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17ジャスミンの不審な行動
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「ごめん、蒼紗。今日は一緒に帰れない。また今度一緒に帰ろうね。ああ、綾崎さん、不本意だけど、蒼紗のことよろしくね」
「ごめん、今日は普通の服で。気合入れようと思ったんだけど、どうにも化粧ノリが悪くて……。代わりに綾崎さんが一緒にコスプレしてくれるみたいだから」
バレンタイン会議以降、ジャスミンが不審な行動をすることが多くなった。いつもなら、一緒に帰ることはもちろん、私に合わせてコスプレすることは当たり前だったのに、それが最近なくなっている。それ自体に問題はなく、むしろまとわりつかれなくなってせいせいするのだが、こうも突然まとわりつかれなくなると、気味が悪い。
ジャスミンがようやく、私以外にも目を向けるようになったのなら、その門出を祝わなくてはならない。それなのに、どうにも心から祝えない自分がいた。
理由は簡単だ。私と一緒に居られないとわかり、私に声をかけるジャスミンの顔が、私に時間を割かなくていいから清々する、という感じではないのだ。毎回、ものすごく申しわけなさそうな悲しそうな顔で、一緒に居られないと話すものだから、何か私に隠しているということがバレバレなのである。
「仕方ない。ちょっとばかり様子を観察するとしますか」
それにもう一つ気がかりなのは、ジャスミンが私と離れる際に、わざわざ綾崎さんに私を託していることだ。もう、いい年した大学生なのだから、子供みたいに世話を焼かれる必要はない。しかし、私を一人にしたくないというジャスミンの配慮かなと思うので、余計に私が狙われているから、ジャスミンが何か裏で働きかけているような気がしてならない。
「それで、蒼紗さんは、佐藤さんのことが気になって、尾行しようというわけですか。まったく、実は蒼紗さんも佐藤さんのことがだいすきなんじゃないですか!」
私は気を付けていたつもりだった。一人でこっそりジャスミンのことを尾行しようとしたら、あっさり綾崎さんにばれてしまった。
「別にジャスミンのことは好きとかいうわけじゃなく、突然私から距離を取り出したから、気になってしまって、だから好きとかそういうのじゃなく……」
「どう考えても、すきじゃないですか!いつもは相手からぐいぐいやってくるのに、やってこなくなると、途端に気になりだすのは、もうその相手に毒されているんです!」
綾崎さんにも、変化があった。九尾たちが家に居る理由を雑に説明したジャスミンや九尾自身のせいで、私にケモミミ少年萌えという趣味があることになってしまっていた。そのため、綾崎さんはバレンタイン会議以降、なぜか毎日頭と尻尾にケモミミと尻尾をつけて大学生活を送っている。イヌだったりネコだったり、キツネだったりウサギだったり、よくもまあ、ここまで種類があるものだというほどのケモミミのレパートリーを披露するので、困惑している。
残念ながら、私の趣味、性癖は少年のケモミミに萌えるらしい。中学生くらいまでの少年少女のケモミミ姿には萌えるが、すでに大学生となった、大人の女性に関しては、かわいいなとは思うが、彼女の姿を見て興奮することはなかった。そんなことは綾崎さんに言うわけにはいかないので、好きにさせている。
ちなみに、今は大学の昼休み。例によって、昼を一緒に食べようとしないジャスミンがどこに行こうとしているのか尾行しようとしたところである。昼食を急いで食べ終え、ジャスミンが向かった方角に足を向けようとしていたら、綾崎さんに話しかけられた。
「どうしてそんなに急いでお昼を食べていたのですか。何か用事でもあるのですか?」
私は基本的に嘘をつくのは苦手で、ジャスミンを追いかけようとしていることをどうやってごまかそうかと考えていると、綾崎さんに指摘されてしまったのだ。綾崎さんは、呆れた顔をしながらも、なぜか私に少し待つように伝えると、急いで彼女も昼食を食べ終えた。そして、何事もなかったかのように、行きましょうか、と言いながら、ジャスミンが向かった方向に歩き出した。私も慌てて綾崎さんの後を追う。
