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第三章 前節 午後
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「僕たちの部屋ってここだっけ?」
「うん、そうだよ」
ギィと扉を開き、机の中に本をしまう。
「午後何やるのかな」
「さぁ? 少なくとも僕には分からない」
「だよね……」
うーん、この沈黙が気まずい。何を喋ればいいだろうか……。
「ねね、白露」
「ん?」
「僕、もう一度言うよ? 僕は白露のこと好きだから」
……沈黙が気まずいと思っていたけどこの話題は求めていなかった。
どう返答すればいいか分からず、ただ黙っていた。
「んー……。じゃあ僕は白露が僕のこと好きって思ってくれるまで言い続けるね」
ニカッと白い歯を見せると先にホールへ走って行ってしまった。
「あっ、ちょっ、待ってよ!」
ポカーンとしていた俺は我に返るとそう叫んで蒼の後をついていった。
»†«
「おう、遅かったな。待ちくたびれたぞ」
「遅くて悪かったね」
「よし、午後は運動も兼ねた実技型魔法をするための下準備をするぞ」
リズルさんは席に座ると、俺たちに席に座るよう促した。
「実技型魔法って?」
「あぁ、それは魔法を実際に行うことだ。……他にも種類があってな、知識修得型魔法がある。この筆記型魔法は、魔法の特性や相性、歴史などを学ぶんだ」
「あぁー、面倒臭そうなやつね。てかそんなの学んでどうするの?」
呆れると、口の中にあるものを飲み込み、口を開いた。
「特性や相性はその魔法の最大限の力を引き出すために学ぶんだぞ。今は少ないが、昔はそこら辺に鳥型とか竜型の魔物がいたから魔法の特性や相性を学ぶのは大事だった」
「ふーん、その魔物ってのは地上とか地下にもいるもんなの?」
「いるぞ。お前らが今まで遭遇しなかったのは街の中だからだ。街は強力な壁によって守られているからそれを破れるくらいの力の魔物しか入れない。まぁ今となってはそのような強い奴は滅多にいないがな」
すると、蒼がフォークを置いて首を傾げた。
「僕たちは街と街を行き来してるけど魔物にあったことはないし、壁はないよ?」
「それはな、地下は光に弱い奴ばっかりだからだよ。てか弱い奴しかいない。だから道を光で照らしさえすれば壁は必要ない」
「へー」
納得したように頷くとまた食べ始めた。
(てか魔物自体現代にいること知らなかったなぁ、神話には出てくるけど実際には見たことなかったからね)
»†«
午後はまずリズルさんの部屋に連れて行かれた。
「まず、実技型魔法について説明しよう。これは天使が扱う魔法で、本来人間は扱うことはできないがあるものを取得すれば扱える」
「あるものって?」
「いやだからそれを今から説明するんだ。大事だからよく聞いとけよ、特に蒼」
リズルさんがジロリと蒼を睨むと、何故か蒼は後ろを向いた。
はぁ、と溜め息をつく。
「このあるものとは、蒼穹城から結構離れた浄瑠璃楽園に生息する植物を使った薬だ」
「薬って聞くだけでヤバいもの想像しちゃうんだけど」
「いや、大麻とかの麻薬ではないから安心しろ。てかそんなものだったら凄いことになってる。……話が逸れてしまったな。で、作った薬を毎日一口飲む」
「ホントにそれ大丈夫そ?」
「大丈夫に決まってるだろ、実際に私の親父がやってたからな」
「そっかぁ」
胡散臭そうに言うと、俯いて「飲みたくないなぁ」とぼやいていた。
「で、それを今から取りに行くの?」
「なわけないだろ。今のお前らには体力的にキツすぎる。だから今日は魔力測定と体力作りになる」
「くうぅぅーっ、絶対ダルいやつじゃん。やだぁ」
「まっ頑張ろうぜ」
「うぅー」
»†«
「魔力測定器探してくる」と言ってリズルさんが倉庫に入ってから数十分後、埃まみれになって出てきた。
