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義弟とのキス
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わたしが義弟と出会ったのは、小学5年生の時。
義弟は2つ年下で、小学3年生だった。
わたしは2歳の時に母親を病気で亡くしていて、ずっと父と二人暮らしだった。
義弟は5歳の時にお父さんを事故で亡くしていて、それからはお母さんと二人で生きてきた。
わたしの父と、義弟のお母さんが結婚することになり、わたし達は一緒に暮らすようになった。
新しい義母はとても優しくて可愛い人。
本当は女の子が欲しかったのだと言って、わたしをとても可愛がってくれた。
父も義弟のことを可愛がっていた。
わたしと義弟の仲も良くて、幸せだった。
両親とも仕事で忙しく、わたしと義弟だけの生活が長かった。
…けれど変化が起こっていたことを、わたしは気付いていた。
変化は義弟に起こっていた。
あのコはわたしを…1人の女性として見始めた。
それに気付いたのは、わたしが中学二年生の夏。
夏休みになり、わたしは自分の部屋のベッドで昼寝をしていた。
窓を開ければ涼しい風がふいてきて、風鈴が涼しげな音色を出していた。
午前中は部活があったので、疲れて眠っていたのだ。
そこへ、義弟が部屋に入ってきた。
「姉貴? ちょっとマンガ借りたいんだけど…」
二回ノックした後、義弟は部屋に入ってきた。
わたしは気付いていたけれど、疲れから起きる気力がなかった。
だけど義弟が近付いてくる気配を感じていた。
「…何だ。寝てんのか」
ぎしっとベッドが軋む。
どうやらベッドに腰掛けたようだ。
「無防備な格好で寝やがって…。襲われてもしらねーぞ?」
誰にだよ、と心の中でつっこむだけの余裕があった。
この時までは。
義弟は手を伸ばし、わたしの頭を撫でた。
いつもはわたしが義弟の頭を撫でていた。
けれど最近では嫌がられるので止めていたが、こうして撫でられるのも良いものだと思った。
しばらく義弟は無言でわたしの頭を撫でていた。
しかし手が止まり、わたしの頬へと移動する。
ギシッと耳元でベッドが軋む音が聞こえた。
そして―唇にキス、された。
「っ!?」
驚いて眼を開けると、間近に義弟の顔。
すぐに眼を閉じた。
このまま起きても、どう反応していいか分からなかったから。
しばらく唇は触れていた。
その間、身動き一つできなかった。
やがて義弟はゆっくりとわたしから離れて、部屋を出て行った。
「なっんでっ…!」
義弟が出て行った後、わたしはベッドの上で蹲った。
わたしは彼のことを、本当の弟だと思って可愛がってきた。
でも彼はっ…!
そこまで考えて、わたしは続きを考えるのを止めた。
最後を…結果を考えるのはイヤだったからだ。
その後、わたしは何事も無かったかのように振る舞った。
義弟がキスした時、わたしは眠っていたのだ。
決して起きていたことを悟られないよう、わたしは義弟にいつも通りに接していた。
だけど予定外のことが、わたしが高校一年の時に起こった。
両親が仕事で、海外に行くことになったのだ。
でもわたしは高校入学がすでに済んでいて、海外に行く気は無かった。
なので仕方なく日本に残ったのだけど…義弟もまた、日本に残った。
両親に付いて行くと思っていたのに…。
アレから二年。
義弟もいつも通りに接してきた。
だけどだんだん、その、執着が強くなってきた気がする。
ちょっとでも帰りが遅くなると、怒られるようになった。
それに家の中で電話をしてて、長くなるとまた怒られるし…。
周囲の人達からは、「シスコンだね」と苦笑される。
もうそういう次元を飛び越えていることは、わたし1人しか知らない事実。
誰にも打ち明けられない苦しさはあったけれど、義弟はあれから何もしてはこなかったことに、安堵していた。
けれど義弟の担任から連絡を受けたことから、その状況は一変した。
「えっ? 県外の高校…ですか?」
家の方の電話にかかってきた。
まだ義弟は学校から帰って来ない。
たまたまわたしが早く帰れたので、受けられた電話だった。
でも多分、担任はそれを見通して連絡をしてきたんだろう。
義弟が受ければ、すぐに切られる内容だったから…。
義弟は優秀な生徒だ。
だから県外の寮のある有名な高校から、声がかかっているらしい。
けれど義弟はわたしを1人にさせられないと言って、断ったそうだ。
そんな話し、全然聞いていなかった…。
多分、連絡が届く前に、義弟が潰していたんだろうな。
