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第1章 いじめの代償~季節外れの転校生~
1(4)あるクラスメイト(監視者①)
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「鈴木水無月です。よろしくお願いします。」
季節外れの転校生がうちのクラスにやってきた。今日はGW明けの月曜日である。新学期が始まって一カ月もたったこんな変な時期に転校生が来るなんてめずらしい。さらにうちの学校はいなかで、転校生なんてめったに来ないのでクラスのテンションは高まっていた。
転校生はとてもきれいな女子だった。そして、とても大人びて見えた。まるでぼくたちよりも多くの年を重ねて、多くのことを経験してそれが今のかのじょを作っているようだった。そんなことは現実にはあり得ない。そんなことを思ったのは、かのじょがあいさつをした後に笑った顔が笑っているのに無表情だったからだ。確かに顔は笑顔なのに目がまったく笑っていなかった。
どう見たって身長や体つきは小学生高学年の平均くらいだ。ただし、かのじょはとても細かった。ふれれば折れてしまいそうだった。
休み時間になると、転校生の周りにはクラスメイトが集まる。転校生がめずらしく、それぞれが思い思いの質問をし始める。それに対して、真面目にていねいに答えていく転校生。
「どこから来たの。」
「どうしてうちの学校に来たの。」
「水無月さんの前いた学校はどんな様子だった。」
「前いた学校で好きな人はいたの。」
「すきな食べ物は。」
「嫌いな食べ物は。」
「趣味は。」
「特技は。」
いろいろな質問があった。それらの質問に答えていたのだが、クラス中が最も興味を持っている転校前の学校についての質問には口を閉ざしてしまった。どうやらあまり良い思い出がないようだ。
「前いた学校のことはあんまり話したくないわ。ごめんなさい、前の学校で私は仲間外れにされてしまっていて、良い思い出がないの。」
あまりにも悲しそうに言うので、クラスメイトはあわてて話題を変えようとしたり、私たちがきっと今度の学校生活は楽しいものにして見せるからとはげましたりしていた。
しかし、ぼくは気づいてしまった。転校生は悲しそうなふりをしているだけで、本当はただ話したくないだけなのだとことに。そのしょうこに下を向いて悲しそうな声を出してはいたが、その顔には悲しみとはちがう、いらだちやあきれの表情がうかんでいたのをぼくはみのがさなかった。
ぼくのクラスにはクラスをしきる一人の女子がいた。かのじょにさからえるものはいなかった。もちろん、ぼくもその一人である。かのじょの名前は紫苑すみれ。むらさき色の名前なので、クラスの人はぼうりょく的なこととかけて、かげでは「バイオレット」と呼んでいる。ぼくも今後、かのじょをそのように呼ぶことにしよう。
ようち園のころからの付き合いで、バイオレットの地位は安定していた。いわゆるスクールカースト頂点にいた。バイオレットはリーダーシップにあふれて、頼りがいのあるクラスの人気者だったらよかったのだが、そうはいかなかった。
バイオレットの父親はぼくたちが住んでいる地域ではちょっとしたえらい人のようだった。そして、バイオレットはこどもどうしのささいなけんかでも父親に相談するので、ただのこどものけんかなのに大げさになる。父親はむすめにあまいらしく、どんなにバイオレットに非があってもそれを認めようとはせず、相手を責める。父親はとてもこわい人でぼくたちはおこられるのをおそれた。そうしているうちにバイオレットにさからえるものはいなくなったというわけだ。
バイオレットはそのことをきっかけにいじめを始めた。だれもさからうものはいないので本当に好き放題にクラスをひっかきまわしていた。バイオレットに目をつけられていじめられて不登校になってしまったクラスメイトは何人かいる。
ぼくのとなりの席に座る女子もその一人だ。だいぶねばっていたようだが、とうとうこの春には学校に来なくなってしまった。
うちの学校は人数が少なく、クラスは2クラスしかない。さらにはクラスがえが一年ごとには行われず、2年に1回しかない。ぼくはこの春から小学5年生になった。小学1~2年と3~4年、5~6年の間は同じクラスなのだ。かのじょは運悪く、今年もバイオレットと同じクラスになってしまった。だから、学校に来ていない。
しかし、今年はその流れが変わりそうな気がする。転校生が何とかしてくれるだろう。ぼくは確信を持っていた。だって、ぼくにこんな任務を押し付けるくらいだから、そうでなければわりに合わない。
「転校生のかんしをしてくれ。そして転校生とクラスの様子をくわしく観察して、日記みたいにまとめてほしい。それをこの紙に書かれた場所に毎日置いてくれるかい。」
転校生が来た数日後、両親からそんなことを言われた。なぜだか、二人は青白い顔をして苦しそうな表情をしていたが、そんなことはどうでもいい。こんなことを両親から突然言われて何かを期待しない方がおかしい。さあ、今から何が起こるのだろう。今からとても楽しみだ。
