出て通学路を歩いていた。最初は歩武が先に歩き、その後ろを清春がついていく形だったが、信号が赤で止まっている途中で、進路が歩武の家から変更となる。そこからは清春の先導で進むことになった。
10分程歩いたところで大通りに出た。歩武もよく使う通りだが、そこに中学生が気軽に入れるようなカフェがあっただろうか。清春は迷いのない足取りで歩を進めていく。大通りの途中にある小道に入っていく。仕方なく歩武もそれを追いかける。
「ついた、ここは僕の秘密基地みたいなものだ。よく利用するんだ。兄はこの店のマスターには嫌われて出禁になっているから、捕まる心配もない」
小道を抜けると、そこに洋風の建物が一軒あり、どうやらここが清春の言うカフェのようだ。大通りをよく利用する歩武は、道を一本外れた場所にこんな建物があることを初めて知った。
「そこに突っ立っていても仕方ないから、さっさと中に入ろう」
「は、はい」
清春が建物中に入るためにドアを開けると、からんという小気味よいベルの音が鳴り、来客を知らせる音が店内に響き渡る。歩武も慌てて中に足を踏み入れる。
〇
「いらっしゃい。おや、清春君じゃないか。珍しいね、平日に来ることなんてめったにないよね。あら、そう言うことね。まったく、今時の男の子は」
「違う。マスターの想像する関係じゃない。兄に目をつけられた被害者の女性だ。いつもの席を使ってもいいかな」
「まったく、冗談も通じない男の子は、いくら顔が良くてもモテないよ。お兄さん関係なのね。可愛そうに。いったい君みたいな中学生が何をやらかして目をつけられたのやら」
店に入ると、ガタイの良い男性が快く出迎えてくれた。男と清春はずいぶんと親しい間柄に見えた。清春がマスターと呼んでいるということは、この店の店主ということになるのだろうか。
店主が自分たちの関係を誤解しそうになったので、はらはらしたが、歩武が口を開く前に清春がバッサリと切り捨てた。そのため、誤解されずに済んだのでほっと溜息をつき、歩武は改めて店の内部を観察する。
店内にはテーブル席が6席ほど並べられていた。店の奥にカウンター席が設けられていて、そこにはイスが4つほど置かれていた。マスターと呼ばれた男の他に人の姿はなく。今の時間はお客がいないようだ。壁にかけられた時計で時刻を確認すると、5時半を少し過ぎたところだった。そろそろ人が来る時間帯だろうか。
「ああ、お客がいなくてこの店、大丈夫なのかと心配してくれているのかな。心配しなくていいよ。ここは普通の店とは違うからね。普通のお客さんはめったに来ないんだよ。清春みたいな奴がたむろする場所として提供しているから、秘密の話をするときとかにもってこいな場所となっているんだ」
歩武の不思議そうな顔に、マスターが心を読んだかのように店の説明をしてくれた。疑問が顔に出ていたのかと、恥ずかしくて顔を俯かせる。店主はそんな彼女と清春に席を案内した。
〇
「どうぞごゆっくりと言いたいところだけど、その前に、先にメニューを聞いておこうかな」
「何にしようかな。遠野さんは何が食べたい?少し込み入った話をしようと思うから、食べたいものをマスターに言うといいよ。大抵のものは作ってくれるよ」
案内されたのは、店の中央に並べられたテーブル席とは別にある、一番奥の四方を衝立に囲まれた個室みたいな場所だった。椅子に腰かけた清春の正面に歩武も同じように座る。二人が座るのを確認して、店主が食べたい料理を聞くために口を開く。
「い、いきなり言われても、そのメニュー表とかはないんですか。お金のこともありますし」
清春は慣れた様子で、店主の言葉に対応する。しかし、歩武は突然、食べたいものと言われても困ってしまう。困り顔の歩武に店主は笑いながら、助け舟を出す。
「遠野さん、っていうんだね。気にしなくていいよ。どうせ、清春が無理やり連れてきたみたいなものでしょ。清春がここに女の子を呼んだのは初めてだけど、人を呼んだのは別に初めてじゃない。彼らには初回に限り、サービスで料理を提供することにしているから、お金の心配はしなくていいよ。食べたい料理を遠慮なく行ってくれれば」