担任はそれでも勿体無いと言って、義姉であるわたしに連絡をしてきたのだ。
高校側も、かなり良い条件を出しているらしい。
特待生として、授業料や寮費は免除。
制服代や教科書などの学校用品も、向こうで持ってくれるらしい。
それほどまで、義弟を欲しているのだ。
「…分かりました。義弟と話をしてみます」
そう言うと、担任は安心して電話を切った。
リビングのソファーに座り、深くため息を吐く。
わたしの説得も、どこまで聞いてもらえるものか…。
あの後すぐ、両親に電話した。
どうやら義母には話が通っていたらしいが、やっぱり嫌がっていたらしい。
家の近くにある高校に通うと頑張っている。
そこの高校は言うまでもなく、わたしの学校だ。
別にレベルが低いワケじゃない。そこそこだ。
でも義弟からしてみれば、受験勉強せずとも合格できる学校だろう。
どうしたのもか…。
「ただいま。姉貴、今日は早かったんだな」
スーパーの袋を持ちながら、義弟は帰って来た。
「すぐにご飯にするから、待ってて」
家事はほとんど義弟がやってくれる。
それはとてもありがいたいんだけど。
「…その前に話があるから、ちょっと座ってくれる?」
「何? いきなり」
不思議な顔をしながらも、わたしの向かいに座った。
こうやって改めて見ると、義姉の欲目を抜いてもキレイなコだと思う。
老若男女問わず、モテるらしいし。
頭も良いし、運動神経だって良い。
家事が不得意で、勉強も運動神経も普通のわたしなんか、何で好きになったんだろう?
…いや、今はそんなことを考えている場合じゃなかった。
「県外の高校への進学を勧められているんでしょう?」
「なっんで、そのことを…」
「連絡をもらったの。担任の先生から。そして義母さんにも話を聞いた。良い話だと思うけど…やっぱりイヤなの?」
「イヤだね。オレは姉貴と同じ高校に通うんだ」
そう思いつめた顔で言われると、やっぱり…と思う。
「ただでさえ一年しか同じ学校に通えないんだ。勿体無いだろう? 時間が」
ここまでハッキリ言われると、清々しいを通り越して、あきれてしまう。
「わたしが、それを望んでも?」
「姉貴が? どうして? 担任やおふくろに何か言われた?」
「説得するようには言われたけどね。ただわたしも勿体無いと思うのよ。あなたは頭良いんだし、もっと自分を活かせる所に行くべきだとわたしは思うの」
「絶対イヤだっ!」
バンッ!とテーブルを叩き、義弟は立ち上がった。
「姉貴と同じ学校へ行く! …でもそれがイヤなら、せめて姉貴が高校卒業するまでは、同じ学校に行かせてくれ。高校二年になる前に、もっとレベルの高い高校に編入する。でも家からは絶対出ないからな!」
「でもわたしは高校を卒業したら、家を出るかもしれないわよ?」
「そんなっ…!」
家を出ることは、高校に入った時から考えていた。
本当は高校も寮のある所にしようかとも思った。
けれどその時はまだ、両親の海外転勤の話しなんて無かったから…。
家に義弟と二人だけじゃないなら、何とかなると思っていた。
けどもう…終わりにしたほうが良いのかもしれない。
「姉貴は…平気なの? オレと離れても」
「離れていても、あなたはわたしの大切な義弟よ。それに変わりは一生無いわ」
自分がどんなに残酷なことを口にしているか、自覚はあった。
けれど義弟の強い思いには、同じく強い思いで返さなければ負けてしまう。
「…姉貴は、さ。本当は起きていたんだろう?」
ドキッと心臓が嫌な音を立てた。
「三年前のあの夏の日、オレがキスしたの、知っているんだろう?」
…触れてほしくないこと、逃げ回っていた現実に、直面する時がきてしまったか。
「ええ…、起きてたわよ」
「ならっ! 分かってるはずだ! オレが姉貴のことを、本当に好きなことを!」
「大声を出さないで。確かにキスされてたのは知ってた。でもその後のあなたの態度でも、充分に分かることよ」
「分かっているなら…受け入れてよ」
泣きそうに俯く義弟の姿を見ると、心が痛い。
「…でもわたし達、姉弟なのよ? それは周囲の人達や両親が知っていることだし、恋人になるなんて許されない」
「でも本当の姉弟じゃない」
「それは…そうだけど」
正直、義弟がわたしを女性扱いしてくれるのは、嬉しかった。
それは多分、義弟のことを…。
「…だけどやっぱりダメよ」
「ダメじゃない! ダメなんかじゃない!」
義弟は泣きながら、頭を振る。
「…いつから?」
「えっ?」
「いつから、わたしのことを好きになってたの?」
だからだろうか。
