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第4章
第67話
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カインは街に戻ってからずっと山の方を視ていた。
予想よりも多くの魔物が集まっていたが、中心にいるグリフォンの群れは、全く意に介さず、蹂躙を続けていた。
恐らくあの群れよりも強力な魔物は、この山には存在しないだろう。
すなわちそれは、カイン達が打つべき相手が、あのグリフォンの群れであることを意味していた。
群れというのが厄介だった。
強力な個体であれば、攻撃を受ける者、攻撃する者と役割を分担でき、安全な方法を取る事が出来るし、何より意識する相手が一つだけと言うのはやりやすい。
しかし、群れではそうはいかない。
全員が攻守を担わなければ行けないし、気を抜けば後ろから攻撃を食らうこともありえる。
サポート役としてのカインの役割も飛躍的に跳ね上がる。
数が多いようでは、瞬間的にかける魔法では間に合わないだろうから、事前にかけておく必要がある。
そうなると、今度は参加する人数が問題になる。
複数人に多種の補助魔法を唱えるためには、効果を弱めるか、時間を短くするしかない。
通常のグリフォンならそれでもいけるかもしれないが、カインの観察では、群れの中央にいる、小さい個体と、常にそれを守るように動いている、3体は別格の強さに見えた。
どうやら魔物寄せの付与魔法をかけたオリハルコンの欠片は、その群れの中心にいるグリフォンが持っているらしい。
行方を追うことが出来るから、有難いことだし、他の魔物はそこを目指して移動するから、近辺の魔物の削減という意味では成功と言えた。
カインは向かってくれているであろうルーク達のことを考え、あのグリフォン達をどうするか作戦を考えていた。
◇
「それではルティ殿。今夜はこの村で一休みですぞ。明日にはドワーフの国に辿り着きますからな。さて、私はいつもの様に英気を養って来ますぞ。ああ。ルティ殿がその気になれば、いつでも御相手差し上げますぞ。はっはっは」
ルティは無言で、自分の部屋へ入ると、そのままベッドに身を委ねた。
ライヤンはいつもの様にルティの部屋に入り、既にベッドの上で丸くなっている。
ルティ達が居る村は、既にドワーフの国の領地内なのだが、それを承知で山から採鉱するために作られた人間の村だった。
ドワーフ達も存在は知っているものの、数で圧倒的に負ける人間と戦争を始める訳にもいかないので、文句はありながらも黙認している。
今頃ジュダールは村の女を抱いているのだろう。
子供ではないルティは、そういう行為についての知識はあるものの、本人には経験がなかった。
出来るならば、最愛の人へ捧げたい。
叶わぬならば、せめて淑女としての貞操は守りたいと考えていた。
ジュダールと過ごすだけで、自分が何か汚れていくような錯覚を感じ、サラに会えるであろう明日を心待ちにしていた。
この嫌な気持ちにさせられる旅も明日で終わり。
そう自分に言い聞かせながら、旅から帰った後の父への苦言を、忘れぬよう、常日頃携帯している執筆道具で、書き連ねようと、ルティはベッドから出ると、机に向かった。
一方、その頃ジュダールは自分の日々の楽しみを他人に邪魔された事を知り、憤慨していた。
「一人も娘がいないとはどういうことですぞ?! いくら小さい村とはいえ、一人もいないなんてことはありえないですぞ! いいから今すぐここに連れてくるのですぞ!」
「へぃ。旦那様。本当に今全員が出払ってまして。へぃ」
「それは一体どういうことですぞ? こんな辺鄙な所に、私より重要な客がいるとでも言うのですか?」
「へぃ。普段はこんな事ないんですが。旦那様。なんでも、随分な魔物を狩るとかで。凄腕の冒険者様達が大勢いらっしゃいまして。へぃ」
「なに? 冒険者ですと? あんな堕落した人種に私の楽しみを奪われたというのですぞ? 主人、そもそもその冒険者どもは何を狩りに集まっているのですぞ?」
「へぃ。なんでも、グリフォンクイーンが出たとか。わっしもよく分からないんですが、なんでも、随分な薬の原料になるとか言っとりました。へぃ」
「グリフォンクイーンですと? それは聞き捨てならないですぞ。主人、その冒険者達は今どこにいるのですか?」
「へぃ。この村には一つしかないんですが、西の方にある酒場で騒いでおります。女達も皆そこへ。へぃ」
ジュダールは店を後にして、主人が伝えた酒場まで向かった。
扉を開けるとそこには、馬鹿騒ぎを絵に書いたような喧騒が広っがっていた。
ジュダールは鼻を摘みながら、眉根をひそめて冒険者達の方へ歩いていく。
入口近くにいた冒険者がその様子に気付き、ジュダールの方を向く。腰の上には半裸の女性が乗ったままだ。
「なんだてめぇは。今ここは貸切だ。酒が飲みたいなら明日の朝にでも来るんだな」
「全く冒険者と言うのは、救いようのないクズですな。このような悪魔の飲み物を有難がって飲むなどと。臭くて鼻が曲がりそうですぞ」
相変わらず本人には全く悪気は無いのだが、ここに居る冒険者全てを敵に回す発言は、当然看過されず、何人かの冒険者達は脇に置いた得物を手に持ち、ジュダールを威圧し始める。
ちなみに、ジュダールは酒が全く飲めず、一度だけ入隊の祝いの席で、上官から勧められて飲んだ際、意識を失い、それを今でも話の種にされていた。
