光輪学院シリーズ・神無月の憂鬱

hosimure

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「ぷっ」




「依琉!」




噴出した依琉を、すぐさま神無月は咎める。




「あの、それが何か?」




「いっいえ! それよりあんまり気にしない方がいいですよ。病は気から。ウチの祖母のお守りは良く効きますし、わたしの言葉も力を持っています。だから絶対大丈夫ですよ。自信持ってください!」




「あっありがとう!」




妻が満面の笑みを浮かべたところで、夫が戻って来た。




二人は笑顔で去った。




やがて休憩時間も終わり、生徒達や祖母は教室に戻った。




神無月は依琉を奥の小部屋へ案内した。




台所の隣の部屋で、教室からは離れている為、声は届かない。


「神無月のお祖母さん、お守りを作るの?」




「うん。お守りの袋はウチの母の手作りだけどね。お守りの中身を書くの」




神無月はイスに座り、自分の麦茶を注いで飲んだ。




「習字でね、願い事を紙に書いて、それを折りたたんで袋に入れるの。それを身に付けていると、その言葉通りになるってもんよ」




「なるほど。安全祈願とか恋愛成就とか、そういう言葉を書くんだ」




「そっ。祖母の力はそうやって発揮される。だからあの奥さん、これからは絶対に病気しない。お婆の他に、私の<言霊>も使ったんだもの」




「妻にとっては良いことなんだろうけど、夫にとっちゃ当初の目的からは完全に離れちゃっただろうね。気の毒に。今までの努力が全て水の泡だ」




楽しそうに笑う依琉を、今度は叱れなかった。




それは神無月も、そして祖母も気付いていたからだ。




妻は何の病気にもなっていないことを―。


「…依琉、あなたは何を<視>たの?」




「ん? ボクはあの旦那さんのが<視>えただけだよ」




依琉が言うには、夫の背後にはもう一人の彼の姿があったという。




不安そうに妻に付き添う姿とは逆に、楽しそうに嬉しそうに笑っている夫の姿。




そしてその夫には3人の女性の姿があった。




「3年目の浮気とはよく言ったもんだ。あの旦那さん、かなりの浮気性と見た。だけど妻は夫を愛していて、離婚なんてしないだろう。なら、自殺に追い込むしかないと考えた」




「奥さんが…病弱体質なのを利用して?」




「うん。小さい頃からよく病気していたのが<視>えた。だけど重い病気も怪我も一度もしていない。それが妻の強さと力なんだろうね。見た目はか弱そうだけど芯は強い―。夫にとっては厄介な部分だ」




そこでいったん麦茶でのどを潤し、依琉は続けた。




「だからわざと妻の病気体質を大袈裟にした。それで妻をノイローゼにして、自殺してもらうことにしたんだよ」 


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