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第4章
第68話
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腰の上に女を乗せてた男が、立ち上がり、ジュダールに近付いていく。
手には幅広の剣が抜き身で持たれていた。
「なんだ? てめぇは? 俺の耳がおかしくなってなかったら、てめぇが俺らの指揮をするって聞こえたが?」
「その通りですぞ。光栄に思いなさい。本来ならば、冒険者などという下賎の輩を公国近衛兵たる私が指揮を執るなど、ありえないことですぞ。しかしここは辺境の地。無い物ねだりをする様な無能な将では無いのですぞ」
「てめぇ! さっきからふざけた口抜かしやがって! 恨むんなら、喧嘩を売る相手は選べって教えてくれなかった親を恨むんだな!」
「ふむ。なるほど。しかし、私は慈悲深いから、あなたの親など恨まないのですぞ」
振り下ろそうとした右腕がいつまで経っても降りてこないのに気付き、男は声にならない音を口から漏らす。
周りの冒険者は、一瞬何が起こったか分からずにいたが、ややあって、発せられた男の絶叫にようやく事態を理解する。
男が振り上げた右腕を、ジュダールは目にも止まらぬ速さで、肩口から切り落としたのだ。
ざっくりと切り落とされた肩に手を当てながら、男は絶叫を繰り返している。
仲間が慌てて止血を試みるが、既に大量の血飛沫が上がり、男の顔は蒼白に変色していた。
女達は悲鳴を上げ、店の角に身を固めて震えている。
「待ってくれ。ジュダールさんとか言ったな。俺がここのリーダーだ。ひとまず落ち着いてくれ。お前らもだ! 今のを見たろ! 絶対に手を出すんじゃねぇ!」
「私は先程から落ち着いていますぞ。それで、リーダーとやらが何か用ですかな?」
「なっ! 俺らの指揮を執るって話じゃなかったのかよ。それの答えを言おうってんだ」
「ふむ? 答えなど一つしかないでしょう。まぁ、一応口にしてもらうのも必要ですかな。その答えとやらを聞きましょう」
「くっ。分かった。俺達はあんたに従う。ジュダールさんよ」
「よろしい。まぁ、初めから分かってた答えを聞くのに少々時間がかかりましたな。それと、ジュダール、様、ですぞ。そこを今後間違えないように。ああ、そこの女、私と一緒に来るのですぞ。切りたくもないものを切ってしまったから、今夜は尚更英気を養わなくては」
ジュダールは、何事も無かったかのように、女を一人連れ酒場から出ていった。
残された冒険者達はぶつけようのない怒りを胸に、それぞれがその場にあった机や椅子や壁などに当たった。
◇
「ドワーフの国まであとどれ位? マスター?」
「知るか! ミューにでも聞け!」
「むー。ミューぴょん。ドワーフの国まであとどれ位?」
「そうね。国境を超えるのにあと一日、ドワーフの国の街までもう一日ってところかしら」
「うへー。今夜は野宿かー。野宿はお肌の敵だから、なるべくやりたくないんだけどなー」
「お肌を気にするなら、夜食と夜更かしの方をまずは気にしなさいよ」
「ぎくっ。ミューぴょんなんで知ってるの?!」
「部屋が隣なんだから聞こえてくるのよ。色々とね。夜食に関して言えばルークちゃんもだけどね。咀嚼音が独特だからすぐ分かるのよねー」
「マスターの咀嚼音、なんかこう、シャクシャクシャクって一定だもんね」
「うるせー。飯をろくに食わずに酒ばっか飲んでる大男に言われたくねぇな」
「もぅ、ルークちゃん。私は女だって何度言えば分かってくれるんでしょうね。あ、そうそう。ララ。野宿はしないで済むわよ。国境を超えた辺りに村があるの」
「え? ドワーフの街って一つしか無いんじゃないの?」
「それがね。人間が作った村なのよ。ドワーフに断りもなく、採鉱するために作られた村」
