年を取らない子供たち~EC(エターナルチルドレン)~

折原さゆみ

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第1章 いじめの代償~季節外れの転校生~

3(22)転校生①

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 私はただの小学生ではない。見た目こそ普通の小学5年生くらいだが、実際にはもうかれこれ10年以上は小学生のまねごとをしている。それが私の今の仕事なのだから仕方ない。

「鈴木水無月です。よろしくお願いします。」

 転校することにももう慣れた。転校しなければ、自分の身体がこれ以上成長しないことがばれてしまう。そもそも、私が小学生のままでいることに意味があるそうだ。もともと私は普通に年齢を重ねて成長をしていた。小学5年生までは。

 あの日、施設長が私を呼びだし、ECの薬を私の身体に投与しなければ人生はもっと楽に生きられただろう。そうは言っても、もう後戻りはできない。私はこの身体のまま、一生を終えることになる。それだけは確定していることだ。


 今回の仕事内容は、不登校になった娘の両親から依頼されたものだ。どうやら娘が通っている学校のクラスで娘はいじめられて、学校に行けなくなってしまったようだ。よくある話であり、特筆すべきことはない。依頼内容は、娘を学校に行けなくさせた張本人とそれを容認していたクラスメイトを罰して欲しいということだった。さらには担任やいじめを黙秘していた校長なども対象に入れて欲しいようだ。

「殺すのはさすがに寝ざめが悪いのでそれはやめてください。それ以外なら何をしてもらっても結構です。娘をこんな目に合わせた連中を一人残らず、死より恐ろしい目にあわせていただきたい。そして、二度といじめをしなくなるように矯正して欲しいのです。」

 両親は必死に私の上司である奴に頼み込んだらしい。そして、その依頼を奴が引き受けたので私はこの学校に転校することになった。

 両親もまさか、自分の娘と同い年の子供が依頼を遂行するとは思わなかったのだろう。まあ、見た目は同じでも同い年ではないのだが。


 クラスの第一印象は、一人の生徒に支配されているということだった。クラスメイトは彼女の動向を常に気にしていた。彼女を怒らせないように気を配っていた。クラスには不登校が依頼者の娘も含めて3人いた。おそらく、3人とも彼女の餌食になったのだろうことは容易に想像がつく。
さて、今回私はどのように行動すればよいか。見た目は小学生だが、年だけは重ねている。その経験を生かして依頼を進めていこう。

 まずはクラスの状況をしっかり確認しようと思う。そのためにまず、おとなしい児童を演じることにした。
 転校生が珍しいのか、休み時間になると、私の周りにはクラスメイトが集まる。皆、転校生が珍しくてそれぞれが思い思いの質問を私にしてきた。それに対して、私は真面目に丁寧に答えていく。

「どこから来たの。」
「どうしてうちの学校に来たの。」

「水無月さんの前いた学校はどんな様子だった。」
「前いた学校で好きな人はいたの。」

「すきな食べ物は。」
「嫌いな食べ物は。」

「趣味は。」
「特技は。」

 いろいろな質問があった。くだらない質問にも仕方なく答えていたのだが、皆が最も興味を持っている転校前の学校についての質問には口を閉ざすことにした。あまり良い思い出がないように装うことにした。本当のことを言えるわけがない。私はあなたたちより生きている年数が多いのですよ。だから私を敬いなさい。と言いたいところだが、そんなことをしたら一気に計画が台無しである。

「前いた学校のことはあんまり話したくないわ。ごめんなさい、前の学校で私は仲間外れにされてしまっていて、良い思い出がないの。」

 悲しそうに言う私にクラスメイトはあわてて話題を変えようとしたり、私たちがきっと今度の学校生活は楽しいものにして見せるからと励ましたりしてきた。つかみは上々である。同情でも哀れみでもクラスメイトを私に引き付けることが重要である。

 私は悲しむふりをして、素直な小学生ほどだましやすいものもないなと内心あざ笑っていた。
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