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「何だ何だ、ヤス。朝から何疲れてんだよ?」
「真宮会長のお取り巻きに、何か言われたか?」
オレの前の席と隣の席のヤツが、からかい気味に声をかけてくる。
お取り巻き…そう、光雅にはそういうヤツらが側にいる。だが…。
「そんな勇気のあるヤツいるか」
「だよな~。真宮会長の寵愛を受けているお前に何か言おうものなら、命知らずも良いとこだ」
「悪口一つで退学だって、聞いたことあるぜ?」
「あってたまるかぁ! そんな独裁政治!」
…いや、光雅ならありそうだからこそ、全力で否定する。
「アハハ、冗談だって。それよりヤスも大変だよなぁ」
「そうそう。あんなカリスマ的な幼馴染がいたら、心休まらないだろう?」
「まあ、な…」
心は休まらない。十年前からずっと…。
「ヤスだって充分、イイと思うんだけどな。成績だってウチのクラスじゃトップだし、運動神経だって良い。顔もそこそこだしな」
「側に会長がいると、どーしても霞んでしまうんだよなぁ。まっ、それは誰でもそうだろうけどよ」
「ああ、だろうな。だから光雅には友達っつーもんがいないんだろう」
光雅は悪いヤツじゃない。
けれど天性的な天才だ。勉強や運動はもちろんだが、何をやらせても人並み以上。それが顔や体、しかも性格も加われば、あんまり近付きたくないタイプになる。…特に同性なら余計にだ。
「そう言えばさ、真宮会長、また芸能界から誘いを受けたって?」
「あ~、それ知ってる。芸能事務所が学院に連絡してきたんだろう? 毎度のことじゃないか」
「まあ目立つからな、あの人」
街を歩けば誰もが振り向く美貌の持ち主。白くスベスベした肌に、長い手足。それに高い身長に、整った顔立ち。髪の毛だってサラサラで、そんじょそこらの女子が勝てる見込みはないほど。
カッコイイというより、キレイな顔立ちをしている。十年前はそれこそ女の子みたいに可愛かったが、今は綺麗に昇格したな。
それでも武道をやっているので、精神もケンカも強い。その他、何をやってもプロ並みというのは恐れ入る。
…おかげでオレはこの十年、日陰の人生をまっしぐらに生きているワケで、そろそろもう自暴自棄もイイところとなってきている。
「まあそれも高校にいるうちだけだろう? 高等部卒業したら、どうするつもりなんだろうな?」
「ヤス、何か聞いているか?」
「さぁな。一年以上後のことなんて、考えていないと思うけど?」
「まあ会長だったら、どこにでも行けるし、何にでもなれるだろうな」
「そうだな。心配するだけ損かも」
そう言いつつも、クラスメート達の会話は光雅のことばかり。
オレはすでにクセになっているため息を、また吐いてしまった。
やがて担任が来て、ホームルーム開始。そして授業もはじまる。耳では授業を受けながら、思考は光雅のことに集中していた。
光雅との出会いは十年前。両親がアパレル関係で働いていたのだが、十年前、めでたく自立することが決まった。
そしてあのマンションへ引っ越してきた。仕事が軌道に乗ったおかげで、安アパートから高級マンションへ引っ越してこれたんだが、それを喜んだのも一ヶ月だけだった。
隣の部屋に住む真宮光雅は、当時からカリスマ性を発揮していた。
ウチの両親に面倒を見てくれと頼まれた光雅は、本当に世話をしてくれた。…実の両親以上に。おかげで今では部屋の合鍵も渡し、空き部屋には光雅専用の部屋まであるぐらいだ。
オレの両親は光雅の才能を褒めた。そして愛してもいた。
しっかりした性格だから、オレのことを安心して預けていられると言っていたが…本当は光雅のような子供が欲しかったのではないかと、何度も夜中一人で思っては、声を押し殺して泣いた。
オレが何をしても褒めてはくれず、それどころか光雅と比べては、アイツのことを褒めちぎっていた。
それはウチの外でも同じで、学校でも近所でも光雅は褒められて、愛される存在だった。
オレが小学一年にして、悟ってしまったのは言うまでもないこと。
両親どころか友達や、初恋の女の子まで関心は光雅に向かう。
落ち込む時がほとんどだが、僅かに開放される時もある。
一つの歳の差がこういう時、とてもありがたかった。一学年違うだけで、随分助けられた。
きっと同級生だったら…耐えられなかった。あんな出来たヤツが幼馴染だったら、オレはとうに逃げ出しただろう。
オレだって頑張ってきた。器用じゃない分、努力でカバーしてきた。けれど…それでも天才には敵わない。
成績のことに関してはもちろんのこと、発言力ですら負けていた。
