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「ああ…。この十年で、結構変わってしまいましたね。雅夜」
「お前の方が、変わっただろう?」
「そうですか?」
 ハーフの恐ろしいところは、成長が凄まじいところだと思う。
 高校時代はまだ少年っぽさが残っていたのに、今では一人の男になってしまったんだから。
 …しかもフェロモン倍増で。
「雅夜、愛していますよ。もう二度と、私の目の前から消えないでくださいね?」
「ああ」
 利人はメガネをサイドテーブルに置くと、ゆっくりオレにかぶさってきた。
 十年ぶりに重なる唇。
 少し冷えていて、それでいて口の中から甘さが広がる。
「んっ…」
 懐かしい感触に思わず手を伸ばし、利人の背中に回した。
「んんっ…雅夜…、愛してますよ」
 何度も角度を変え、弾むようにキスをしてくる。
 自然と口が開き、スルッと利人の舌がもぐりこんでくる。
「んあっ…!」
 甘い痺れが腰にくる。
 久し振りに味わう利人の味は、ハチミツよりも甘くて、蕩けそうになる。
 舌のザラザラした表面や、ヌルヌルした裏に触れるたびに、腰が何度もはね上がる。
「んっ…ちゅっ。利っ…人」
 腰が浮かぶたびに、利人の熱い欲望に触れる。
 オレ自身もすでに熱く硬くなっている。
 すでにお互いの欲望に火が付いてしまっている。
 こうなればもう止められないことを、オレは知っている。
 だからもうガマンせず、利人に強くしがみつく。
 十年前まではつけていなかった利人の香水の匂いに、目が眩む。
 フェロモンと合わせて、とんでもない威力を発しているなぁ。
「ふふっ。久し振りだと、燃えますね」
「十年前に若返った気分になるな」
「十年前はこんなに余裕なんてなかったですよ。あなたがすぐに欲しくて、たまらなかったんですから」
 利人はオレの左手を掴み、薬指に口付ける。
「今度、ジュエリーショップに行きましょう」
「ペアリングでも作るつもりか?」
「いいえ、結婚指輪ですよ」
 …どちらも似たようなものだが、明らかに後者の方が拘束力はあるな。
「あと首輪も作りましょうか?」
「えっ?」
 サッと顔から血の気が引く。
「今度逃げ出したら、首輪で繋いで飼ってあげますよ。一生、ね?」
 満面の笑みで言われても、全身が鳥肌を立つのは止められないっ!
「にっ逃げない! もう二度と逃げないからっ!」
「信じていますよ?」
 頭を何度も縦に振ると、ようやく左手は放された。
 そしてゆっくりと利人の頭がオレの胸へ下りてくる。
「ふぁっ…」
 胸の突起を舌で舐め上げられて、自分でも信じられないほど甘い声がもれた。
「雅夜の喘ぎ声、久し振りに聞くとゾクゾクしますね。それに胸の感触も久し振りだと…」
 言葉を紡ぐよりも、胸の愛撫に集中しだした。
「んんっ、あぁ…!」
 舌では乳首を舐めながら、利人の手はオレの下肢へ伸びる。
 そしてオレの膨れ上がった欲望に触れてきた。
「ちょっ…おいっ!」
 慌ててその手を払おうとしたが、もう片方の手で逆に押え付けられてしまった。
「今更照れることないでしょう? さんざん可愛がってあげたところなんですから」
「いっ言うなっー!」
 確かに高校生時代、利人にさんざん触られたり舐められたり、イジワルされたりした。
 思い出すだけで顔に血が上る。
「良い反応してくれるんで、思わずいじりたくなっちゃうんですよね」
 どういう理屈だっ!
 しかしオレの心の叫びなんか聞いちゃいない利人は、そのままオレのを扱き始める。
「んあっ…」
 すでに利人によって、オレの体は変わってしまった。
 コイツに与えられること全てを喜んでしまう体に…。
 優しい手付きだと感じていると、いきなり強く扱かれ、腰が浮く。
 それと同時に胸の突起を強く吸われ、イキそうになるっ!
「利っ人…! そんな、強くしたら…」
「ああ…すぐにイってしまいますか?」
 ニヤッと笑い、利人は唇も手も放した。
「えっ…?」
 さっきまで快感に溺れていた体が急に解放され、熱が中途半端になる。
「今日は一緒にイキましょうね」
 そう言って利人は上半身を起こし、サイドテーブルに手を伸ばした。
 そして戻ってきた手の中には、小さなビンが握られていた。
 ピンク色の液体が入っていて、ビンには紫の模様が入っている。
 それを眼にした途端、オレはズサッと後ろに引いた。
「おまっ、それっ…!」
 呂律が回らないので、震える手でビンを指さす。
「覚えていましたか。ええ、媚薬入りの香油ですよ」
 ゲッ!
 高校時代、初めての時に使われた。
 外国から取り寄せたという怪しいこの液体は、本当にとんでもない効果を発揮する。
「まっ待て待て! それはもう二度と使わないって言っただろう?」
 初めてのセックスの時に使われ、その効果を自分の体をもって思い知ったオレは、二度と使わないように利人に言った。
 それからは国内で売られている普通の(?)ローションとかジェルとかを使っていたのに!
「今日は久々ですしね。初めての時の気持ちを思い出してほしいんですよ」
 そう言って美しく微笑みながらビンを開けて、中身を手のひらに流す。
 コイツッ! 予想以上に怒っていやがった!
 アレだけオレが拒絶したにも関わらず、コレを持ち出してきた。
 この香油は媚薬成分が強くて、使われるとプライドも何もかもが溶けて、ただ体の快楽だけを求めてしまう。
 香油なだけに滑りが良くて、初めてだったのに痛みはなかった。
 それに媚薬のおかげかせいで、恐怖心も薄れはしたけれど、二度とお眼にはかかりたくない物だったのに!
 身の危険を察して、オレは利人から離れようとした。
「どこへ行くんですか?」
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