辺境暮らしの付与術士

黄舞

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第3章

第52話

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 激しい攻防が続いていた。
 しかし、得物を持っていないヴァンは、2人の攻撃を受けることが出来ず、避けなければならないため、後手に回っていた。

「これはたまらないね。誰か僕に力を貸してくれる人はいないのかな?」
「ふざけるな! 誰が貴様などに力を貸すか!」

「随分余裕みたいね。直ぐにその減らず口を叩けないようにしてあげるわ」
「むー。私の魔法返してよー」

「2人共! 相手にしちゃだめだぞ」

 カインの言葉に、無言でサラ達は頷いた。
 先程の話では、返事をどんなふうに曲解されて、肯定したように取られるか分かったものではないからだ。

 しかし、ヴァンの顔は明らかに笑みを形どっていた。
 突如、ヴァンの右手には見慣れた素朴な長剣が握られていた。

「な! 私は何も答えていないはずよ!」
「サラ! 私の精霊達がいないわ!」

「ふふふふふ。あーはっはっは! これは可笑しいね。どうやら、僕の能力のカラクリに気付いてるみたいだ。でも残念だったね。きちんと把握していないと、防ぐのは無理だよ」
「くっ! どういうことだ」

「教えてあげるわけないだろう 。ああ。この武器は素晴らしいね。ああ。君は精霊術士なのか。これはいい拾い物をしたね」
「やばい! ルーク! ミュー! 避けろ!!」

 カインが叫んだ瞬間、ルークとミューのいた場所に無数の迅雷が落ちた。
 ララの雷魔法を、ソフィの雷の精霊の力で、増幅させたのだ。

 身体から煙を出しながら、その場に倒れ込む2人、追い打ちをかけるようにそれぞれに水龍が襲いかかる。
 衝撃に2人の身体は吹き飛ばされていた。

「そんな! あんな広範囲の雷魔法なんて私撃てない! 水龍の魔法だって、本来一匹しか撃てない魔法なのに!」
「あーはっはっは。これはいい! 最高だ! 相性が良かったみたいだね。うん?」

 ヴァンは持っていた剣で打ち降ろされた漆黒の剣を受けた。
 ルークが攻撃を仕掛けたのだ。

「ほう。あれを食らって、まだ動けるなんて凄いじゃないか。どれ。そんなに剣が得意なら、こちらもこれで対応してやろう」
「ほざけ!」

 身体の所々に裂傷を負いながらも、ルークは果敢に攻撃を繰り出していた。
 しかし、その尽くが受け切られていた。

「ふむ。この剣の少女は、対人があまり得意じゃないみたいだね。恐らく、普通に戦ったら、負けていただろう。でも、今の僕は君の攻撃の癖を知り尽くしているからね。それにこの武器も素晴らしい出来栄えだ。負ける気がしないね」
「くっ! くそが!」

 更に剣撃の速度を上げて打ち込むが、ヴァンはまるで事前に来る方向が分かっているかのように、全てを受け、または避けた。
 ヴァンも剣を振るい、ルークへの攻撃を繰り出していた。

 素直すぎる剣撃だが、その速度は速い。
 カウンター気味に攻撃を繰り出された剣先が、捌ききれずルークの腹部に当たった。

 瞬間、衝撃音がして、ヴァンとルークは弾き飛ばされていた。
 ルークは、以前カインが試しに作った、精霊魔法の付与された布の片方を、念の為と腰にまきつけていた。

 せっかくなのでとカインはそれに強化魔法も付与し、簡単に切り裂けないようにもしていた。
 ちなみに、ルーク達の装備は、それぞれが宝具で、何らかの効果が既に付与されていたため、カインの付与魔法はかけられなかった。

 今の衝撃は、剣と布、両方に付与された精霊魔法が反発し、発生したものだった。
 いくら強化された布で保護されていたとはいえ、腹部に直接その衝撃を受けたルークは動けなくなっていた。

「リーダー! ごめんね! 私がへましたせいで!」
「う、るせぇ。お前のせいじゃねぇ」

「今のはびっくりしたね。何が起こったんだい? 知識は盗めるけど、こちらが選んだ知識しか盗めないのが、この能力の難点だね。君達は何が起きたか分かっているんだろう?」
「お前に教えることなど何も無い!」

「それにしても、まともに動けそうなのは、残り君だけみたいだけど、どうするんだい? 見た所、戦うのは得意じゃなさそうだけれど」

 カインは無言で前に出た。
 すると、足元に先程ルークが吹き飛ばされた時に手放した、漆黒の剣が落ちていた。

 カインはそれを無造作に拾い上げると、構え、大きく息を吐いた。
 幸いにも、ヴァンはその身体中に塗った化粧のおかげで、カインにも何処にどのような形でいるか、はっきりと認識することが出来た。

 また、ヴァンが持っている剣は、表面に薄くミスリルがコーティングされているから、よりはっきりと、認識することが出来た。
 動きは手に取るように分かる 、カインは集中し、ヴァンの動き出すのを待った。

「へぇ。随分と様になってるじゃないか。実は剣士だったって落ちかい? それでも、さっきの男ほどじゃない。君の動きは分からないけれど、この少女の動きで十分に対応できると思うよ!」

 ヴァンは素早く、間を詰めると、鋭い剣撃を繰り出してきた。
 カインはそれを難なく受け流す。

 ヴァンの今の動きはサラのそれだった。
 もし、ヴァンが2人の関係性に気付き、別の誰かの知識を元に戦ってきたのなら、カインはもっと苦戦していたのかもしれない。

 しかし、カインにとって、サラの動きは、最もよく知る剣士の動きだった。
 村にサラ達が滞在していた期間、毎日受けていた動き。

 その動き通り動くヴァンの攻撃は、カインにとって、最も相手をしやすい攻撃だった。
 先程とは逆に、カインはヴァンの全ての攻撃を受け、または避け、反撃を繰り出していた。

 ヴァンは全く当たらない自身の攻撃に苛立ちながら、なんとかカインの攻撃を受け止めていた。
 ふと、カインがあることに気付く。

 今ヴァンが持っている剣はサラの剣。
 ならば、とカインは呪文を唱えた。

 上段から真下に振り下ろされたヴァンの剣をカインは頭上で受け止めた。
 キンッ。鋭い音がして、ヴァンが持っていた剣は根元から折れていた。
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