この学院に入ることになったのも、光雅がオレの両親に勧めたからだ。オレは小学校で光雅にウンザリしていたから、別の公立中学校が良かった。
「真宮会長のお取り巻きに、何か言われたか?」
オレの前の席と隣の席のヤツが、からかい気味に声をかけてくる。
お取り巻き…そう、光雅にはそういうヤツらが側にいる。だが…。
「そんな勇気のあるヤツいるか」
「だよな~。真宮会長の寵愛を受けているお前に何か言おうものなら、命知らずも良いとこだ」
「悪口一つで退学だって、聞いたことあるぜ?」
「あってたまるかぁ! そんな独裁政治!」
…いや、光雅ならありそうだからこそ、全力で否定する。
「アハハ、冗談だって。それよりヤスも大変だよなぁ」
「そうそう。あんなカリスマ的な幼馴染がいたら、心休まらないだろう?」
「まあ、な…」
心は休まらない。十年前からずっと…。
「ヤスだって充分、イイと思うんだけどな。成績だってウチのクラスじゃトップだし、運動神経だって良い。顔もそこそこだしな」
「側に会長がいると、どーしても霞んでしまうんだよなぁ。まっ、それは誰でもそうだろうけどよ」
「ああ、だろうな。だから光雅には友達っつーもんがいないんだろう」
光雅は悪いヤツじゃない。
けれど天性的な天才だ。勉強や運動はもちろんだが、何をやらせても人並み以上。それが顔や体、しかも性格も加われば、あんまり近付きたくないタイプになる。…特に同性なら余計にだ。
「そう言えばさ、真宮会長、また芸能界から誘いを受けたって?」
「あ~、それ知ってる。芸能事務所が学院に連絡してきたんだろう? 毎度のことじゃないか」
「まあ目立つからな、あの人」
街を歩けば誰もが振り向く美貌の持ち主。白くスベスベした肌に、長い手足。それに高い身長に、整った顔立ち。髪の毛だってサラサラで、そんじょそこらの女子が勝てる見込みはないほど。
カッコイイというより、キレイな顔立ちをしている。十年前はそれこそ女の子みたいに可愛かったが、今は綺麗に昇格したな。
それでも武道をやっているので、精神もケンカも強い。その他、何をやってもプロ並みというのは恐れ入る。
…おかげでオレはこの十年、日陰の人生をまっしぐらに生きているワケで、そろそろもう自暴自棄もイイところとなってきている。
「まあそれも高校にいるうちだけだろう? 高等部卒業したら、どうするつもりなんだろうな?」
「ヤス、何か聞いているか?」
「さぁな。一年以上後のことなんて、考えていないと思うけど?」
「まあ会長だったら、どこにでも行けるし、何にでもなれるだろうな」
「そうだな。心配するだけ損かも」
そう言いつつも、クラスメート達の会話は光雅のことばかり。
オレはすでにクセになっているため息を、また吐いてしまった。
やがて担任が来て、ホームルーム開始。そして授業もはじまる。耳では授業を受けながら、思考は光雅のことに集中していた。
光雅との出会いは十年前。両親がアパレル関係で働いていたのだが、十年前、めでたく自立することが決まった。
そしてあのマンションへ引っ越してきた。仕事が軌道に乗ったおかげで、安アパートから高級マンションへ引っ越してこれたんだが、それを喜んだのも一ヶ月だけだった。
隣の部屋に住む真宮光雅は、当時からカリスマ性を発揮していた。
ウチの両親に面倒を見てくれと頼まれた光雅は、本当に世話をしてくれた。…実の両親以上に。おかげで今では部屋の合鍵も渡し、空き部屋には光雅専用の部屋まであるぐらいだ。
オレの両親は光雅の才能を褒めた。そして愛してもいた。
しっかりした性格だから、オレのことを安心して預けていられると言っていたが…本当は光雅のような子供が欲しかったのではないかと、何度も夜中一人で思っては、声を押し殺して泣いた。
オレが何をしても褒めてはくれず、それどころか光雅と比べては、アイツのことを褒めちぎっていた。
それはウチの外でも同じで、学校でも近所でも光雅は褒められて、愛される存在だった。
オレが小学一年にして、悟ってしまったのは言うまでもないこと。
両親どころか友達や、初恋の女の子まで関心は光雅に向かう。
落ち込む時がほとんどだが、僅かに開放される時もある。
一つの歳の差がこういう時、とてもありがたかった。一学年違うだけで、随分助けられた。
きっと同級生だったら…耐えられなかった。あんな出来たヤツが幼馴染だったら、オレはとうに逃げ出しただろう。
オレだって頑張ってきた。器用じゃない分、努力でカバーしてきた。けれど…それでも天才には敵わない。
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