「大丈夫?」
「……掃除してなかったせいで想像以上に埃があった。最悪だ」
「はぁ……」
掃除をしなかったリズルさん達が悪いとも言えるし、でも出してもらったのにそんなことを言うのもどうかと思ったため、何も言わないでおいた。(曖昧な返事はしたが)
「じゃ、魔力測定するか」
ぽんぽんと魔力測定器の埃を払うとゴホンと咳をした。
「まず、息を大きく吸ったらこの袋の中に吐いてくれ。で、中に吐き出した息を出さないように測定器を入れてボタンを押す。これで完了だ」
「オッケー。……まず白露からやってくれない? 理解はちゃんとしたけど自信ないんだよね」
こういうの大抵蒼からやること多いんだよなぁと頭の片隅で思いながらも、「いいよ」と返事をした。
リズルさんの言ったことを思い出しながらやっていく。
「終わったよ」
測定器を差し出す。受け取ると、
「ん、お疲れ様」
と言った。
「白露はだいたい……43だな」
「平均はどれくらいなの?」
しゃがんでいるリズルさんにあわせて俺もしゃがむ。
「お前らと同じくらいの年の天使はおよそ50。人間だと27」
「じゃあ天使より少し低いぐらい?」
「そうなるな。次、蒼やれ」
リズルさんは測定器と、俺がさっき使った袋を渡す。
「あれ、このまま使っていいの?」
「もう一個持ってくるのを忘れてな……。スマン、そのまま使ってくれ」
リズルさんの言葉を聞き、ハッとする。
(もしや蒼これ狙って俺に最初にやらせた……? 確実に有り得る気がする)
ちらりとリズルさんを盗み見ると、こちらを見てニヤニヤと笑っていた。
(リズルさんもあっち側だったか。クソ、気付くのが遅すぎた)
「はい、リズルさん測定できたよー」
「おう」
俺が色々と考えているうちに終わっていたようだ。
「蒼は……45か」
「イエーイ! 僕白露に勝ったぁ」
「2違いだけどな」
蒼のドヤ顔が正直ムカつくが事実なので仕方がない、我慢だ。
「うん、そうだよ」
ギィと扉を開き、机の中に本をしまう。
「午後何やるのかな」
「さぁ? 少なくとも僕には分からない」
「だよね……」
うーん、この沈黙が気まずい。何を喋ればいいだろうか……。
「ねね、白露」
「ん?」
「僕、もう一度言うよ? 僕は白露のこと好きだから」
……沈黙が気まずいと思っていたけどこの話題は求めていなかった。
どう返答すればいいか分からず、ただ黙っていた。
「んー……。じゃあ僕は白露が僕のこと好きって思ってくれるまで言い続けるね」
ニカッと白い歯を見せると先にホールへ走って行ってしまった。
「あっ、ちょっ、待ってよ!」
ポカーンとしていた俺は我に返るとそう叫んで蒼の後をついていった。
»†«
「おう、遅かったな。待ちくたびれたぞ」
「遅くて悪かったね」
「よし、午後は運動も兼ねた実技型魔法をするための下準備をするぞ」
リズルさんは席に座ると、俺たちに席に座るよう促した。
「実技型魔法って?」
「あぁ、それは魔法を実際に行うことだ。……他にも種類があってな、知識修得型魔法がある。この筆記型魔法は、魔法の特性や相性、歴史などを学ぶんだ」
「あぁー、面倒臭そうなやつね。てかそんなの学んでどうするの?」
呆れると、口の中にあるものを飲み込み、口を開いた。
「特性や相性はその魔法の最大限の力を引き出すために学ぶんだぞ。今は少ないが、昔はそこら辺に鳥型とか竜型の魔物がいたから魔法の特性や相性を学ぶのは大事だった」
「ふーん、その魔物ってのは地上とか地下にもいるもんなの?」
「いるぞ。お前らが今まで遭遇しなかったのは街の中だからだ。街は強力な壁によって守られているからそれを破れるくらいの力の魔物しか入れない。まぁ今となってはそのような強い奴は滅多にいないがな」
すると、蒼がフォークを置いて首を傾げた。