ぼくの父親が、それをしなければ仕事をうばわれるというりふじんなめにあっていることをぼくは今回の事件が終わるまで気付くことはなかった。
季節外れの転校生がうちのクラスにやってきた。今日はGW明けの月曜日である。新学期が始まって一カ月もたったこんな変な時期に転校生が来るなんてめずらしい。さらにうちの学校はいなかで、転校生なんてめったに来ないのでクラスのテンションは高まっていた。
転校生はとてもきれいな女子だった。そして、とても大人びて見えた。まるでぼくたちよりも多くの年を重ねて、多くのことを経験してそれが今のかのじょを作っているようだった。そんなことは現実にはあり得ない。そんなことを思ったのは、かのじょがあいさつをした後に笑った顔が笑っているのに無表情だったからだ。確かに顔は笑顔なのに目がまったく笑っていなかった。
どう見たって身長や体つきは小学生高学年の平均くらいだ。ただし、かのじょはとても細かった。ふれれば折れてしまいそうだった。
休み時間になると、転校生の周りにはクラスメイトが集まる。転校生がめずらしく、それぞれが思い思いの質問をし始める。それに対して、真面目にていねいに答えていく転校生。
「どこから来たの。」
「どうしてうちの学校に来たの。」
「水無月さんの前いた学校はどんな様子だった。」
「前いた学校で好きな人はいたの。」
「すきな食べ物は。」
「嫌いな食べ物は。」
「趣味は。」
「特技は。」
いろいろな質問があった。それらの質問に答えていたのだが、クラス中が最も興味を持っている転校前の学校についての質問には口を閉ざしてしまった。どうやらあまり良い思い出がないようだ。
「前いた学校のことはあんまり話したくないわ。ごめんなさい、前の学校で私は仲間外れにされてしまっていて、良い思い出がないの。」
あまりにも悲しそうに言うので、クラスメイトはあわてて話題を変えようとしたり、私たちがきっと今度の学校生活は楽しいものにして見せるからとはげましたりしていた。
しかし、ぼくは気づいてしまった。転校生は悲しそうなふりをしているだけで、本当はただ話したくないだけなのだとことに。そのしょうこに下を向いて悲しそうな声を出してはいたが、その顔には悲しみとはちがう、いらだちやあきれの表情がうかんでいたのをぼくはみのがさなかった。
ぼくのクラスにはクラスをしきる一人の女子がいた。かのじょにさからえるものはいなかった。もちろん、ぼくもその一人である。かのじょの名前は紫苑すみれ。むらさき色の名前なので、クラスの人はぼうりょく的なこととかけて、かげでは「バイオレット」と呼んでいる。ぼくも今後、かのじょをそのように呼ぶことにしよう。
ようち園のころからの付き合いで、バイオレットの地位は安定していた。いわゆるスクールカースト頂点にいた。バイオレットはリーダーシップにあふれて、頼りがいのあるクラスの人気者だったらよかったのだが、そうはいかなかった。
バイオレットの父親はぼくたちが住んでいる地域ではちょっとしたえらい人のようだった。そして、バイオレットはこどもどうしのささいなけんかでも父親に相談するので、ただのこどものけんかなのに大げさになる。父親はむすめにあまいらしく、どんなにバイオレットに非があってもそれを認めようとはせず、相手を責める。父親はとてもこわい人でぼくたちはおこられるのをおそれた。そうしているうちにバイオレットにさからえるものはいなくなったというわけだ。
バイオレットはそのことをきっかけにいじめを始めた。だれもさからうものはいないので本当に好き放題にクラスをひっかきまわしていた。バイオレットに目をつけられていじめられて不登校になってしまったクラスメイトは何人かいる。
ぼくのとなりの席に座る女子もその一人だ。だいぶねばっていたようだが、とうとうこの春には学校に来なくなってしまった。
うちの学校は人数が少なく、クラスは2クラスしかない。さらにはクラスがえが一年ごとには行われず、2年に1回しかない。ぼくはこの春から小学5年生になった。小学1~2年と3~4年、5~6年の間は同じクラスなのだ。かのじょは運悪く、今年もバイオレットと同じクラスになってしまった。だから、学校に来ていない。
しかし、今年はその流れが変わりそうな気がする。転校生が何とかしてくれるだろう。ぼくは確信を持っていた。だって、ぼくにこんな任務を押し付けるくらいだから、そうでなければわりに合わない。
「転校生のかんしをしてくれ。そして転校生とクラスの様子をくわしく観察して、日記みたいにまとめてほしい。それをこの紙に書かれた場所に毎日置いてくれるかい。」
転校生が来た数日後、両親からそんなことを言われた。なぜだか、二人は青白い顔をして苦しそうな表情をしていたが、そんなことはどうでもいい。こんなことを両親から突然言われて何かを期待しない方がおかしい。さあ、今から何が起こるのだろう。今からとても楽しみだ。
ぼくの父親が、それをしなければ仕事をうばわれるというりふじんなめにあっていることをぼくは今回の事件が終わるまで気付くことはなかった。
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