「オレは、今日はナポリタンが食べたい」
店主が話している途中で、清春は自分の食べたい料理を身勝手に注文する。そして、じろりと催促するかのように睨まれた歩武は、とっさに頭に思い浮かんだ料理名を口にしていた。
「ウサギ肉のシチュ―」
「ぶっ」
「す、すいません。ええと、ええと」
「シチューはわかるけど、ウサギ肉って」
「面白い子だねえ」
自分の失言に気付いたが、思いついたのがそれだったのだから仕方ない。二人に笑われてしまったが、今は特に食べたいものがなかったので、シチューを撤回して、手軽に食べられるサンドイッチを頼むことにした。
〇
「では今度こそ、ごゆっくり」
二人から注文を聞いた店主は、料理を準備するためにその場を離れた。店主の姿が店の奥に消えると、清春が歩武に話しかける。
「悪い人じゃないんだけどね。あの人」
「まあ、先輩との会話からなんとなくわかります。それで、話って、ミコのことですよね、当然」
歩武はすぐに本題に入ろうと、自ら話題を提供する。校門前の長身の男のことも気にかかるが、ミコの話の中で説明されるだろうと予測して、口にしなかった。
「本当に妹のことが気になるんだね。その前に、少し、僕たちの話しを聞いてもらってもいいかな。この前の高木さんの件で、少しはオレの能力とか、オレの家の仕事とか想像はつくと思うけど」
ミコが人間ではないかもしれない。そんな懸念が高まる中、突然、自分の身の上話を始めようとする清春を歩武は止めなかった。ここでミコと関係のない話をするとは思えない。すでに、ミコが人外である可能性を否定できない材料がそろいすぎていた。歩武は黙って頷くだけに留めた。歩武の反応に満足したのか、咳払いをしてから、清春は自分たちの能力と仕事について語り始めた。
「本当に僕を君の家に招待するつもりだったとは驚きだよ。今はやめておこう。まずは座って話せる場所に移動しよう。この近くにオレがよく利用するカフェがあるから、そこによって少し話をしよう」
歩武と清春は学校を出て通学路を歩いていた。最初は歩武が先に歩き、その後ろを清春がついていく形だったが、信号が赤で止まっている途中で、進路が歩武の家から変更となる。そこからは清春の先導で進むことになった。
10分程歩いたところで大通りに出た。歩武もよく使う通りだが、そこに中学生が気軽に入れるようなカフェがあっただろうか。清春は迷いのない足取りで歩を進めていく。大通りの途中にある小道に入っていく。仕方なく歩武もそれを追いかける。
「ついた、ここは僕の秘密基地みたいなものだ。よく利用するんだ。兄はこの店のマスターには嫌われて出禁になっているから、捕まる心配もない」
小道を抜けると、そこに洋風の建物が一軒あり、どうやらここが清春の言うカフェのようだ。大通りをよく利用する歩武は、道を一本外れた場所にこんな建物があることを初めて知った。
「そこに突っ立っていても仕方ないから、さっさと中に入ろう」
「は、はい」
清春が建物中に入るためにドアを開けると、からんという小気味よいベルの音が鳴り、来客を知らせる音が店内に響き渡る。歩武も慌てて中に足を踏み入れる。
〇
「いらっしゃい。おや、清春君じゃないか。珍しいね、平日に来ることなんてめったにないよね。あら、そう言うことね。まったく、今時の男の子は」
「違う。マスターの想像する関係じゃない。兄に目をつけられた被害者の女性だ。いつもの席を使ってもいいかな」
「まったく、冗談も通じない男の子は、いくら顔が良くてもモテないよ。お兄さん関係なのね。可愛そうに。いったい君みたいな中学生が何をやらかして目をつけられたのやら」
店に入ると、ガタイの良い男性が快く出迎えてくれた。男と清春はずいぶんと親しい間柄に見えた。清春がマスターと呼んでいるということは、この店の店主ということになるのだろうか。
店主が自分たちの関係を誤解しそうになったので、はらはらしたが、歩武が口を開く前に清春がバッサリと切り捨てた。そのため、誤解されずに済んだのでほっと溜息をつき、歩武は改めて店の内部を観察する。
