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第六章 別の手段
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「疲れたよ……」
俺たちは家の中に入って休憩をしていた。
最初は無断で入っても大丈夫かと思っていたがどうやらここに来た者のための休憩所らしい。
「リズルさん体力ないのに休憩せずにぶっ続けに探してるよね……」
蒼の言う通り、リズルさんはあれからこっち側を探しているのだ。
「でも流石に心配になってきたかも」
「確かに。どこかで倒れていたら大変だ」
そういうことで休憩を終えた。
扉を開け、外へ出る。
ふと、左の方へ目を向ける。
「リズルさん!?」
「んー……どした?」
眠たそうに瞼を開けると不満そうに一言、そう放った。
「いやさ、だってそこで寝てたら誰だって心配しない?」
「そうか?」
「そうだけど」
「お前らは心配性だな」
呆れたように溜め息を吐く。でもその顔はどこか嬉しそうだった。
「植物の方はどう?」
「……全くと言っていいほどないな」
「そうなんだ」
俺もそこにしゃがむ。
「はぁ、どうしたものか……」
蒼も座り込み、黙っていた。
「よし、最終手段を使うか」
「……?」
リズルさんはすぅーと大きく息を吸い、はぁーと大きく息を吐いた。
「えーとな、浄瑠璃楽園にいらっしゃる女神様の祝福を受けて、魔法が使えるようになる……という方法だ。成功率は低いが」
「なるほど」
「で、その女神様を呼ぶには夜になるまで待って、で、焚き火を囲むように輪になって呼ぶための言葉を言うんだ」
「ふむふむ……。ん? 今日やるの?」
「あぁ。そうだが?」
「えーっじゃあ覚えなきゃじゃん」
「そうそう。頑張れよ」
「うぅ……」
俺と蒼は、リズルさんから言われた言葉を何度も、日が暮れるまで復唱した。
»†«
「……日が暮れてきたな。そろそろ始めるか」
「そうだね」
俺たちは近くの木の枝を集め、綺麗に揃えていく。
リズルさんが何やらブツブツ言っていると思っていると、急に手のひらから炎を出した。
「うぉっ!?」
「……びっくりするからあんまり大声は出さないでくれよ」
「ごめん。……それ魔法?」
「あぁ。魔法が使えるようになったらいずれやってもらうぞ」
木の枝に火を付け、焚き火を作る。
「準備は良いか?」
「もちろんだよ」
焚き火を囲んで輪になり、焚き火に向けて手を合わせる。
「『大地を創りし全ての源マラ―シェに、そして、この地を護りし十五の神に祈りを捧ぐ。この世の全ての命に御加護が賜らんことを』」
言い終わり、一息つく。
左側にいるリズルさんに目を向けてみるが、こちらが見ていることには気づいていないらしい。
何もないな、と油断をしていると、急にボッと激しく火が燃えてきた。
(……?)
「ふぅ、お前らはつくづく運のいい奴だな」
俺たちは家の中に入って休憩をしていた。
最初は無断で入っても大丈夫かと思っていたがどうやらここに来た者のための休憩所らしい。
「リズルさん体力ないのに休憩せずにぶっ続けに探してるよね……」
蒼の言う通り、リズルさんはあれからこっち側を探しているのだ。
「でも流石に心配になってきたかも」
「確かに。どこかで倒れていたら大変だ」
そういうことで休憩を終えた。
扉を開け、外へ出る。
ふと、左の方へ目を向ける。
「リズルさん!?」
「んー……どした?」
眠たそうに瞼を開けると不満そうに一言、そう放った。
「いやさ、だってそこで寝てたら誰だって心配しない?」
「そうか?」
「そうだけど」
「お前らは心配性だな」
呆れたように溜め息を吐く。でもその顔はどこか嬉しそうだった。
「植物の方はどう?」
「……全くと言っていいほどないな」
「そうなんだ」
俺もそこにしゃがむ。
「はぁ、どうしたものか……」
蒼も座り込み、黙っていた。
「よし、最終手段を使うか」
「……?」
リズルさんはすぅーと大きく息を吸い、はぁーと大きく息を吐いた。
「えーとな、浄瑠璃楽園にいらっしゃる女神様の祝福を受けて、魔法が使えるようになる……という方法だ。成功率は低いが」
「なるほど」
「で、その女神様を呼ぶには夜になるまで待って、で、焚き火を囲むように輪になって呼ぶための言葉を言うんだ」
「ふむふむ……。ん? 今日やるの?」
「あぁ。そうだが?」
「えーっじゃあ覚えなきゃじゃん」
「そうそう。頑張れよ」
「うぅ……」
俺と蒼は、リズルさんから言われた言葉を何度も、日が暮れるまで復唱した。
»†«
「……日が暮れてきたな。そろそろ始めるか」
「そうだね」
俺たちは近くの木の枝を集め、綺麗に揃えていく。
リズルさんが何やらブツブツ言っていると思っていると、急に手のひらから炎を出した。
「うぉっ!?」
「……びっくりするからあんまり大声は出さないでくれよ」
「ごめん。……それ魔法?」
「あぁ。魔法が使えるようになったらいずれやってもらうぞ」
木の枝に火を付け、焚き火を作る。
「準備は良いか?」
「もちろんだよ」
焚き火を囲んで輪になり、焚き火に向けて手を合わせる。
「『大地を創りし全ての源マラ―シェに、そして、この地を護りし十五の神に祈りを捧ぐ。この世の全ての命に御加護が賜らんことを』」
言い終わり、一息つく。
左側にいるリズルさんに目を向けてみるが、こちらが見ていることには気づいていないらしい。
何もないな、と油断をしていると、急にボッと激しく火が燃えてきた。
(……?)
「ふぅ、お前らはつくづく運のいい奴だな」
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