こんな言葉が口から出てしまったのは。
「はじめて会った時から…ずっと。一目惚れだったんだ」
そんな昔から…。
「最初は『姉』だと思い込もうとした。だけど他の男と一緒にいるところとか、見たらもうっ…ムリだった」
他の男って…ああ、多分、学校帰りとかで一緒に歩いていた男の子のことだろうな。
義弟の思いに気付いた時から、わたしは恋愛に臆病になってしまった。
だから自分から恋人を作ることも、告白されても受け入れることもしなかった。
義弟は本当に早くに、恋心に目覚めていたんだな。
「オレじゃっ…ダメなのかよ?」
ダメじゃないからこそ、こんなに悩んで苦しんでいる。…わたしも。
「父さんや義母さんに、何て言うのよ?」
「はっきり言うよ! オレが姉貴のこと、好きだって!」
「何も恋人じゃなくても、ずっと一緒にいられるのよ? 姉弟でも」
「それじゃあ、イヤなんだよ!」
「ワガママね」
「オレ、まだガキだもん」
…こういうところで『子供』を持ち出してくる部分、やっぱり子供だ。
多分、いや、絶対に何を言っても聞き入れちゃくれないだろう。
わたしがムリに恋人を作っても、きっと壊される。関係を。
そして逃げても…追ってきそうだ。義弟なら。
なら、もう諦めるしかないだろう。
わたしは立ち上がり、義弟と真っ直ぐ向き合った。
相変わらず泣いているけれど、強い意思を込めてわたしを見つめている。
「…分かったわ」
「へ?」
わたしは手を伸ばし、義弟の頭と腕を掴んで引き寄せた。
そしてそのまま…
「んんっ!?」
キスをした。もちろん、唇に。
「あなたの熱意には負けたわ。これからは姉弟として、そして恋人として、よろしくね」
「…うん。うんっ!」
義弟の目から、ボロボロ涙が出てくる。
わたしはまだわずかに低い義弟を抱き締めながら、音もなくため息をついた。
さて、両親には何て言おう?
あっ、その前に担任の先生にも連絡しなきゃ。
『やっぱりわたしにはムリでした』って。
その意味は進学の説得もあるけれど、義弟の執念深さにも負けましたってね♪
はあ…。
前途多難だけど義弟のこの強い思いがあるなら、何でも乗り越えられそうだ。
義弟は2つ年下で、小学3年生だった。
わたしは2歳の時に母親を病気で亡くしていて、ずっと父と二人暮らしだった。
義弟は5歳の時にお父さんを事故で亡くしていて、それからはお母さんと二人で生きてきた。
わたしの父と、義弟のお母さんが結婚することになり、わたし達は一緒に暮らすようになった。
新しい義母はとても優しくて可愛い人。
本当は女の子が欲しかったのだと言って、わたしをとても可愛がってくれた。
父も義弟のことを可愛がっていた。
わたしと義弟の仲も良くて、幸せだった。
両親とも仕事で忙しく、わたしと義弟だけの生活が長かった。
…けれど変化が起こっていたことを、わたしは気付いていた。
変化は義弟に起こっていた。
あのコはわたしを…1人の女性として見始めた。
それに気付いたのは、わたしが中学二年生の夏。
夏休みになり、わたしは自分の部屋のベッドで昼寝をしていた。
窓を開ければ涼しい風がふいてきて、風鈴が涼しげな音色を出していた。
午前中は部活があったので、疲れて眠っていたのだ。
そこへ、義弟が部屋に入ってきた。
「姉貴? ちょっとマンガ借りたいんだけど…」
二回ノックした後、義弟は部屋に入ってきた。
わたしは気付いていたけれど、疲れから起きる気力がなかった。
だけど義弟が近付いてくる気配を感じていた。
「…何だ。寝てんのか」
ぎしっとベッドが軋む。
どうやらベッドに腰掛けたようだ。
「無防備な格好で寝やがって…。襲われてもしらねーぞ?」
誰にだよ、と心の中でつっこむだけの余裕があった。
この時までは。
義弟は手を伸ばし、わたしの頭を撫でた。
いつもはわたしが義弟の頭を撫でていた。
けれど最近では嫌がられるので止めていたが、こうして撫でられるのも良いものだと思った。
しばらく義弟は無言でわたしの頭を撫でていた。
しかし手が止まり、わたしの頬へと移動する。
ギシッと耳元でベッドが軋む音が聞こえた。
そして―唇にキス、された。
「っ!?」
驚いて眼を開けると、間近に義弟の顔。
すぐに眼を閉じた。
このまま起きても、どう反応していいか分からなかったから。
しばらく唇は触れていた。
その間、身動き一つできなかった。
やがて義弟はゆっくりとわたしから離れて、部屋を出て行った。
「なっんでっ…!」
義弟が出て行った後、わたしはベッドの上で蹲った。
わたしは彼のことを、本当の弟だと思って可愛がってきた。
でも彼はっ…!
