ピエロの仮面は剥がれない

寝倉響

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Treasure every meeting, for it will never recur

純粋無垢な ④

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 天宮治郎が亡くなったというニュースは日本中を駆け巡った。日本を代表する大企業の社長なのだから当たり前なのかもしれない。連日そのニュースは新聞やニュースアプリ、テレビなどで伝えられた。
 その影響で株式会社AMAMIYAの株価は急激に下落してしまい、天宮治郎のカリスマ性を浮き彫りにした。

 しかしそのニュース以上に世間を驚かせたのは天宮治郎の遺産の行方だった。
 彼の遺産のほとんどは臓器移植ネットワークや骨髄バンク、看護協会などへ寄付された。
 金の亡者として名を馳せていた天宮治郎からは考えられないことだった。当然、彼の遺産を狙っていた人間達は落胆するとともに失望した。

 しかしその結果、臓器移植ネットワークや骨髄バンクなどは宣伝などの広報活動などを積極的に行えるようになった。
看護協会も未来の看護師を支援するための支援金として天宮治郎の遺産を当て、医療に貢献した。

 また天宮治郎は死ぬ前に臓器提供の意思表示カードを記入していた。天宮治郎の肺や腎臓は移植を待つ患者に移植され、彼は人の命までも救ったのだ。



 また彼の遺産の一部は幼くして亡くなった少女の家族に行き渡ったと言う話が流れていた。
 天宮治郎の墓に訪れる人間は少なかった。だがその少女の両親は娘の写真を持って彼の墓へと毎年訪れているという。
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