ピエロの仮面は剥がれない

寝倉響

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Smile of sadness

無知の恐怖③

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 サイレンを鳴らし赤色灯を点滅させた救急車が、病院がある通りの曲がり角を曲がった。そのまま救急車はゆっくりと徐行しながら市立病院へと入っていった。


 ドタッ

 博史は病院へ行く道中、病院への近道である人通りの少ない路地を走っていた。街灯の少ないその通りを走っていると、突然何かにぶつかりそのままその衝撃で後ろに倒れた。
博史が目を開けると、目の前には濃紫色のスーツを来た男の人の後ろ姿があった。

 博史はその時にようやく気づいた。街灯の群がっていた虫が空中で停止していることに。よく見ると切れかかっているため、いつもだったら点滅している街灯の灯りが今日は点滅していないことに気付いた。自分以外の時間が止まっていたのだ。

『あら~ごめんなさいね』
 少し高いオカマ調の声でそう言うと、その男は博史の方へ振り返った。その濃紫色のスーツを着た男は、顔に七福神の恵比須の仮面を被っていた。体型は普通で、身長175cm前後と思われた。

 その恵比須の仮面を被った男は尻餅をついた博史の顔を見下ろすとこう言った。

『森君は、死んじゃったみたいよ』

「そんな……嘘だ!!」
 博史の目には自然と涙が浮かんできた。

『これを見なさい』
 そう言うと、恵比須は胸ポケットから見たことのない、真っ黒いスマートフォンを取り出すと、その画面を博史に見せた。
その画面には、白い布が顔に置かれて、台の上で静かに寝ている子供がいた。


『ほ~らね。私は死神だから森君が死んだのは間違いないわ』

「………そんな」

『あなたが殺したのよね? 私、見てたのよ。ずっと!!』

(森君が死んだ……僕が殺してしまった)

『あのね、私ね……実は森君を救う方法知ってるの。もし救いたいのなら私の手を握って』

 そう言うと、恵比須は博史の方に白い手袋を着けた右手を差し出した。

 博史は今更ながら自分のしてしまった事の重大さに気付いた。博史は自分の右手を見つめた。この手で森君を殺してしまった。でもこの右手で目の前にいる恵比寿の仮面を被った男の手を握るだけで森君が助かる。博史は初めて人を殴った右手で、恵比寿の手を握った。 すると、その瞬間にめまいがして一瞬で気を失った。

 目が覚めると、見渡す限り真っ暗な部屋にいた。目の前には、先ほどの恵比須が立っている。

『あなたにはね、これからガチャガチャをしてほしいの。ガチャガチャをしてね。もし、一番レア度が高いのが出たら。森君を甦らせてあげるわ』

 すると、大きな音が鳴り、目の前にいきなりショッピングモールなどに置いてあるガチャガチャの機械のようなものが現れた。その大きさは150cmほどで普通にショッピングモールなどで見かけるガチャガチャとは大きさの面で遥かに違っていた。そして、透明なカプセルケースの中には黒いカプセルが何個も入っていた。

「このカプセルの中にはなにが入っているの……?」
 博史にはその真っ黒いカプセルがとても不気味に思えた。

『このカプセルの中身はね。人間よ。一番強い人間を出せばいいの。あとねこのガチャガチャは特別なコインじゃないと出来ないの』
 そう言った恵比寿はズボンのポケットに入っているコインをジャラジャラと動かした。

「特別なコイン?」

『そう!!この紙にサインしてそしたら特別なコインを渡すわ』
 恵比寿はそう言うと、スーツのポケットから折りたたまれた紙を取り出した。その紙には子供の博史には難しく感じるような言葉がたくさん書いてあった。
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