店内にはテーブル席が6席ほど並べられていた。店の奥にカウンター席が設けられていて、そこにはイスが4つほど置かれていた。マスターと呼ばれた男の他に人の姿はなく。今の時間はお客がいないようだ。壁にかけられた時計で時刻を確認すると、5時半を少し過ぎたところだった。そろそろ人が来る時間帯だろうか。
「ああ、お客がいなくてこの店、大丈夫なのかと心配してくれているのかな。心配しなくていいよ。ここは普通の店とは違うからね。普通のお客さんはめったに来ないんだよ。清春みたいな奴がたむろする場所として提供しているから、秘密の話をするときとかにもってこいな場所となっているんだ」
歩武の不思議そうな顔に、マスターが心を読んだかのように店の説明をしてくれた。疑問が顔に出ていたのかと、恥ずかしくて顔を俯かせる。店主はそんな彼女と清春に席を案内した。
〇
「どうぞごゆっくりと言いたいところだけど、その前に、先にメニューを聞いておこうかな」
「何にしようかな。遠野さんは何が食べたい?少し込み入った話をしようと思うから、食べたいものをマスターに言うといいよ。大抵のものは作ってくれるよ」
案内されたのは、店の中央に並べられたテーブル席とは別にある、一番奥の四方を衝立に囲まれた個室みたいな場所だった。椅子に腰かけた清春の正面に歩武も同じように座る。二人が座るのを確認して、店主が食べたい料理を聞くために口を開く。
「い、いきなり言われても、そのメニュー表とかはないんですか。お金のこともありますし」
清春は慣れた様子で、店主の言葉に対応する。しかし、歩武は突然、食べたいものと言われても困ってしまう。困り顔の歩武に店主は笑いながら、助け舟を出す。
「遠野さん、っていうんだね。気にしなくていいよ。どうせ、清春が無理やり連れてきたみたいなものでしょ。清春がここに女の子を呼んだのは初めてだけど、人を呼んだのは別に初めてじゃない。彼らには初回に限り、サービスで料理を提供することにしているから、お金の心配はしなくていいよ。食べたい料理を遠慮なく行ってくれれば」
「オレは、今日はナポリタンが食べたい」
店主が話している途中で、清春は自分の食べたい料理を身勝手に注文する。そして、じろりと催促するかのように睨まれた歩武は、とっさに頭に思い浮かんだ料理名を口にしていた。
「ウサギ肉のシチュ―」
「ぶっ」
「す、すいません。ええと、ええと」
「シチューはわかるけど、ウサギ肉って」
「面白い子だねえ」
自分の失言に気付いたが、思いついたのがそれだったのだから仕方ない。二人に笑われてしまったが、今は特に食べたいものがなかったので、シチューを撤回して、手軽に食べられるサンドイッチを頼むことにした。
〇
「では今度こそ、ごゆっくり」
二人から注文を聞いた店主は、料理を準備するためにその場を離れた。店主の姿が店の奥に消えると、清春が歩武に話しかける。
「悪い人じゃないんだけどね。あの人」
「まあ、先輩との会話からなんとなくわかります。それで、話って、ミコのことですよね、当然」
歩武はすぐに本題に入ろうと、自ら話題を提供する。校門前の長身の男のことも気にかかるが、ミコの話の中で説明されるだろうと予測して、口にしなかった。
「本当に妹のことが気になるんだね。その前に、少し、僕たちの話しを聞いてもらってもいいかな。この前の高木さんの件で、少しはオレの能力とか、オレの家の仕事とか想像はつくと思うけど」
ミコが人間ではないかもしれない。そんな懸念が高まる中、突然、自分の身の上話を始めようとする清春を歩武は止めなかった。ここでミコと関係のない話をするとは思えない。すでに、ミコが人外である可能性を否定できない材料がそろいすぎていた。歩武は黙って頷くだけに留めた。歩武の反応に満足したのか、咳払いをしてから、清春は自分たちの能力と仕事について語り始めた。
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