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第七章 女神様

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 焚き火を見つめていると、火が段々と更に大きくなって人型になった。
 俺は少し怖くなってリズルさんに声をかける。

「もしや女神様?」

「あぁ、そうだ」

 更に火は人型から、協会でよく見かけた女神の像の形へと変わっていった。

《私を呼んだのは貴女達ですか?》

 女神の像が口を開く。

「えぇ、そうでございます」

《……天使ですか。お久しぶりですね。貴女は立派になりましたね》

「そうでしょか。でもそう言ってくださるととても嬉しいです」

《そうですか。……ところで私を呼んだということは何かあるのでしょう?》

「えぇ。この子達に魔法を操る力を授けて欲しいのです」

《……なにやら深い事情があるみたいですね。良いでしょう。やって差し上げます》

「有難きお言葉。……ありがとうございます」

 ペコリと頭を下げる。
 女神の像はニコリと微笑んで手から朗らかな光を作り出す。その光はどこか懐かしさがあるようだった。

(……!)

 光が俺たちを包みこんだ―――………

   »†«

 パチリと目を覚ます。

「ん、起きたか」

「あれ……女神様は?」

 周りを見渡すといつの間にか太陽は昇りかけているし、焚き火の火は消えていた。

「もう終わったぞ」

「意外とすんなりだったね。……てか拒まれることはないの?」

「基本忠告だけだ。その力を持って損するのは女神様自身ではないからな。まぁ時には拒むこともあるけど」

「ふーん」

「じゃあそろそろ帰るか」

「そうだね。……ん?」

 俺はリズルさんの言葉であることを思い出す。

「どうした?」

「ちょっ待って!? 帰りもあの竜に乗るの?!」

「そうだが何か?」

「疲れたのに帰りもかよー、絶対死ぬって」

「頑張れ」

 俺はへたへたとその場に座り込む。

    »†«

「うぉー!! 帰ってきたぞぉ!」

 蒼がガッツポーズをしながらそう叫ぶ。

「よくそんな元気でいられるな……」

「だって魔法が使えるようになったんだよ?! 疲れてなんていられない!」

 コイツはやっぱりポジティブだ。その能天気さを見習いたい。

「はぁ、今日一日は休んどけ。そこらで倒れられたら困るのは私だからな」

「むー」

 がっくりと肩を落とすと俺に抱きついた。

「暑いから離れてくれー」

「やーだね。絶対に離さないよ」

 はぁ、と息を吐く。
 そういえばコイツ俺のこと好きなんだったっけ。

「もー、仕方ないなぁ」

 くっついて離れない蒼を引きずりながら俺はベッドに潜ったのであった。
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