朔夜蒼紗の大学生活~幽霊だって勉強したい~

折原さゆみ

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つかの間の平穏だと思ったが②

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 店の外に出ると、また雨が降り出してきた。最近、私が何か行動を起こすたびに雨が降っている気がする。私はいつから雨女になったのだろう。今まで遠足や旅行で雨が降ったことなんてほとんどなかったのに。大学に入ってから変なことが続いている。一度、お払いにでも行った方がいいのだろうか。
 
 それにしてもどこに行ってしまったのだろう。それとも、あれは私がみた幻覚だったのか。まるで、男の子を私から遠ざけるために雨が降っているかのようだった。雨はすぐにやみ、きれいな虹が見えている。一体全体私の周りで何が起こっているのだろう。

 

 瀧さんの塾で見た生徒は幽霊だったはずである。幽霊だったら、他人には見えていないことになる。だとしたら、彼はケーキをどうやって注文して食べていたのだろうか。それとも、彼は本当は幽霊ではなくて、普通の人間だったということか。どちらにしても次のバイトで瀧さんに聞いてみる必要がある。

 





 家に帰ると、どっと疲れが出てきてそのまま必要最低限、ご飯を食べたり、お風呂に入ったりした後、寝てしまった。どうしてこうも疲れるのか。それもこれもあの二人のせいだ。明日大学に来たら、どうして休んだのか問い詰めてやる。そう心に決めて、目をつむるとすぐに夢の中に旅立った。


 
 夢を見た。西園寺さんと雨水君が何か話している。その先にぐったりと倒れている人がいる。西園寺さんが日本刀のようなものをその倒れている人に向かって振りかざす。振りかざす寸前、私の視線に気が付いたのか、西園寺さんはこちらを見た。視線が交差する。彼女からは何の表情も読み取れなかった。ただ、私は一瞬のこと過ぎて、何も反応を返すことができなかった。

 

 そこで目が覚めた。衝撃的な夢のせいで汗をかいていて、身体がびっしょりと濡れていて気持ちが悪い。 変な夢だった。あの夢は何を表しているのだろう。夢とは記憶の整理とかいうけれど、あんな場面、記憶の中には存在しない。漫画やゲームでも私は殺人系などのジャンルは苦手で読んでいない。



 夢のせいでしっかり休めた気がしない。時計を見ると、まだ朝の4時過ぎだった。起きるには早すぎる。もうひと眠りしよう。今度はしっかり眠ることができた。

 


 今度は寝すぎたようで、次に目が覚めたのは10時過ぎだった。自分の部屋から1階に下りると、すでに両親は仕事や学校に出かけた後だった。今日は昼からの授業だったので、この時間に起きても問題ないが、もし午前の授業だったらやばかった。もし、私が寝ているようなら声を一言かけてくれてもよかったのに。まあ、起こされたら起こされたで、なんだか腹が立つので、どっちもどっちだが。

 






 遅い朝食を食べ、家でのんびりと過ごす。ふと、天気予報がみたくなってテレビをつける。たまたまニュース番組がやっていた。ニュースでは最近の傷害事件について取り上げられていた。その中で、見知った名前が出てきたので驚いた。うちの大学に入学して早々やめてしまった男子学生がテレビに映っていた。

 いったい何をやらかしたのだろう。「鈴木雷介」という名前で雷介なんて珍しい名前そうそうないのでたぶん彼だと思う。顔は見たことがないのでわからないが、大学を辞めた時期と事件が起こった日と近いのでそうだろう。同姓同名の別人なんてことはないだろう。年も19歳となっていたので間違いない。
 


 ニュースキャスターが彼について語る。彼はどうやら傷害事件を起こしたようだ。事件は深夜起こった。彼はその日、居酒屋でバイトをしていて、バイトが終わって帰宅しようとしていた。その日は、バイトで失敗して店長に怒られてむしゃくしゃしていた。彼はたいそう機嫌が悪かった。

 そこへ酔っ払いが絡んできたらしい。そして、それが彼の怒りを爆発させてしまった。怒りに任せてその酔っ払いの男を殴ってしまったようだ。男は頭の骨を折るほどの大怪我を負ったと報道されていた。頭や腹には殴られた跡があり、かなりひどく殴られたと男は供述している。殴られたという証言をした後、酔っ払いのみた幻覚だとしか思えないような供述が続いた。



「彼には頭に角のようなものが生えていた。あいつは鬼だ。私は鬼に殴られた。間違いない。私は鬼にやられた。」



 まさか鬼なんているはずない。警察は彼が酒を飲んで酔っぱらっていたので、この証言については酔った男の妄言として特に問題にすることなく事件の詳細を調べているとのことだった。

 

 私は警察とは違った。なんせ、つい先日、塾で一般人ではない能力者について説明を受けている。能力者には普通の人間とは異なる容姿をしていると瀧さんは言っていた。もしかしたら、被害者の男は本当に彼の頭に角があるのを見たのかもしれない。イライラしてつい我を忘れて能力を使って殴ってしまい、自分の本当の姿を他人に見せてしまった。
 
 
 鈴木君のコメントも発表されていた。本人ではなく、鈴木君の弁護士が代弁していた。



「自分はやっていません。その日は確かに店長に叱られて確かにイライラしていましたが、被害者の男とは会っていませんし、殴ってもいません。何かの間違いです。」



 何かがおかしい。被害者の着ていた服には確かに鈴木君の指紋が検出されていた。証拠もそろっているにもかかわらず、白を切るつもりか。それにしてもなんだか不自然だ。車で警察に向かう鈴木君の顔には生気がなく、目もうつろだった。そういえば、彼が大学を辞めたという話をしていた時に、西園寺さんが何かを言っていた。何を言っていたのだったか。よく覚えていない。まあ、私は彼を直接知らないし、関係ないか。

 


 ニュースも終わり、気象情報が始まる。またもや天気は晴れ。しかし、最近の天気予報はあてにならない。とりあえず折り畳み傘を鞄に入れておいた。これなら急な雨にも安心だ。
 

 昼ご飯を適当に食べ、大学に向かう準備をする。今日こそ普通で平穏な日が来ますように。
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