「僕たちは街と街を行き来してるけど魔物にあったことはないし、壁はないよ?」
「それはな、地下は光に弱い奴ばっかりだからだよ。てか弱い奴しかいない。だから道を光で照らしさえすれば壁は必要ない」
「へー」
納得したように頷くとまた食べ始めた。
(てか魔物自体現代にいること知らなかったなぁ、神話には出てくるけど実際には見たことなかったからね)
»†«
午後はまずリズルさんの部屋に連れて行かれた。
「まず、実技型魔法について説明しよう。これは天使が扱う魔法で、本来人間は扱うことはできないがあるものを取得すれば扱える」
「あるものって?」
「いやだからそれを今から説明するんだ。大事だからよく聞いとけよ、特に蒼」
リズルさんがジロリと蒼を睨むと、何故か蒼は後ろを向いた。
はぁ、と溜め息をつく。
「このあるものとは、蒼穹城から結構離れた浄瑠璃楽園に生息する植物を使った薬だ」
「薬って聞くだけでヤバいもの想像しちゃうんだけど」
「いや、大麻とかの麻薬ではないから安心しろ。てかそんなものだったら凄いことになってる。……話が逸れてしまったな。で、作った薬を毎日一口飲む」
「ホントにそれ大丈夫そ?」
「大丈夫に決まってるだろ、実際に私の親父がやってたからな」
「そっかぁ」
胡散臭そうに言うと、俯いて「飲みたくないなぁ」とぼやいていた。
「で、それを今から取りに行くの?」
「なわけないだろ。今のお前らには体力的にキツすぎる。だから今日は魔力測定と体力作りになる」
「くうぅぅーっ、絶対ダルいやつじゃん。やだぁ」
「まっ頑張ろうぜ」
「うぅー」
»†«
「魔力測定器探してくる」と言ってリズルさんが倉庫に入ってから数十分後、埃まみれになって出てきた。
「大丈夫?」
「……掃除してなかったせいで想像以上に埃があった。最悪だ」
「はぁ……」
掃除をしなかったリズルさん達が悪いとも言えるし、でも出してもらったのにそんなことを言うのもどうかと思ったため、何も言わないでおいた。(曖昧な返事はしたが)
「じゃ、魔力測定するか」
ぽんぽんと魔力測定器の埃を払うとゴホンと咳をした。
「まず、息を大きく吸ったらこの袋の中に吐いてくれ。で、中に吐き出した息を出さないように測定器を入れてボタンを押す。これで完了だ」
「オッケー。……まず白露からやってくれない? 理解はちゃんとしたけど自信ないんだよね」
こういうの大抵蒼からやること多いんだよなぁと頭の片隅で思いながらも、「いいよ」と返事をした。
リズルさんの言ったことを思い出しながらやっていく。
「終わったよ」
測定器を差し出す。受け取ると、
「ん、お疲れ様」
と言った。
「白露はだいたい……43だな」
「平均はどれくらいなの?」
しゃがんでいるリズルさんにあわせて俺もしゃがむ。
「お前らと同じくらいの年の天使はおよそ50。人間だと27」
「じゃあ天使より少し低いぐらい?」
「そうなるな。次、蒼やれ」
リズルさんは測定器と、俺がさっき使った袋を渡す。
「あれ、このまま使っていいの?」
「もう一個持ってくるのを忘れてな……。スマン、そのまま使ってくれ」
リズルさんの言葉を聞き、ハッとする。
(もしや蒼これ狙って俺に最初にやらせた……? 確実に有り得る気がする)
ちらりとリズルさんを盗み見ると、こちらを見てニヤニヤと笑っていた。
(リズルさんもあっち側だったか。クソ、気付くのが遅すぎた)
「はい、リズルさん測定できたよー」
「おう」
俺が色々と考えているうちに終わっていたようだ。
「蒼は……45か」
「イエーイ! 僕白露に勝ったぁ」
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蒼のドヤ顔が正直ムカつくが事実なので仕方がない、我慢だ。
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