そこまで考えて、わたしは続きを考えるのを止めた。
最後を…結果を考えるのはイヤだったからだ。
その後、わたしは何事も無かったかのように振る舞った。
義弟がキスした時、わたしは眠っていたのだ。
決して起きていたことを悟られないよう、わたしは義弟にいつも通りに接していた。
だけど予定外のことが、わたしが高校一年の時に起こった。
両親が仕事で、海外に行くことになったのだ。
でもわたしは高校入学がすでに済んでいて、海外に行く気は無かった。
なので仕方なく日本に残ったのだけど…義弟もまた、日本に残った。
両親に付いて行くと思っていたのに…。
アレから二年。
義弟もいつも通りに接してきた。
だけどだんだん、その、執着が強くなってきた気がする。
ちょっとでも帰りが遅くなると、怒られるようになった。
それに家の中で電話をしてて、長くなるとまた怒られるし…。
周囲の人達からは、「シスコンだね」と苦笑される。
もうそういう次元を飛び越えていることは、わたし1人しか知らない事実。
誰にも打ち明けられない苦しさはあったけれど、義弟はあれから何もしてはこなかったことに、安堵していた。
けれど義弟の担任から連絡を受けたことから、その状況は一変した。
「えっ? 県外の高校…ですか?」
家の方の電話にかかってきた。
まだ義弟は学校から帰って来ない。
たまたまわたしが早く帰れたので、受けられた電話だった。
でも多分、担任はそれを見通して連絡をしてきたんだろう。
義弟が受ければ、すぐに切られる内容だったから…。
義弟は優秀な生徒だ。
だから県外の寮のある有名な高校から、声がかかっているらしい。
けれど義弟はわたしを1人にさせられないと言って、断ったそうだ。
そんな話し、全然聞いていなかった…。
多分、連絡が届く前に、義弟が潰していたんだろうな。
担任はそれでも勿体無いと言って、義姉であるわたしに連絡をしてきたのだ。
高校側も、かなり良い条件を出しているらしい。
特待生として、授業料や寮費は免除。
制服代や教科書などの学校用品も、向こうで持ってくれるらしい。
それほどまで、義弟を欲しているのだ。
「…分かりました。義弟と話をしてみます」
そう言うと、担任は安心して電話を切った。
リビングのソファーに座り、深くため息を吐く。
わたしの説得も、どこまで聞いてもらえるものか…。
あの後すぐ、両親に電話した。
どうやら義母には話が通っていたらしいが、やっぱり嫌がっていたらしい。
家の近くにある高校に通うと頑張っている。
そこの高校は言うまでもなく、わたしの学校だ。
別にレベルが低いワケじゃない。そこそこだ。
でも義弟からしてみれば、受験勉強せずとも合格できる学校だろう。
どうしたのもか…。
「ただいま。姉貴、今日は早かったんだな」
スーパーの袋を持ちながら、義弟は帰って来た。
「すぐにご飯にするから、待ってて」
家事はほとんど義弟がやってくれる。
それはとてもありがいたいんだけど。
「…その前に話があるから、ちょっと座ってくれる?」
「何? いきなり」
不思議な顔をしながらも、わたしの向かいに座った。
こうやって改めて見ると、義姉の欲目を抜いてもキレイなコだと思う。
老若男女問わず、モテるらしいし。
頭も良いし、運動神経だって良い。
家事が不得意で、勉強も運動神経も普通のわたしなんか、何で好きになったんだろう?
