理想の女性

hosimure

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理想の彼女との出会い

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「分かりました。ではお嬢さんをいただきます」

「ええ、どうぞ」

彼女の母親からは賛成を得た。

僕の両親は最初は渋い顔をしていたけれど、彼女の母親が経営する会社の名前を聞くと、コロッと態度を変えた。

…この時ほど、両親を恥ずかしく思ったことはない。

けれど一応両家の了解を得たということで、僕らは結婚することにした。

彼女の母親が費用を全額出してくれたおかげで、結婚式も盛大に行えた。

しかも二人の新居も、彼女の母親が用意してくれた。

何でも知り合いの人が持っているマンションなので、家賃も格安にしてくれた。

「…こんなに幸せだと、逆に不安になるな」

「どうして? みんなに祝福されて、嬉しいでしょう?」

「うん…そうだね」

新居のリビングに、二人肩を寄せ合っていた。

「あっ、ねぇ、子供のことなんだけど…」

「えっ!? できたの?」

「まだよ。でもいつ頃ほしい?」

「いつ頃って、そうだな…」

僕は少し考えた。

まだ弁護士になったばかりで、覚えることやることは山のようだ。

そして彼女との新婚生活も、できればもう少し味わっていた。

「…できれば5年ぐらいは後回しにしないか? まだ父親になる覚悟ができていないんだ」

「5年…となると、27歳ね。うん、わたしは構わないわ」

「ありがとう!」

僕はぎゅっと彼女を抱き締めた。

「でも…」

「うん?」

「親になるのに、覚悟ってやっぱり必要よね」

腕の中の彼女は、どこか遠い目をしていた。

「わたしが生まれる前にお父さん死んじゃったから、そういうの分からなかったわ。ごめんなさいね」

「あっ謝ることじゃないよ! 僕がまだ、精神的に幼いだけだから」

彼女の父親がすでに亡くなっていたことは知っていたけれど、まさか彼女が生まれる前に死んでいたとは思わなかった。

「でもそうなると、キミのお母さんは強いね。たった一人でキミを育ててきたんだから」

「う~ん。でもウチの家系、母子家庭が多いの。だからたくましいのよ」

「そう、なんだ」

現代では離婚は珍しくない。

だけど触れていいことでもないので、僕は話題を終了させた。

それから5年後―。

僕は彼女の母親が言った通り、人気弁護士となった。

個人事務所を2年前から立ち上げ、街中のビルにオフィスを設立した。

今では30人もの部下を持ち、毎日忙しくも充実した日々を送っていた。

そんな中、彼女が言い出した。

「ねぇ…。そろそろ約束の5年目よ。子供、作らない?」

白い顔を赤く染め、彼女は囁いた。

「そう、だな。そろそろ良いかもな」

仕事が忙しいことから、お互いの両親は孫のことについては何も言い出さなかった。

けれど同じ歳の人達は、もう1人か2人の子供がいてもおかしくなくなった。

仕事も安定してきたし、彼女との二人っきりの生活は十分に楽しんだ。

「それじゃあ、寝室へ行きましょう」

僕は逸る彼女に手を引かれ、寝室に入った。

子供ができれば、彼女をめいっぱい愛することが難しくなる。

だから後悔しないように、しばらくはガマンできるように、彼女をたくさん愛した。

夜が更け、いったん休憩することにした。

「子供は女の子と男の子、どっちがいい?」

ベッドの中で魅力的な笑みを浮かべながら、彼女が聞いてきた。

「僕はどっちでも良いな。でもまあ望むならキミに似た美人さんで、僕の成績優秀な部分を引き継いでくれるなら、どちらでも構わないよ」

「ふふっ。わたしもよ」

僕の首に腕を回し、彼女は耳元に唇を寄せた。

「…ねぇ、覚えてる? わたしを必ず幸せにする約束」

「もちろんだよ」

「わたしの今の望みは、子供を生むことなの」

彼女の唇が肌に触れながら、ゆっくりと首元に下りる。

「元気で立派な子供を産むこと…。その為に、協力してくれる?」

「もちろんだよ。僕にできることなら何でも」

本心から出た言葉だった。

彼女はニッコリ笑うと、歯を見せた。

まるで肉食獣のような歯に、思わず背筋が寒くなる。

「嬉しい! それじゃああなたの血・肉、食べさせてね」

「えっ…」

ガッ!

「ごぶっ!?」

彼女の歯が、僕の首に食い込んだ。

ゴキッ グシャッ ビシャッ

そのままノドを食い千切られ、僕は死んだ。
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