尾行しようと思い始めたのは昨日。そのため、今日は尾行開始日ということで、服装も忍者っぽくしてみた。忍者っぽく、上下黒い忍者服みたいな袴、頭にずきん、口元もしっかりと隠している。綾崎さんは、上下黒い服に黒いマスクをつけていた。ヤンキーにしか見えないが、頭にネコ耳と腰のあたりに黒い尻尾が伸びていたことから、黒猫のイメージなのだろう。
「ああ、あそこは、私たちが使う控室ですね。いったいだれとお昼を食べるのでしょうか?」
「そういえば、彼氏がいたんでした。もしかしたら、今までも彼氏と一緒に居たのかもしれないですね」
「それはありえません。蒼紗さんより彼氏を優先するなんて真似、蒼紗さん信者の佐藤さんがするわけがありません。佐藤さんが今までそんなことをしたことがありましたか?蒼紗さん信者、不本意ながら二位の私が言うのですから、間違いありません。彼氏と仲良くお昼を食べるために、蒼紗さんとのお昼をやめるはずがありません!」
「いつの間にそんなものを結成していたのか気になるところですが。まあ、その話はおいおい聞くとして、彼氏なんですから、一緒にお昼を食べてもおかしくないと思いますけど……」
私たちがジャスミンの向かった方向を早足で進んでいくと、ジャスミンはすぐに見つけることができた。私たち文学部が使う控室に入っていくところだった。そこで彼氏と待ち合わせて一緒に昼食を食べるのだろうか。こっそりと控室に入ったジャスミンの後を追って、私と綾崎さんも控室の前にやってきた。
「どうしましょう。このまま中に入って、ジャスミンと彼氏の二人きりの時間を邪魔したら迷惑でしょうか」
「いや、むしろ佐藤さんなら、蒼紗さんが入ってきた、ラッキーと思うかもしれません」
「おや、朔夜さんと綾崎さんではないですか。珍しいですね。昼休みなのに、控室の前にいたりして。確か、あなた方は大抵、食堂で昼食をとっていますよね」
控室の前で入るか入らないか議論していたら、面倒な人物が声をかけてきた。ジャスミンの不審な行動の理由を突き止めるために動いただけなのに、どうしてこうも面倒な奴に絡まれてしまうのだろうか。
「ごめん、今日は普通の服で。気合入れようと思ったんだけど、どうにも化粧ノリが悪くて……。代わりに綾崎さんが一緒にコスプレしてくれるみたいだから」
バレンタイン会議以降、ジャスミンが不審な行動をすることが多くなった。いつもなら、一緒に帰ることはもちろん、私に合わせてコスプレすることは当たり前だったのに、それが最近なくなっている。それ自体に問題はなく、むしろまとわりつかれなくなってせいせいするのだが、こうも突然まとわりつかれなくなると、気味が悪い。
ジャスミンがようやく、私以外にも目を向けるようになったのなら、その門出を祝わなくてはならない。それなのに、どうにも心から祝えない自分がいた。
理由は簡単だ。私と一緒に居られないとわかり、私に声をかけるジャスミンの顔が、私に時間を割かなくていいから清々する、という感じではないのだ。毎回、ものすごく申しわけなさそうな悲しそうな顔で、一緒に居られないと話すものだから、何か私に隠しているということがバレバレなのである。
「仕方ない。ちょっとばかり様子を観察するとしますか」
それにもう一つ気がかりなのは、ジャスミンが私と離れる際に、わざわざ綾崎さんに私を託していることだ。もう、いい年した大学生なのだから、子供みたいに世話を焼かれる必要はない。しかし、私を一人にしたくないというジャスミンの配慮かなと思うので、余計に私が狙われているから、ジャスミンが何か裏で働きかけているような気がしてならない。
「それで、蒼紗さんは、佐藤さんのことが気になって、尾行しようというわけですか。まったく、実は蒼紗さんも佐藤さんのことがだいすきなんじゃないですか!」
私は気を付けていたつもりだった。一人でこっそりジャスミンのことを尾行しようとしたら、あっさり綾崎さんにばれてしまった。
