朔夜蒼紗の大学生活~幽霊だって勉強したい~

折原さゆみ

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衝撃的な出会い①

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  私は、この春大学生となった。長かった受験勉強を終え、待ちに待った大学生活が始まる。新しい出会い、新しい環境。胸踊る出来事があるはずだ。友達と授業後にカラオケに行ったり、人気の映画を見に行ったり、はたまたサークルに入って、飲み会に参加したり、合コンに出て、運命の出会いが待ち受けていたり……。そんな普通の大学生活が送れることをとても楽しみにしていた。
 

 まさか、こんな大学生活になるとは予想もしていなかった。大学もバイト先もことごとく私の期待を裏切った。そして平穏な大学生活は奪われたのだった。

 
 


 待ちに待った入学式がようやくやってきた。私の家から大学までは電車で一駅。その後、歩いて15分ほどの場所に大学はある。
 
 私が大学に到着するころにはすでにたくさんの新入生で大学内は埋め尽くされていた。入学式は大学の講堂で行われることになっていた。
 

 講堂の前で入学式の案内が書かれたパンフレットをもらい、講堂内の自分の席に座る。隣の席は空いていた。入学式が始まっても隣の席は空いたままだった。席に着いた後に後ろの席が急に騒がしくなった。何事かとも思ったが、特に興味もわかなかったので気にしないことにした。



「皆さん、入学おめでとうございます。これから4年間、勉強にしっかりと励み、よき友と共に学び、成長してください。」
 
 学長の挨拶が終わり、次は新入生代表の挨拶である。

「新入生代表、西園寺桜華。」

 名前を呼ばれ、席から立ちあがったその学生を見て、場内にざわめきが起こる。それもそのはず。入学式といえば、大抵の学生は黒や紺色のスーツに身を包んでいる。私も例外ではない。それなのに新入生代表挨拶で壇上に立った学生は、なんと真っ赤なチャイナ服を着ていた。

 明らかに目立っている。さらに、その学生は背が高く、スタイルが抜群に良い。髪色もまばゆいばかりの金髪でお団子を作っている。長い足がチャイナ服のスリットから覗いていて、艶めかしい限りだ。彼女は私の席の後ろに座っていた学生だった。



「私はこの大学に入学できたことを心から感謝しています。4年間、大学の名に恥じぬよう、精進していきたいと思います。」

 壇上でも臆することなく、堂々とした態度で新入生代表挨拶を始めた。容姿もさることながら、声もまた美しい。少し低めのハイトーンな声が耳に心地よく入ってくる。容姿も声も最高、さらに新入生代表挨拶をするということは、頭もよいということで、「天は二物を与えず」ではなく、「二物以上与える」だ。世の中不公平である。

 しかし、こういう才色兼備な人ほど性格が悪いかもしれない。一般人代表と自覚している私はお近づきになる機会はそうないだろう。





 新入生代表挨拶終了後、何人かの偉い人の話が続き、話が退屈で眠気に負けて夢の中に旅立ちそうになった頃、ようやく入学式が終わりを告げた。

「これで入学式を終わります。学生の方は次の指示があるまでその場で待機してください。」

 その後の指示で、学生はガイダンスが行われる教室へと移動となった。ぞろぞろと学生たちは講堂を出ていく。私もその流れに沿って講堂を出ようとしていたのだが、残念ながら私はその流れに沿って移動することはなかった。




 
 ここで、私の大学生活を大きく変えることになった出会いが、私の行く手を阻んでいたのだった。いや、待ち受けていたのだった。





「朔夜さんだったわよね。私は、西園寺桜華。これから4年間一緒の学科同士よろしくね。」

 私の行く手を阻み、突然話しかけてきたのは、モデルみたいにきれいな学生だった。どこかで見たような気がしたのだがそれもそのはず。先ほど新入生代表挨拶をしていた学生だ。日本の大学の入学式に不釣り合いなチャイナ服、西園寺桜華という名前を名乗ったので間違いない。
 
 しかし、私に何の用だろうか。彼女と私は初対面のはずである。私の知り合いにこのような美少女はいないはずだ。不意に話しかけられたため、困惑して返事も返せずにいると、それを相手は誤解したようだ。



「私が美しすぎて言葉も出ないという感じね。それも仕方ないわ。美しすぎるのも罪よね。あなたは何も悪くない……。」
 
 自分が美しいのが罪だなどと言い出す始末だ。大変ナルシストな性格である。新入生代表挨拶の時も思っていたが、やはり性格に難ありらしい。容姿も頭も良いのだろうが、性格が残念である。確かに美人であるが、美しすぎて言葉も出ないなんてことはない。
 
 なぜチャイナ服を着ているのか、なぜ私に話しかけてきたのか、さらに最大の疑問はなぜ私の名前を知っているのか。これが世にいう超能力というものか。それとも魔法でも使えるのか。私に話しかけてきたのが衝撃過ぎて、時間にして3秒ぐらい、様々な疑問が頭をよぎった。その3秒がこの美少女には長く感じたようだ。私が何も言えずにいると、さらに続けて話し出した。

「『同じ学部同士、仲良くしましょうね。』とか『朔夜と西園寺で名簿近いね、これは運命って感じするよね。』とかいろいろ言うことあるでしょう……。さらにこれは外しちゃダメね。『入学式の新入生代表に選ばれるなんてすごい。美人で頭もいいなんて西園寺さん、素晴らしいね、尊敬しちゃう。』ハートみたいな。」
 
 私が思った通りの残念な性格であった。たいそうな自信家である。これは今までさぞやモテモテだったのだろう。自分が他人より上であるということを隠しもしない。ある意味、うらやましい限りである。
 
 それにしても、話の後半は自意識過剰がなせる言葉と解釈できるが、前半の言葉はどう意味だろうか。



「こちらこそよろしくお願いします。」
 
 とりあえず言葉を返したが、その後に続く言葉が見つからない。何度も繰り返すが、この美少女とは初対面のはずだ。相手は私の様子がおかしいのにやっと気づいたようだ。

「もしかして、あなたと私って会ったことなかったのかしら。」

 いまさら何を言っているのだろう。会ったことないに決まっている。これに対しては沈黙を貫くことにした。

「ちょっとなんか言いなさいよ。私の独り言みたいになっているじゃない。」
 
 独り言にしてください。美人で頭もいいようだがこんな残念な性格の変な人とはかかわりたくない。周囲の人間もそう思ったのか。私と西園寺という学生の周りには誰もいない。皆、すでに講堂を出て、ガイダンスが行われる教室に向かったようだ。



 そういえば、これからガイダンスがあるのをすっかり忘れていた。もうじき始まってしまう。急がなくては。ガイダンスに遅れてしまってはいけない。

 仕方ないので、この残念な美人さんは放っておいてガイダンスのある教室に向かうことにした。思ったら即行動せねばと思い、足を一歩踏み出そうとした途端、それはまたもや邪魔された。相手もガイダンスがあることに気付いたようだ。




「そろそろガイダンスの時間ね。一緒に行きましょう。朔夜さん。」

 なんということか。最初に話しかけてきたときに話していたではないか。一緒の学科だと。それに入学式の時、私の後ろの席に座っていたではないか。嫌な予感がする。私は大学4年間を平穏に過ごせるのだろうか。


「はい。」

 こうして私たちは仲良くガイダンスが行われる教室に向かうのだった。
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