架空世界っぽく響く名付け(ネーミング)を考える〜「それっぽく」ないと、私たちは世界や物語にうまく入りこめない〜

未谷呉時

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1.「それっぽい名付け」総論

「それっぽい」=架空世界に引き込んでくれる、ネーミングの条件とは……

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「それっぽい」=読み手を(だけでなく書き手をも)、架空世界に連れて行ってくれる名付けの条件というものを、考えていきましょう。
次章で実践的に名付けを行っていきますが、その導入的な内容です。
ひとまず、
「『中世ヨーロッパ風ファンタジー世界』での人名(キャラクター名)名付け」
にしぼって、考察してみます。


前提 「カタカナの文字列」であること

勇者よしひこ
勇者ヨシヒコ

日本人男性の名前が想起される響きであってすら、ひらがなとカタカナでは印象が変わる。
「よしひこ」だと、「漢字のふりがな」が直接連想される。
「ヨシヒコ」だと、日本名の「よしひこ」と名付けなのかな?と思う余地がある。
現実世界の、例えばマダガスカルにも、「ヨシヒコという名付けがある」みたいな妄想がありうる(その場合、脳内の「ヨシヒコ」発音まで、なんだか非日本的な妄想音声にて再生される)。

それぞれの感性や、世界設定は自由です、というのが大前提としてあります!
例えば、どのゲームをやるにでも、その主人公(勇者など)に、
ひらがなで「けんいち」と(自分の?)名前を付けるよという方がいるとして。
そのことが即、
「ファンタジー的妄想力の(素養の)足りない人だなぁ。」
と言い切ることはできないし、するべきではない。
この場合、現実を架空世界に持ち込んでいる妄想や自己内設定をして遊んでいる、
「異世界転生というジャンルがこの世に爆誕する前の時代から既に、
。」
と、内心思いながら架空世界を楽しんでおられる方も、きっといらっしゃるハズ。
そう確信しています。


その1 (NG1)既存の有名架空作品での人名まんまは、避ける
(ただし、応用編あり)

「主人公リンクは……」
「ゼルダ姫は……」
「大魔王ガノンは……」

という表現が、「ゼルダの伝説シリーズ」以外、別の創作表現に出てきたら、
「……えっ?」
って、違和感ありませんか。

地名でも、同様ですね。
「ハイラルの地では……」
「アレフガルド大陸を舞台に……」
「んー、前者はゼルダ、後者はドラクエの、2次創作ものかな?」
と、受け手の皆さんに思われてしまうでしょう。

その名が、あまりにもポピュラーな作品と結びついてしまっているのなら……
いくら気に入ったとしても。
自らの創作世界にジャストフィットだとしても。
残念ですが、あきらめるべきです。

「えっ」の違和感は、読者を架空世界へ引き込む、あちら側へ連れていく、妨げになるからです。

ファンタジー好き、ゲーム好きとして生きているとしても、超絶マニアでもない限り、これまで世に問われた創作物、そこに出てくる主要登場人物、全ての知識を有する人はいません。
国内だけじゃなく、海外作品もカバーする、しかも非ファンタジーも目配せするとなれば、まず、不可能でしょう。

こういうときは、文明の利器である「検索」に頼るのがいいでしょう。

いい名称が思い浮かんだら、検索して、先行作品群との「かぶり」がないかを必ず調べる。
架空世界創作者の、現代的なマナーというか、必須の行為と言えそうです。

応用テクニックとして、
「既存の有名キャラクター名を、あえてそのまま人名として使い、イメージを直接的に連想させる」
(例 私が別口で書いている小説の主人公は、あえて「トンヌラ」にしています。
ドラゴンクエスト2のサマルトリアの王子名です。)

「既存の有名キャラクター名を、地名など別の概念への名付けにいただき、イメージを間接的に連想させる」
(例 ガノン大陸(なんか不穏っぽい)、城塞都市ゼルダ(華やかそう))


その2 (NG2)既存の現実世界での人名まんまは、避ける
(ただし、応用編あり)

「主人公ブッダは……」
「主人公ヒトラーは……」
「主人公ジャスティン・ビーバーは……」
どうですか。違和感どころか、ツッコミたくなりませんか。
「有名宗教家やーん」
「有名独裁者やーん」
「有名芸能人やーん」
はい、そうですね。直接的に連想してしまいますね。やめとくのが無難でしょう。

応用テクニックとして、
「あまりにも有名」あるいは「あまりにも強烈なイメージがある」ではないことを前提に、
実在の人物名を、取り込める可能性はあります。
「実在する(した)固有の有名人名と結びついていないこと」、
「『わかる人にはわかる』ぐらいの有名さあるいはそれ以下であること」
が大事。
「ジュリア姫は……」
(多くいる同名の有名人、あるいは英語圏での女性への一般的名付けでもある)
「魔道士スールシャールは……」(元有名サッカー選手の実名)
「タンノイの村」(有名オーディオメーカーのブランド名)


その3 理想は、「これまで耳にしたことがなく」「響きが良い」し、「違和感も受けない」こと

「新しい葡萄酒は、新しい皮袋に」
という、イエス・キリストの言葉があります。
(ちなみに、筆者はキリスト教徒ではありませんが、聖書の言葉やエピソードは
ファンタジーを構想する上でも面白く読めるなぁと思っています。)

「新しい内容には、新しい形式が必要だ」の意味だと解釈されています。

これをもじって言うならば
「新しい名前の響きは、新しい架空世界に」
なのかなと。

新しく、自分オリジナルな架空世界を立ち上げたいのなら、やはり自分オリジナルな名付けをしたい。
著作権上の問題も、イメージ被りデメリット問題もありますが、何より、
「書いている自分自身が、架空世界という未知の地へ赴き、
100%新しい存在であるキャラクターたちに対面して、描写するために深く理解したい」から、そう思うのではないかなーと。

「これまで、既存作品や現実世界で、耳にしたことがない。」

「脳内で発音したときに、響きが良い。」

「『ん?(過去にどっかであったよね)(発音がアレだね)』という違和感も受けない。」

できるなら、架空世界の創作者たちは、それぞれの世界でこれらの条件を目指したいところです。
実際、こうして見える化や定義はしてこなかったけれど、
「そうしていたよ、目指しているよ」
という方はきっとおられるはずです。
次章ではその方法論、「名付け実践編」として、考えていきたいと思います。
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