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彼と僕
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「ああっ?」
うわっ、今まで聞いたことのないぐらいの不機嫌な声。
「なに、永河。お前、出て行くつもりなのか?」
しかも不機嫌なオーラまで…可視できるところが、また怖い。
「いやっ、僕が出て行くのは、キミが僕を捨てる時だって分かっているさ」
だから慌てて両手を振って、否定する。
「だからその…高校を卒業を機に、とか言ってくれると、動きやすいというか何と言うか…」
しどろもどろに言うと、紗神は頬杖をついた。
「小遣いが足りないか?」
「どこが?」
思わず言い返してしまった。
彼と暮らすようになってから、僕は一切金に不自由しなくなった。
それもそのはず。紗神からブラックカードを渡され、リビングに置いてある箱には万札が入れてあり、いつでも好きなだけ持っていけと言われた。どれだけお札を持っていっても、すぐに足された。
贅沢な暮らしに慣れてしまった自分が怖いぐらいだ。
「それじゃあ家事のこと?」
「それはほとんどキミがしているじゃないか」
食事や洗濯、掃除などは紗神が進んでしてくれる。僕は手伝う程度だ。
何でも仕事の合間にやる家事が楽しいらしく、家庭的なのが驚きだ。
「じゃあ何?」
「何って…だからキミが将来、本当に好きな人ができたら、僕なんて邪魔になるだろう? その前に縁を切った方が良いんじゃないかって思ったんだ」
紗神は呆れたようにため息をついた。
「はあ…。ここまで一緒に居て、何でそういう考えになるのか、不思議なんだけど?」
ここまでって、まだ一年しか一緒に暮らしていないんだけど…。
「オレはお前を手放す気はないよ。しかもずっとな」
「それもいつまでか分からないじゃないか」
「じゃあ何か? お前はいつ来るか分からない『いつか』の為に、別れると?」
「それがお互いの為だと思うけど…」
「違うだろう? それはお前が怖いから、逃げたいだけだろう?」
「うっ…!」
ズバリ本音を言われて、言葉に詰まる。
「オレにお前の他に興味を持つヤツができて、いきなり突然捨てられるのが怖い。だから今の内にって、勝手過ぎないか?」
「その言葉、キミにだけは言われたくないんだけど」
「…言うようになったな」
「キミのおかげだよ」
一年前までの僕なら、こうして彼と言い合うこともできなかっただろう。
でもこの一年で身も心も彼に鍛えられた。
「はあ~。…大体、お前の体はすでにオレのモンだ。他のヤツじゃ、満足できないだろう?」
「そっそっちの話はいいだろう?」
「よくないだろう? お前のはじめての男だぞ? オレは」
「わ~っわぁあ! 朝っぱらから止めてよ! と言うか、問題をすり変えないで!」
「ちっ」
あっ危なかった…。危うく彼の策にはまるところだった。
「とにかく、オレはお前を手放すつもりはない。出て行くことも許さない。それで問題は解決だ」
そう言い切ると、彼は立ち上がった。
「ちょっと待ってよ! それじゃあ話になっていない」
「なってる。後はお前が納得すればいいだけだ」
「なっ…!」
分かってたことだけど、一方的で強引過ぎる。
「逃げ出そうなんて思うなよ? どこに逃げても必ず探し出してやるからな」
ニッと笑う彼を見ると、それはあるなと思う。
彼の持つ力があれば、どこに逃げても見つけ出されるだろう。そして紗神の前に引きずり出されることが、容易に想像ができてしまう。
「…逃げないけどさ」
それでも離れたい気持ちもある。
実らない気持ちを抱き続けるには、強い気持ちが必要だ。そしてその強さを…僕は持っていなかった。
「すぐに仕事は終わらせる。オレの部屋で待ってろ。新しいオモチャを買ったんだ。遊んでやるからな」
「うん…分かった」
それでも彼の言葉には逆らえない。
ちなみに彼の言うオモチャとは、いわゆる大人のオモチャ。
僕はもうクセになっているため息をついて、階段を上った。
「んんっ…」
喉の渇きで目が覚めた。
そして体にかかるずっしりとした重みは…紗神の体か。
