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19命の重さ
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「では、今日の連絡事項を話す前に一つ、大事な話があります。ニュースを見て知っていると思いますが、昨日、また君たちと同じ高校生たちが集団自殺しました。この学園近くの県立高校の生徒だそうです」
どうやら、昨日のニュースは教師間でも話題になっていたようだ。生徒の健やかな高校生活を守るためにはどうしたらいいのか、教師たちは会議でもしたのだろうか。
「君たち高校生にもいろいろな悩みがあることはわかる。だが、それは本当に死ななくてはならないような深刻な悩みなのか。もしそうだとしても、その悩みを一人で抱え込むことはやめて欲しい。死ぬことですべて解決できると思わないで欲しい。何かあったら、友達でも家族でも、先生でも誰でもいいから相談して、【自殺】という方法はとらないでください」
朝からとても重たい話題である。明寿がそう思うのなら、若い高校生たちにとってはさらに重たく嫌な話題だろう。明寿がちらりと辺りを見渡すが、クラスメイトはいつも通りの表情で担任の話に耳を傾けている。明寿以外の誰も、高校生の死に同情や悲しみという感情を抱いている様子は見られない。
(スマホを操作している生徒もいるのか)
今時の高校生が「死」に対してどのように感じるのか。今みたいに、どこか他人事のように思うのは若さゆえのことだろうか。
担任は近くの県立高校だと言って、詳細な高校名は避けていたが、既にクラスメイトの大半は第二高校の生徒が自殺したことを知っている。近くだとは言え、知り合いが死んだわけではない。赤の他人だからこそ、無関心を装えるのかもしれない。
(私だってそうだ。若い高校生の命が亡くなっても、悲しいと思うだけだ。それ以上の感情はない。それがもし)
先輩だったら。
明寿は急に背筋が冷たくなった。高梨は明寿に渡したノートに、初めて出会った日、空き教室で自殺する予定だと書いていた。それは結局、実行されることはなかった。明寿との出会いで自殺をやめたと書かれていた。
もし、あの日、4階の空き教室に明寿が足を運ばなかったら、どうなっていたのか。想像するだけで目の奥が熱くなる。
「……ということで、朝のHRはこれで終わりです。先ほども言いましたが、何か悩みを抱えているのなら、身近な人に相談してください」
担任が話を終えて、教室を出ていく。その様子を明寿はぼんやりと眺める。
その日の午前中、明寿は授業に集中することが出来なかった。
明寿は4時間目の授業が終わると同時に教室を飛び出した。今朝のHRでのことが頭から離れず、一秒でも早く高梨の顔が見たくなった。
「今日は私の方が早いのか……」
4階の空き教室に到着するが、高梨はいなかった。がらんとした空間が広がるのみだ。今日は高梨のクラスの授業が長引いているのだろうか。仕方なく、明寿は机といすを準備して高梨を待つ。
高梨を待つ間、明寿は今朝のクラスメイトが口にして、担任の話にもあった【集団自殺】についてスマホで調べることにした。
「ここのボタンを押してから、ここを押して……。あとは検索したい言葉を入力」
高梨を待つ間、白石はずっと疑問に思っていたことをスマホで調べてみることにした。
『高校生 集団自殺』
(わからないことがすぐに調べられるなんて、便利な世の中だな)
明寿が入力した言葉をスマホは直ぐに調べて結果を表示する。昨日スマホで見た記事があったので、それをタップして記事の内容を読むことにした。
昨日、5月○○日、県立第二高校の生徒三人が近くの公園で遺体としてみつかった。いずれも目立った外傷はなく、警察は死因を調べている。
昨日見た内容は第二高校の前に起きた自殺を取り上げていたらしい。
(これらの事件に黒幕はいるのだろうか)
これまでの事件では遺書が見つかっている。そして、彼らが悩みを相談したというSNSのアカウントも判明している。この相談先のSNSが怪しいと思うのは警察も同じで捜査が進んでいるが、毎回、アカウントを消され新たなアカウントが作られていたちごっことなっているようだ。
記事を読んでいた明寿はふと、今朝のクラスメイトの言葉を思い出す。彼らは自殺した高校生が【新白寿人】だと言っていた。しかし、そんな内容はどこにも見当たらない。
(高校生だけが知る情報源があるのかもしれない)
とはいえ、明寿にとっては高梨以外の高校生が自殺したとしても、悲しみはするがそれ以上の感情を持つことはない。
「高梨先輩、遅いな」
