年を取らない子供たち~EC(エターナルチルドレン)~

折原さゆみ

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第4章 いじめの代償~物理的いじめ~

1(4)あるクラスメイト(監視者②)

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 転校生がいじめられていると感じ始めたのは、転校生が来て1か月ぐらいたったころからだ。きっかけは覚えていないが、それくらいからクラスメイトが転校生を無視しだした。バイオレットが転校生を無視するようにクラスメイトに指示を与えた。

 クラスメイトは素直に指示に従った。自分の学校生活と天秤にかけたらどう考えても突然現れた転校生に軍配は上がらない。ちなみにぼくも無視を決め込んだ。

 とはいえ、ぼくにはクラス内での転校生の様子、クラスの様子を報告する義務がある。誰が読むのかも、ぼくにクラスの観察日記を指示したのが誰なのかもわからないままだが、この仕事がぼくには案外向いているようだった。



 毎日放課後に一日の転校生の様子とクラス全体の様子を書いた日記を学校の裏庭にある百葉箱の中においておく。初めに両親に百葉箱の中に入れておくようにと言われた時は何のことかわからなかった。詳しく聞くと、裏庭にある白い箱のようなものだ。

 そこに置いて、次の日の朝にまた百葉箱の中をのぞくと、そこにはそのまま日記が置かれている。ただし、日記の中身は破られている。授業で使っているB5の罫線ノートなのだが、今まで書かれた部分はなくなっている。つまり、ノートは日に日に薄くなっているのだ。誰かに読まれないためなのかもしれないが、自分が書いた日記を後で読み返すことができないのは少し寂しい。




 ということで、今日もぼくは転校生の様子を観察している。

 クラスメイトからの無視が始まって、一週間くらいが過ぎた今日、転校生のいじめに変化があった。転校生の上靴がなくなっていたのだ。そして、なくなったものは上靴だけではなかった。仕方なく、転校生は職員室によってスリッパをかりて教室に向かうと、転校生の机がなくなっていた。机が一つ廊下に置いてあることには気づいたが、まさかそれが転校生の机だとは思わなかった。

 机とイスは自分の背丈に合わせて高さを調節できるもので、小学校1年生から自分の机とイスをずっと使い続ける。クラス替えの際にはわざわざ机を教室まで移動させている。しかし、転校生の机は違った。突然来たので机に予備がなかったのか、それともわざとなのかはわからないが、転校生の机は既存のものであり、高さ調節ができないタイプのものだ。だからこそ、廊下に置かれた机が転校生のものだと判明するのに時間はかからなかった。

 転校生は上靴を隠され、さらには机を廊下に出されたというのに文句ひとつ言うわけでもなく、黙って机を教室に運び入れていた。

 転校生の様子を観察していたのはぼくだけではないようだ。バイオレットもまた転校生の様子をうかがっていた。転校生のあまりの反応のなさにバイオレットはかすかに目を瞬かせていた。どうやら、少なからず驚いているようだ。

 この事件の主犯は間違いなくバイオレットだ。バイオレットが指示して上靴を隠したり、机とイスを廊下に運んだりしたのだろう。とはいえ、いじめはバイオレットがいるクラスでは日常でもはや驚くに値しないし、犯人探しもしないことだろう。先生も児童も何もしない。

 そしてこれからがいじめの本番。どんどんいじめはエスカレートして5年生が終わるその時まで果たして転校生は学校に登校できるのか。

 ぼくは今回はただの監視者だ。いじめに加担するわけでもなく、転校生を助けるわけでもない、いわゆる中立の立場をとっていこうと思う。バイオレットの指示に従わないのは少し後が怖いけれど、それでも転校生とクラスの行く末を見守ることも一つの選択肢になっても悪くはないだろう。
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