僕は彼を起こさないようにゆっくりと動き、ベッドサイドに置いてあるミネラルウォーターのビンを手に取り、開けて飲んだ。
うわっ、今まで聞いたことのないぐらいの不機嫌な声。
「なに、永河。お前、出て行くつもりなのか?」
しかも不機嫌なオーラまで…可視できるところが、また怖い。
「いやっ、僕が出て行くのは、キミが僕を捨てる時だって分かっているさ」
だから慌てて両手を振って、否定する。
「だからその…高校を卒業を機に、とか言ってくれると、動きやすいというか何と言うか…」
しどろもどろに言うと、紗神は頬杖をついた。
「小遣いが足りないか?」
「どこが?」
思わず言い返してしまった。
彼と暮らすようになってから、僕は一切金に不自由しなくなった。
それもそのはず。紗神からブラックカードを渡され、リビングに置いてある箱には万札が入れてあり、いつでも好きなだけ持っていけと言われた。どれだけお札を持っていっても、すぐに足された。
贅沢な暮らしに慣れてしまった自分が怖いぐらいだ。
「それじゃあ家事のこと?」
「それはほとんどキミがしているじゃないか」
食事や洗濯、掃除などは紗神が進んでしてくれる。僕は手伝う程度だ。
何でも仕事の合間にやる家事が楽しいらしく、家庭的なのが驚きだ。
「じゃあ何?」
「何って…だからキミが将来、本当に好きな人ができたら、僕なんて邪魔になるだろう? その前に縁を切った方が良いんじゃないかって思ったんだ」
紗神は呆れたようにため息をついた。
「はあ…。ここまで一緒に居て、何でそういう考えになるのか、不思議なんだけど?」
ここまでって、まだ一年しか一緒に暮らしていないんだけど…。
「オレはお前を手放す気はないよ。しかもずっとな」
「それもいつまでか分からないじゃないか」
「じゃあ何か? お前はいつ来るか分からない『いつか』の為に、別れると?」
「それがお互いの為だと思うけど…」
「違うだろう? それはお前が怖いから、逃げたいだけだろう?」
「うっ…!」
ズバリ本音を言われて、言葉に詰まる。
「オレにお前の他に興味を持つヤツができて、いきなり突然捨てられるのが怖い。だから今の内にって、勝手過ぎないか?」
「その言葉、キミにだけは言われたくないんだけど」
「…言うようになったな」
「キミのおかげだよ」
一年前までの僕なら、こうして彼と言い合うこともできなかっただろう。
でもこの一年で身も心も彼に鍛えられた。
「はあ~。…大体、お前の体はすでにオレのモンだ。他のヤツじゃ、満足できないだろう?」
「そっそっちの話はいいだろう?」
「よくないだろう? お前のはじめての男だぞ? オレは」
「わ~っわぁあ! 朝っぱらから止めてよ! と言うか、問題をすり変えないで!」
「ちっ」
あっ危なかった…。危うく彼の策にはまるところだった。
「とにかく、オレはお前を手放すつもりはない。出て行くことも許さない。それで問題は解決だ」
そう言い切ると、彼は立ち上がった。
「ちょっと待ってよ! それじゃあ話になっていない」
「なってる。後はお前が納得すればいいだけだ」
「なっ…!」
分かってたことだけど、一方的で強引過ぎる。
「逃げ出そうなんて思うなよ? どこに逃げても必ず探し出してやるからな」
ニッと笑う彼を見ると、それはあるなと思う。
彼の持つ力があれば、どこに逃げても見つけ出されるだろう。そして紗神の前に引きずり出されることが、容易に想像ができてしまう。
「…逃げないけどさ」
それでも離れたい気持ちもある。
実らない気持ちを抱き続けるには、強い気持ちが必要だ。そしてその強さを…僕は持っていなかった。
「すぐに仕事は終わらせる。オレの部屋で待ってろ。新しいオモチャを買ったんだ。遊んでやるからな」
「うん…分かった」
それでも彼の言葉には逆らえない。
ちなみに彼の言うオモチャとは、いわゆる大人のオモチャ。
僕はもうクセになっているため息をついて、階段を上った。
「んんっ…」
喉の渇きで目が覚めた。
そして体にかかるずっしりとした重みは…紗神の体か。
僕は彼を起こさないようにゆっくりと動き、ベッドサイドに置いてあるミネラルウォーターのビンを手に取り、開けて飲んだ。
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