集団自殺について調べ終えた明寿だが、高梨が空き教室にくる気配はない。昼休み開始から15分が経過していた。もしかしたら、今日は用事があって、明寿の元に来ないかもしれない。
(だとしても、私は待ち続ける)
教室でクラスメイトとお昼を一緒に食べる気にはなれなかった。明寿はさらに、自分が高校生になってしまった元凶となる【新白寿人】についても調べてみることにした。
どうやら、昨日のニュースは教師間でも話題になっていたようだ。生徒の健やかな高校生活を守るためにはどうしたらいいのか、教師たちは会議でもしたのだろうか。
「君たち高校生にもいろいろな悩みがあることはわかる。だが、それは本当に死ななくてはならないような深刻な悩みなのか。もしそうだとしても、その悩みを一人で抱え込むことはやめて欲しい。死ぬことですべて解決できると思わないで欲しい。何かあったら、友達でも家族でも、先生でも誰でもいいから相談して、【自殺】という方法はとらないでください」
朝からとても重たい話題である。明寿がそう思うのなら、若い高校生たちにとってはさらに重たく嫌な話題だろう。明寿がちらりと辺りを見渡すが、クラスメイトはいつも通りの表情で担任の話に耳を傾けている。明寿以外の誰も、高校生の死に同情や悲しみという感情を抱いている様子は見られない。
(スマホを操作している生徒もいるのか)
今時の高校生が「死」に対してどのように感じるのか。今みたいに、どこか他人事のように思うのは若さゆえのことだろうか。
担任は近くの県立高校だと言って、詳細な高校名は避けていたが、既にクラスメイトの大半は第二高校の生徒が自殺したことを知っている。近くだとは言え、知り合いが死んだわけではない。赤の他人だからこそ、無関心を装えるのかもしれない。
(私だってそうだ。若い高校生の命が亡くなっても、悲しいと思うだけだ。それ以上の感情はない。それがもし)
先輩だったら。
明寿は急に背筋が冷たくなった。高梨は明寿に渡したノートに、初めて出会った日、空き教室で自殺する予定だと書いていた。それは結局、実行されることはなかった。明寿との出会いで自殺をやめたと書かれていた。
もし、あの日、4階の空き教室に明寿が足を運ばなかったら、どうなっていたのか。想像するだけで目の奥が熱くなる。
「……ということで、朝のHRはこれで終わりです。先ほども言いましたが、何か悩みを抱えているのなら、身近な人に相談してください」
担任が話を終えて、教室を出ていく。その様子を明寿はぼんやりと眺める。
その日の午前中、明寿は授業に集中することが出来なかった。
明寿は4時間目の授業が終わると同時に教室を飛び出した。今朝のHRでのことが頭から離れず、一秒でも早く高梨の顔が見たくなった。
「今日は私の方が早いのか……」
4階の空き教室に到着するが、高梨はいなかった。がらんとした空間が広がるのみだ。今日は高梨のクラスの授業が長引いているのだろうか。仕方なく、明寿は机といすを準備して高梨を待つ。
高梨を待つ間、明寿は今朝のクラスメイトが口にして、担任の話にもあった【集団自殺】についてスマホで調べることにした。
「ここのボタンを押してから、ここを押して……。あとは検索したい言葉を入力」
高梨を待つ間、白石はずっと疑問に思っていたことをスマホで調べてみることにした。
『高校生 集団自殺』
(わからないことがすぐに調べられるなんて、便利な世の中だな)
明寿が入力した言葉をスマホは直ぐに調べて結果を表示する。昨日スマホで見た記事があったので、それをタップして記事の内容を読むことにした。
昨日、5月○○日、県立第二高校の生徒三人が近くの公園で遺体としてみつかった。いずれも目立った外傷はなく、警察は死因を調べている。
昨日見た内容は第二高校の前に起きた自殺を取り上げていたらしい。
(これらの事件に黒幕はいるのだろうか)
これまでの事件では遺書が見つかっている。そして、彼らが悩みを相談したというSNSのアカウントも判明している。この相談先のSNSが怪しいと思うのは警察も同じで捜査が進んでいるが、毎回、アカウントを消され新たなアカウントが作られていたちごっことなっているようだ。
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とはいえ、明寿にとっては高梨以外の高校生が自殺したとしても、悲しみはするがそれ以上の感情を持つことはない。
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(だとしても、私は待ち続ける)
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