「ふむ。まぁ、頼りなげではありますが、この際仕方ないでしょうな。喜びなさい。グリフォンクイーンを討伐する指揮は私、ジュダールがやってやりますぞ」
予想よりも多くの魔物が集まっていたが、中心にいるグリフォンの群れは、全く意に介さず、蹂躙を続けていた。
恐らくあの群れよりも強力な魔物は、この山には存在しないだろう。
すなわちそれは、カイン達が打つべき相手が、あのグリフォンの群れであることを意味していた。
群れというのが厄介だった。
強力な個体であれば、攻撃を受ける者、攻撃する者と役割を分担でき、安全な方法を取る事が出来るし、何より意識する相手が一つだけと言うのはやりやすい。
しかし、群れではそうはいかない。
全員が攻守を担わなければ行けないし、気を抜けば後ろから攻撃を食らうこともありえる。
サポート役としてのカインの役割も飛躍的に跳ね上がる。
数が多いようでは、瞬間的にかける魔法では間に合わないだろうから、事前にかけておく必要がある。
そうなると、今度は参加する人数が問題になる。
複数人に多種の補助魔法を唱えるためには、効果を弱めるか、時間を短くするしかない。
通常のグリフォンならそれでもいけるかもしれないが、カインの観察では、群れの中央にいる、小さい個体と、常にそれを守るように動いている、3体は別格の強さに見えた。
どうやら魔物寄せの付与魔法をかけたオリハルコンの欠片は、その群れの中心にいるグリフォンが持っているらしい。
行方を追うことが出来るから、有難いことだし、他の魔物はそこを目指して移動するから、近辺の魔物の削減という意味では成功と言えた。
カインは向かってくれているであろうルーク達のことを考え、あのグリフォン達をどうするか作戦を考えていた。
◇
「それではルティ殿。今夜はこの村で一休みですぞ。明日にはドワーフの国に辿り着きますからな。さて、私はいつもの様に英気を養って来ますぞ。ああ。ルティ殿がその気になれば、いつでも御相手差し上げますぞ。はっはっは」
ルティは無言で、自分の部屋へ入ると、そのままベッドに身を委ねた。
ライヤンはいつもの様にルティの部屋に入り、既にベッドの上で丸くなっている。
ルティ達が居る村は、既にドワーフの国の領地内なのだが、それを承知で山から採鉱するために作られた人間の村だった。
ドワーフ達も存在は知っているものの、数で圧倒的に負ける人間と戦争を始める訳にもいかないので、文句はありながらも黙認している。
今頃ジュダールは村の女を抱いているのだろう。
子供ではないルティは、そういう行為についての知識はあるものの、本人には経験がなかった。
出来るならば、最愛の人へ捧げたい。
叶わぬならば、せめて淑女としての貞操は守りたいと考えていた。
ジュダールと過ごすだけで、自分が何か汚れていくような錯覚を感じ、サラに会えるであろう明日を心待ちにしていた。
この嫌な気持ちにさせられる旅も明日で終わり。
そう自分に言い聞かせながら、旅から帰った後の父への苦言を、忘れぬよう、常日頃携帯している執筆道具で、書き連ねようと、ルティはベッドから出ると、机に向かった。
一方、その頃ジュダールは自分の日々の楽しみを他人に邪魔された事を知り、憤慨していた。
「一人も娘がいないとはどういうことですぞ?! いくら小さい村とはいえ、一人もいないなんてことはありえないですぞ! いいから今すぐここに連れてくるのですぞ!」
「へぃ。旦那様。本当に今全員が出払ってまして。へぃ」
「それは一体どういうことですぞ? こんな辺鄙な所に、私より重要な客がいるとでも言うのですか?」
「へぃ。普段はこんな事ないんですが。旦那様。なんでも、随分な魔物を狩るとかで。凄腕の冒険者様達が大勢いらっしゃいまして。へぃ」
「なに? 冒険者ですと? あんな堕落した人種に私の楽しみを奪われたというのですぞ? 主人、そもそもその冒険者どもは何を狩りに集まっているのですぞ?」
「へぃ。なんでも、グリフォンクイーンが出たとか。わっしもよく分からないんですが、なんでも、随分な薬の原料になるとか言っとりました。へぃ」
「グリフォンクイーンですと? それは聞き捨てならないですぞ。主人、その冒険者達は今どこにいるのですか?」
「へぃ。この村には一つしかないんですが、西の方にある酒場で騒いでおります。女達も皆そこへ。へぃ」
ジュダールは店を後にして、主人が伝えた酒場まで向かった。
扉を開けるとそこには、馬鹿騒ぎを絵に書いたような喧騒が広っがっていた。
ジュダールは鼻を摘みながら、眉根をひそめて冒険者達の方へ歩いていく。
入口近くにいた冒険者がその様子に気付き、ジュダールの方を向く。腰の上には半裸の女性が乗ったままだ。
「なんだてめぇは。今ここは貸切だ。酒が飲みたいなら明日の朝にでも来るんだな」
「全く冒険者と言うのは、救いようのないクズですな。このような悪魔の飲み物を有難がって飲むなどと。臭くて鼻が曲がりそうですぞ」
相変わらず本人には全く悪気は無いのだが、ここに居る冒険者全てを敵に回す発言は、当然看過されず、何人かの冒険者達は脇に置いた得物を手に持ち、ジュダールを威圧し始める。
ちなみに、ジュダールは酒が全く飲めず、一度だけ入隊の祝いの席で、上官から勧められて飲んだ際、意識を失い、それを今でも話の種にされていた。
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