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17怪しさ満点の男
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「すいません。中道楓子さんと紅葉さんですか?」
二人がバスを待っていると、声を掛けられる。自分たちの名前が突然見知らぬ男性の口から発せられたので、二人は警戒して男から距離を取る。男性はスーツを身に着けていて、サラリーマンのように見えた。しかし、それが怪しさに拍車をかけていた。
「美耶様がお待ちです。こちらの車にお乗り下さい。美耶様のもとにご案内致します」
(どうする。明らかに怪しいよね)
(でも、俺たちの名前を知っているし、美耶先輩の名前が出て来たし、怪しくても行くしかないと思うけど)
楓子と紅葉は小声で男の言葉を信用するか相談する。楓子はどう考えても怪しさ満点の男についていくのは危険な気がした。しかし、弟の言うことも一理あると考え悩んでいた。紅葉は既に男についていく気満々で男の方をじっと見つめている。
(ここまで来たし、今更か)
もし、楓子一人で結婚式に参加しようとしていたら、一人で見知らぬ男に声を掛けられたら、断っていたかもしれない。しかし、今は隣に弟の紅葉がいた。二人一緒なら、何か起こっても対処できる気がした。
「紅葉がそこまで言うのならついていくよ」
「俺のせいにするなよ。自分だって美耶先輩のこと、気になってくるくせに」
「うるさい。さっさと行くよ」
「決まりましたか。では、こちらの車にお乗りください」
男は美耶たちの会話が終わるまでじっとその場で待っていた。二人が男の指示通りに近くに停めてあった黒のワンボックスに乗り込むと、運転席に座ってすぐにエンジンをかけてその場から動き出す。車内はラジオなどが流れておらず、静かだった。男は美耶がどこにいるかも告げず、ただ車を走らせた。
「いつになったら先輩の元に着くのかな」
「さあ、もしかしたら、この人が美耶とまったく関係のない人で、私たちが誘拐されている可能性もあるかもね」
「それはあり得るけど、考えたくないなあ」
「確かに」
静かな車内が気まずくて、楓子たち姉弟は小声で会話をしていたが、男は運転中ずっと無言を貫いていた。
車が目的地に向かう中、楓子は窓の外を眺めていたが、どうやら自分たちが知らない地域に美耶はいるようだ。見たことのない景色が楓子の視界を流れていく。
朝は晴れていた天気が急に悪くなってきた。車の窓には雨がたたきつけている。天気が悪いと考えも悪い方向に傾いていく。自分たちが誘拐されているのではないかと本気で考えてしまう。
しかし、いまさら引き返すこともできない。いざとなったらスマホで助けを呼ぼう。楓子たち姉弟は、それぞれ自分のスマホを膝にのせ、早く目的地に着かないかと祈っていた。
「到着しました」
車は一時間ほど走り、どこかのホテルの地下の駐車場に入っていった。ホテルが目的地なのだろう。男は駐車場に車を停めるとエンジンを切る。楓子たちに外に出るよう伝えて、男自身も車から降りる。
「では、まいりましょう」
楓子と紅葉は互いに顔を身わせて息をのむ。スマホで自分たちの位置を確認したが、この場所は初めて訪れる場所だった。美耶はこの近くにいるらしい。結婚式の件も含めていろいろ問いただすことがたくさんある。男は地下から入れるホテルの入り口に向かって歩きだす。二人も覚悟を決めて男の後を追って歩きだした。
男はホテルの受付でチェックインを済ませている。楓子たち姉弟はそれを受付近くのソファに座って眺めていた。ホテルに入る前に外観を見たが、結構立派なホテルで、ここに泊まるためにはかなりの費用がかかるだろうと予想できた。男が手続きを終えるまでの間に値段を調べてみると、予想よりはるかに高い宿泊代がかかることがわかった。
「こんな高いホテル、泊まったことないし入ったこともないんだけど」
「私も。いったい美耶はどこからそんなお金を」
「久しぶりー」
