朔夜蒼紗の大学生活~幽霊だって勉強したい~

折原さゆみ

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衝撃的な出会い②

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 ガイダンスが行われる教室が講堂から割と遠い場所にあったため、開始時刻には間に合わなかったが、教授たちはまだ集まっていなかった。



「先生方がまだいらっしゃらなくてよかったわ。ねえ、朔夜さん。」
 
 教室ではほかの学生に話しかけるだろう。これで私のことを放っておいてくれると思い、席を西園寺さんから離して座ろうとしたのだが、相手はまだ私に用があるらしい。いい加減、面倒くさくなったので無視することにした。そして、教室をぐるりと見まわし、これから4年間を共にする仲間を観察する。

 同じ学科とはいえ、すでにグループがいくつかに分かれていた。茶色などの明るい髪の色に染めた化粧の派手なグループ。黒髪で地味目な服装の真面目でおとなしそうなグループ。その中間のグループ。私は中間のグループに入りたいなあ。可もなく不可もなく、平穏に過ごしたい。



「遅いぞ、桜華。何やってたんだ。」
 
 突然、男子学生が目の前に現れた。これまたイケメンだ。身長が高く、こちらは真っ黒の髪に真っ黒の瞳。瞳は切れ長で鼻筋はすっと通っている。服装は大学の入学式にふさわしい黒のスーツをピッタリと着こなしている。この男性もスタイルがいい。足が長いし、スーツの上から見ても筋肉が程よくついていそうなことがわかる。西園寺さんと知り合いなのだろう。美男美女が並ぶとやはり絵になる。

 彼女たちの容姿に見惚れて、逃げるのが遅れてしまった。




「ああ、ごめんごめん。この子のことが気に入っちゃってね、いろいろ話していたから遅れてしまったの。静流も朔夜のこと気に入ると思うよ。」
 
 なんてことを言うのだろう。まるで私と話していて遅れてしまったと言っているようなものだ。話しかけてきたのはそっちで、しかも一方的に話していただけで、私は一言しか話していない。



「……。」
 
 静流と呼ばれたイケメン学生が、私をじっと見つめてくる。ただでさえ、美男美女に囲まれて居心地が悪いのに、こうもじっと見つめられるとさらに悪い。加えて周囲の視線も針のように刺さっている。とりあえず何か話してみなくては。


「ええと。これから4年間同じ学科同士よろしくお願いします。それにしても西園寺さんもあなたも美男美女で何ともうらやましい……。性格は別として。」

 思ったことを口に出してしまった。だがしかし、仕方のないことだ。人間、とっさに口から出る言葉は大抵の場合、心の声だと思う。おそらく今回もそういうことだろう。



「ふうん。確かになかなか面白そうな子ではあるが、そこまで気に入るほどか。」
 
 イケメンにおもしろそうな子と言われてしまった。そして、私のことを値踏みするようにさらに見つめてくる。居心地悪くて仕方ない。だが、イケメンのいうことは間違っている。これでも私は周囲からおもしろみのない子として通っているのだ。それはそれでよいことではないが、おもしろい子認定されるのも嫌だ。



「おもしろくはありません。だいたい、あなたと西園寺さんの関係はなんですか。私はあなたたちと初対面のはずですが。」
 
 大事なことを言ってやった。そもそも、初対面の相手に気に入る、おもしろいという発言はいささかおかしいと思う。すると突然、西園寺さんが私の発言を無視してまたもとんでも発言をかましだした。






「よく見るとあなた、可愛い顔よね。決めた、これは運命の出会い。今日から私と一緒に行動しなさい。」

「はあ……。」

 意味不明だ。私が返事をする間も無く、勝手に彼女の中で話は自己完結してしまったらしい。うんうんと満足げに頷き、隣のイケメンに同意を促している。再度言おう。全くもって意味不明だ。何か言わなくてはと思い、口を開けかけたのだが。




「桜華、お前いい加減にしろよ。可愛い女見つけてはおもちゃにしやがって、これで何人目だよ。全くこりないな、バカだろ。」

 私のほかにも同じような目にあった少女がいるのか。この残念系美人の餌食になった少女が何人も存在するとは。いままでの行動から鑑みれば、イケメンが言っていることはあながち嘘ではないのかもしれない。想像が容易にできてしまうところが恐ろしい。



「おもちゃとは失礼な。おもちゃよりよっぽど楽しいわよ。可愛い声で泣くし、言うこと聞いてくれるし、イヌネコのペットの類より役に立つし。」
 
 なんとまあ、人間がおもちゃやペットと同類とは恐れ入った。イケメンの言うとおりだったとは。自分は神か何かと勘違いしているのか、それとも頭がいかれているのか。どちらにしろ、やはり関わるとろくなことがなさそうだ。



「そのようなことはほかの誰かにしてください。私は平穏な大学生活を送りたいのです。では、これ以上は話しかけないでもらいたい。そして私に関わらないで頂きたい。」
 
 訣別の言葉を述べ、颯爽と席を離れようと席を立ったちょうどその時、教授陣が教室に現れ、席を離れることは許されなかった。







「君、席を立ってどこに行くつもりかね。」
 
 入学式早々、教授に目をつけられてしまった。平穏な大学生活はどこに行った。もう少しで逃げることができたのに。しぶしぶ席に座りなおした。



「せっかく私が話しかけているのに無視して逃げようとした挙句に、関わりたくないとは最低ね。今まで私が話しかけてきた女の子は一人としてそんな風に私から逃げようなんて子いなかったのに。でも、そんなところもかわいくて私は好きよ。それにさっきから気になっていたけれど、その敬語での話し方も素敵だわ。」
 
 私に聞こえるぐらいの小声で西園寺さんは話しかけてきた。






「まだ大学は始まったばかりだし。気長にいきましょう。朔夜さん。」
 
 最後にぼそっとこうつぶやかれた。面倒くさい大学生活の幕開けであった。
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