「別にジャスミンのことは好きとかいうわけじゃなく、突然私から距離を取り出したから、気になってしまって、だから好きとかそういうのじゃなく……」
「どう考えても、すきじゃないですか!いつもは相手からぐいぐいやってくるのに、やってこなくなると、途端に気になりだすのは、もうその相手に毒されているんです!」
綾崎さんにも、変化があった。九尾たちが家に居る理由を雑に説明したジャスミンや九尾自身のせいで、私にケモミミ少年萌えという趣味があることになってしまっていた。そのため、綾崎さんはバレンタイン会議以降、なぜか毎日頭と尻尾にケモミミと尻尾をつけて大学生活を送っている。イヌだったりネコだったり、キツネだったりウサギだったり、よくもまあ、ここまで種類があるものだというほどのケモミミのレパートリーを披露するので、困惑している。
残念ながら、私の趣味、性癖は少年のケモミミに萌えるらしい。中学生くらいまでの少年少女のケモミミ姿には萌えるが、すでに大学生となった、大人の女性に関しては、かわいいなとは思うが、彼女の姿を見て興奮することはなかった。そんなことは綾崎さんに言うわけにはいかないので、好きにさせている。
ちなみに、今は大学の昼休み。例によって、昼を一緒に食べようとしないジャスミンがどこに行こうとしているのか尾行しようとしたところである。昼食を急いで食べ終え、ジャスミンが向かった方角に足を向けようとしていたら、綾崎さんに話しかけられた。
「どうしてそんなに急いでお昼を食べていたのですか。何か用事でもあるのですか?」
私は基本的に嘘をつくのは苦手で、ジャスミンを追いかけようとしていることをどうやってごまかそうかと考えていると、綾崎さんに指摘されてしまったのだ。綾崎さんは、呆れた顔をしながらも、なぜか私に少し待つように伝えると、急いで彼女も昼食を食べ終えた。そして、何事もなかったかのように、行きましょうか、と言いながら、ジャスミンが向かった方向に歩き出した。私も慌てて綾崎さんの後を追う。
尾行しようと思い始めたのは昨日。そのため、今日は尾行開始日ということで、服装も忍者っぽくしてみた。忍者っぽく、上下黒い忍者服みたいな袴、頭にずきん、口元もしっかりと隠している。綾崎さんは、上下黒い服に黒いマスクをつけていた。ヤンキーにしか見えないが、頭にネコ耳と腰のあたりに黒い尻尾が伸びていたことから、黒猫のイメージなのだろう。
「ああ、あそこは、私たちが使う控室ですね。いったいだれとお昼を食べるのでしょうか?」
「そういえば、彼氏がいたんでした。もしかしたら、今までも彼氏と一緒に居たのかもしれないですね」
「それはありえません。蒼紗さんより彼氏を優先するなんて真似、蒼紗さん信者の佐藤さんがするわけがありません。佐藤さんが今までそんなことをしたことがありましたか?蒼紗さん信者、不本意ながら二位の私が言うのですから、間違いありません。彼氏と仲良くお昼を食べるために、蒼紗さんとのお昼をやめるはずがありません!」
「いつの間にそんなものを結成していたのか気になるところですが。まあ、その話はおいおい聞くとして、彼氏なんですから、一緒にお昼を食べてもおかしくないと思いますけど……」
私たちがジャスミンの向かった方向を早足で進んでいくと、ジャスミンはすぐに見つけることができた。私たち文学部が使う控室に入っていくところだった。そこで彼氏と待ち合わせて一緒に昼食を食べるのだろうか。こっそりと控室に入ったジャスミンの後を追って、私と綾崎さんも控室の前にやってきた。
「どうしましょう。このまま中に入って、ジャスミンと彼氏の二人きりの時間を邪魔したら迷惑でしょうか」
「いや、むしろ佐藤さんなら、蒼紗さんが入ってきた、ラッキーと思うかもしれません」
「おや、朔夜さんと綾崎さんではないですか。珍しいですね。昼休みなのに、控室の前にいたりして。確か、あなた方は大抵、食堂で昼食をとっていますよね」
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