二人の会話が急に途切れた。二人にとってなじみのある声だったので、驚いて声のする方向に眼を向ける。そこには、結婚式場で会う予定だった楓子の親友の姿があった。
二人がバスを待っていると、声を掛けられる。自分たちの名前が突然見知らぬ男性の口から発せられたので、二人は警戒して男から距離を取る。男性はスーツを身に着けていて、サラリーマンのように見えた。しかし、それが怪しさに拍車をかけていた。
「美耶様がお待ちです。こちらの車にお乗り下さい。美耶様のもとにご案内致します」
(どうする。明らかに怪しいよね)
(でも、俺たちの名前を知っているし、美耶先輩の名前が出て来たし、怪しくても行くしかないと思うけど)
楓子と紅葉は小声で男の言葉を信用するか相談する。楓子はどう考えても怪しさ満点の男についていくのは危険な気がした。しかし、弟の言うことも一理あると考え悩んでいた。紅葉は既に男についていく気満々で男の方をじっと見つめている。
(ここまで来たし、今更か)
もし、楓子一人で結婚式に参加しようとしていたら、一人で見知らぬ男に声を掛けられたら、断っていたかもしれない。しかし、今は隣に弟の紅葉がいた。二人一緒なら、何か起こっても対処できる気がした。
「紅葉がそこまで言うのならついていくよ」
「俺のせいにするなよ。自分だって美耶先輩のこと、気になってくるくせに」
「うるさい。さっさと行くよ」
「決まりましたか。では、こちらの車にお乗りください」
男は美耶たちの会話が終わるまでじっとその場で待っていた。二人が男の指示通りに近くに停めてあった黒のワンボックスに乗り込むと、運転席に座ってすぐにエンジンをかけてその場から動き出す。車内はラジオなどが流れておらず、静かだった。男は美耶がどこにいるかも告げず、ただ車を走らせた。
「いつになったら先輩の元に着くのかな」
「さあ、もしかしたら、この人が美耶とまったく関係のない人で、私たちが誘拐されている可能性もあるかもね」
「それはあり得るけど、考えたくないなあ」
「確かに」
静かな車内が気まずくて、楓子たち姉弟は小声で会話をしていたが、男は運転中ずっと無言を貫いていた。
車が目的地に向かう中、楓子は窓の外を眺めていたが、どうやら自分たちが知らない地域に美耶はいるようだ。見たことのない景色が楓子の視界を流れていく。
朝は晴れていた天気が急に悪くなってきた。車の窓には雨がたたきつけている。天気が悪いと考えも悪い方向に傾いていく。自分たちが誘拐されているのではないかと本気で考えてしまう。
しかし、いまさら引き返すこともできない。いざとなったらスマホで助けを呼ぼう。楓子たち姉弟は、それぞれ自分のスマホを膝にのせ、早く目的地に着かないかと祈っていた。
「到着しました」
車は一時間ほど走り、どこかのホテルの地下の駐車場に入っていった。ホテルが目的地なのだろう。男は駐車場に車を停めるとエンジンを切る。楓子たちに外に出るよう伝えて、男自身も車から降りる。
「では、まいりましょう」
楓子と紅葉は互いに顔を身わせて息をのむ。スマホで自分たちの位置を確認したが、この場所は初めて訪れる場所だった。美耶はこの近くにいるらしい。結婚式の件も含めていろいろ問いただすことがたくさんある。男は地下から入れるホテルの入り口に向かって歩きだす。二人も覚悟を決めて男の後を追って歩きだした。
男はホテルの受付でチェックインを済ませている。楓子たち姉弟はそれを受付近くのソファに座って眺めていた。ホテルに入る前に外観を見たが、結構立派なホテルで、ここに泊まるためにはかなりの費用がかかるだろうと予想できた。男が手続きを終えるまでの間に値段を調べてみると、予想よりはるかに高い宿泊代がかかることがわかった。
「こんな高いホテル、泊まったことないし入ったこともないんだけど」
「私も。いったい美耶はどこからそんなお金を」
「久しぶりー」
二人の会話が急に途切れた。二人にとってなじみのある声だったので、驚いて声のする方向に眼を向ける。そこには、結婚式場で会う予定だった楓子の親友の姿があった。
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