…いや、今はそんなことを考えている場合じゃなかった。
「県外の高校への進学を勧められているんでしょう?」
「なっんで、そのことを…」
「連絡をもらったの。担任の先生から。そして義母さんにも話を聞いた。良い話だと思うけど…やっぱりイヤなの?」
「イヤだね。オレは姉貴と同じ高校に通うんだ」
そう思いつめた顔で言われると、やっぱり…と思う。
「ただでさえ一年しか同じ学校に通えないんだ。勿体無いだろう? 時間が」
ここまでハッキリ言われると、清々しいを通り越して、あきれてしまう。
「わたしが、それを望んでも?」
「姉貴が? どうして? 担任やおふくろに何か言われた?」
「説得するようには言われたけどね。ただわたしも勿体無いと思うのよ。あなたは頭良いんだし、もっと自分を活かせる所に行くべきだとわたしは思うの」
「絶対イヤだっ!」
バンッ!とテーブルを叩き、義弟は立ち上がった。
「姉貴と同じ学校へ行く! …でもそれがイヤなら、せめて姉貴が高校卒業するまでは、同じ学校に行かせてくれ。高校二年になる前に、もっとレベルの高い高校に編入する。でも家からは絶対出ないからな!」
「でもわたしは高校を卒業したら、家を出るかもしれないわよ?」
「そんなっ…!」
家を出ることは、高校に入った時から考えていた。
本当は高校も寮のある所にしようかとも思った。
けれどその時はまだ、両親の海外転勤の話しなんて無かったから…。
家に義弟と二人だけじゃないなら、何とかなると思っていた。
けどもう…終わりにしたほうが良いのかもしれない。
「姉貴は…平気なの? オレと離れても」
「離れていても、あなたはわたしの大切な義弟よ。それに変わりは一生無いわ」
自分がどんなに残酷なことを口にしているか、自覚はあった。
けれど義弟の強い思いには、同じく強い思いで返さなければ負けてしまう。
「…姉貴は、さ。本当は起きていたんだろう?」
ドキッと心臓が嫌な音を立てた。
「三年前のあの夏の日、オレがキスしたの、知っているんだろう?」
…触れてほしくないこと、逃げ回っていた現実に、直面する時がきてしまったか。
「ええ…、起きてたわよ」
「ならっ! 分かってるはずだ! オレが姉貴のことを、本当に好きなことを!」
「大声を出さないで。確かにキスされてたのは知ってた。でもその後のあなたの態度でも、充分に分かることよ」
「分かっているなら…受け入れてよ」
泣きそうに俯く義弟の姿を見ると、心が痛い。
「…でもわたし達、姉弟なのよ? それは周囲の人達や両親が知っていることだし、恋人になるなんて許されない」
「でも本当の姉弟じゃない」
「それは…そうだけど」
正直、義弟がわたしを女性扱いしてくれるのは、嬉しかった。
それは多分、義弟のことを…。
「…だけどやっぱりダメよ」
「ダメじゃない! ダメなんかじゃない!」
義弟は泣きながら、頭を振る。
「…いつから?」
「えっ?」
「いつから、わたしのことを好きになってたの?」
だからだろうか。
こんな言葉が口から出てしまったのは。
「はじめて会った時から…ずっと。一目惚れだったんだ」
そんな昔から…。
「最初は『姉』だと思い込もうとした。だけど他の男と一緒にいるところとか、見たらもうっ…ムリだった」
他の男って…ああ、多分、学校帰りとかで一緒に歩いていた男の子のことだろうな。
義弟の思いに気付いた時から、わたしは恋愛に臆病になってしまった。
だから自分から恋人を作ることも、告白されても受け入れることもしなかった。
義弟は本当に早くに、恋心に目覚めていたんだな。
「オレじゃっ…ダメなのかよ?」
ダメじゃないからこそ、こんなに悩んで苦しんでいる。…わたしも。
「父さんや義母さんに、何て言うのよ?」
「はっきり言うよ! オレが姉貴のこと、好きだって!」
「何も恋人じゃなくても、ずっと一緒にいられるのよ? 姉弟でも」
「それじゃあ、イヤなんだよ!」
「ワガママね」
「オレ、まだガキだもん」
…こういうところで『子供』を持ち出してくる部分、やっぱり子供だ。
多分、いや、絶対に何を言っても聞き入れちゃくれないだろう。
わたしがムリに恋人を作っても、きっと壊される。関係を。
そして逃げても…追ってきそうだ。義弟なら。
なら、もう諦めるしかないだろう。
わたしは立ち上がり、義弟と真っ直ぐ向き合った。
相変わらず泣いているけれど、強い意思を込めてわたしを見つめている。
「…分かったわ」
「へ?」
わたしは手を伸ばし、義弟の頭と腕を掴んで引き寄せた。
そしてそのまま…
「んんっ!?」
キスをした。もちろん、唇に。
「あなたの熱意には負けたわ。これからは姉弟として、そして恋人として、よろしくね」
「…うん。うんっ!」
義弟の目から、ボロボロ涙が出てくる。
わたしはまだわずかに低い義弟を抱き締めながら、音もなくため息をついた。
さて、両親には何て言おう?
あっ、その前に担任の先生にも連絡しなきゃ。
『やっぱりわたしにはムリでした』って。
その意味は進学の説得もあるけれど、義弟の執念深さにも負けましたってね♪
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