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第2章 いじめの代償~日直~
4(0-1)クラス担任②
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転校生が日直でもないのに学級日誌をとりに職員室にやってきた。今日の日直当番は確かクラスの問題児であり、特別扱いを課せられている彼女のはずだった。しかし、彼女が来ておらず、代わりに転校生が来ているということは、日直を変わってもらったか何かだろう。
「学級日誌だったよな。これだ。もらったらさっさと教室に戻れ。」
もし、自分が日直ではない、と転校生が言い始めたら面倒なので、さっさと教室に戻れと手を振って職員室から出ていくように促す。
しかし、転校生は俺の行動の意味を正しく理解してくれなかったようだ。
「先生は今日、私が日直であることに疑問はありませんか。」
面倒くさいと思っていた疑問を投げられてしまった。
「別にないけど、ああ、日直がやりたくないからそう言っているのか。ダメだぞ。日直はクラスの大事な仕事の一つだ。嫌でもしっかりと責任を持ってやることだ。」
軽くあしらうことにした。確かに俺は昨日彼女の名前を黒板に書いた。だから転校生が今日、日直であるはずがない。それを承知で、俺は転校生にあたかも日直であるかのように日誌を手渡した。
いじめとは、被害者がいじめられたと思った時点で成り立つものだ。加害者がたとえそれがいじめではないと思っていても、訴えられたらそれはもういじめとなる。彼女が、自分は日直ではない、彼女に言われて仕方なくやっています。これはいじめではないのですか、と言われたら、教師としてその事実を確認し、彼女たち双方の意見を聞いて、対処するという面倒くさい作業が待っているのだ。
もちろん、そんな事態になれば、勝つのは当然彼女の方だ。彼女の背中には常に父親の権力が見え隠れしている。どう考えても勝つ見込みはない。ましてや転校生である彼女の家庭事情を詳しく見ると、なかなか複雑な家庭のようだった。俺は基本的に児童に対しては平等に接したいと思っている。
だからこそ、この学校に赴任してきて俺はストレスを抱えてしまっている。それもそうだろう。何せ、俺の理念とは真逆のことをしろと言っているようなものだ。一人の児童だけに特別扱いなどしてはならない。
それはそうとして、転校生はどうやら日直に関してはあきらめているのか、それともただ単に優しいのか。俺の発言を聞いて、素直に職員室を出ていった。
たかが日直を押し付けたというだけのことだが、俺はこれがそれだけのことだとは思えなかった。去年一年彼女がいるクラスを見ているのでわかってしまう。
彼女のやり口だった。それは突然起こるものではなく、じわじわと被害者の周りを覆っていく。今年も始まったのだろう。今年初めの被害者は転校生というわけである。おそらく俺は今年も彼女の言いなりに徹するだろう。
いくら俺の理想に反するからといって、それを守るためだけに先生という職を失うのはごめんである。人間、理想を持ってはいても、自分の保身のためならそんな理想をすぐに切り捨てて現実を生き残る道を選ぶ。
ただ俺は人間の本能に従っているだけだ。俺からは何もできないが、本当のところは誰かがこのクラスの状況を何とかしてほしいと思っている。いわゆる他人任せである。それでも願わずにはいられない。
職員室を出る際に転校生と目があった。彼女からは何の表情も読み取ることはできなかった。
「学級日誌だったよな。これだ。もらったらさっさと教室に戻れ。」
もし、自分が日直ではない、と転校生が言い始めたら面倒なので、さっさと教室に戻れと手を振って職員室から出ていくように促す。
しかし、転校生は俺の行動の意味を正しく理解してくれなかったようだ。
「先生は今日、私が日直であることに疑問はありませんか。」
面倒くさいと思っていた疑問を投げられてしまった。
「別にないけど、ああ、日直がやりたくないからそう言っているのか。ダメだぞ。日直はクラスの大事な仕事の一つだ。嫌でもしっかりと責任を持ってやることだ。」
軽くあしらうことにした。確かに俺は昨日彼女の名前を黒板に書いた。だから転校生が今日、日直であるはずがない。それを承知で、俺は転校生にあたかも日直であるかのように日誌を手渡した。
いじめとは、被害者がいじめられたと思った時点で成り立つものだ。加害者がたとえそれがいじめではないと思っていても、訴えられたらそれはもういじめとなる。彼女が、自分は日直ではない、彼女に言われて仕方なくやっています。これはいじめではないのですか、と言われたら、教師としてその事実を確認し、彼女たち双方の意見を聞いて、対処するという面倒くさい作業が待っているのだ。
もちろん、そんな事態になれば、勝つのは当然彼女の方だ。彼女の背中には常に父親の権力が見え隠れしている。どう考えても勝つ見込みはない。ましてや転校生である彼女の家庭事情を詳しく見ると、なかなか複雑な家庭のようだった。俺は基本的に児童に対しては平等に接したいと思っている。
だからこそ、この学校に赴任してきて俺はストレスを抱えてしまっている。それもそうだろう。何せ、俺の理念とは真逆のことをしろと言っているようなものだ。一人の児童だけに特別扱いなどしてはならない。
それはそうとして、転校生はどうやら日直に関してはあきらめているのか、それともただ単に優しいのか。俺の発言を聞いて、素直に職員室を出ていった。
たかが日直を押し付けたというだけのことだが、俺はこれがそれだけのことだとは思えなかった。去年一年彼女がいるクラスを見ているのでわかってしまう。
彼女のやり口だった。それは突然起こるものではなく、じわじわと被害者の周りを覆っていく。今年も始まったのだろう。今年初めの被害者は転校生というわけである。おそらく俺は今年も彼女の言いなりに徹するだろう。
いくら俺の理想に反するからといって、それを守るためだけに先生という職を失うのはごめんである。人間、理想を持ってはいても、自分の保身のためならそんな理想をすぐに切り捨てて現実を生き残る道を選ぶ。
ただ俺は人間の本能に従っているだけだ。俺からは何もできないが、本当のところは誰かがこのクラスの状況を何とかしてほしいと思っている。いわゆる他人任せである。それでも願わずにはいられない。
職員室を出る際に転校生と目があった。彼女からは何の表情も読み取ることはできなかった。
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