「へー。やっぱり人間って図々しいなー」
三人が軽口を叩いている間、一緒に乗り合わせた他のクランのメンバーはほぼ無口だった。
彼らは緊張していたのだ。これから戦うことのなる敵を想像して。
彼らもそれなりに自分達の実力が高いことは自覚していた。
しかし、目の前にいるこの三人は別格だった。
恐らく、この場にいる九人総出で襲いかかったとしても、地面の砂を舐めることになるのは自分達の方だろうと思えた。
その規格外達がクランレイドをする相手。
マスターであるルークの話によると、マウンテンワームやギガンテスさえも手玉に取るような魔物らしい。
そんな魔物を前に自分達が果たして役に立つのか。
決して仲間を自分の盾にする様な人物では無いことを、クランのメンバーは十分理解しているからこそ、冒険者として尊敬の念さえ覚える三人の足枷とならないか、不安でしょうがないのだ。
ところで、伝令役のミューが妙なことを言っていた。
『作戦は全てルークが考える。戦闘中もルークの指示に従うこと。しかし、カインが発した言葉は、全て従うこと』
カインといえば、ルーク達パーティの幻の四人目、存在が曖昧だったため、陽炎と呼ばれていた男だ。
クランでは、魔術の指導を行ったが、全員に見限られたと聞いている。
そんな得体のしれない男の言う言葉に従えとはどういうことだろう。
そもそも今回のクランレイドはカインの発案らしい。
カイン自体はルーク達に不正のような手段で、Sランクを与えられた男だから、その実力の程はよく分からないが、同行している二人もSランクだったはずだ。
Sランクが三人も居て、倒せない魔物などそうそういない。
クランのメンバー達はカイン達が実は大した実力も無いのに、彼らの手に負えないクエストを受けてしまい、その尻拭いを自分達にさせようとしているのではないかと勘繰り始めた。
そう考えると、そうそう遭遇情報の出ないマウンテンワームやギガンテスが一度に出て、しかもそれを凌駕する魔物が出たなど、眉唾の様な気がしてきた。
しかし、やがてクランのメンバーは知ることとなる。
カインがどういう人物で、何故クーデターから一度も街を離れるのことの無かったルーク達が、彼の手紙一つでこうも素早く冒険に出ることを決断できたのかを。
手には幅広の剣が抜き身で持たれていた。
「なんだ? てめぇは? 俺の耳がおかしくなってなかったら、てめぇが俺らの指揮をするって聞こえたが?」
「その通りですぞ。光栄に思いなさい。本来ならば、冒険者などという下賎の輩を公国近衛兵たる私が指揮を執るなど、ありえないことですぞ。しかしここは辺境の地。無い物ねだりをする様な無能な将では無いのですぞ」
「てめぇ! さっきからふざけた口抜かしやがって! 恨むんなら、喧嘩を売る相手は選べって教えてくれなかった親を恨むんだな!」
「ふむ。なるほど。しかし、私は慈悲深いから、あなたの親など恨まないのですぞ」
振り下ろそうとした右腕がいつまで経っても降りてこないのに気付き、男は声にならない音を口から漏らす。
周りの冒険者は、一瞬何が起こったか分からずにいたが、ややあって、発せられた男の絶叫にようやく事態を理解する。
男が振り上げた右腕を、ジュダールは目にも止まらぬ速さで、肩口から切り落としたのだ。
ざっくりと切り落とされた肩に手を当てながら、男は絶叫を繰り返している。
仲間が慌てて止血を試みるが、既に大量の血飛沫が上がり、男の顔は蒼白に変色していた。
女達は悲鳴を上げ、店の角に身を固めて震えている。
「待ってくれ。ジュダールさんとか言ったな。俺がここのリーダーだ。ひとまず落ち着いてくれ。お前らもだ! 今のを見たろ! 絶対に手を出すんじゃねぇ!」
「私は先程から落ち着いていますぞ。それで、リーダーとやらが何か用ですかな?」
「なっ! 俺らの指揮を執るって話じゃなかったのかよ。それの答えを言おうってんだ」
「ふむ? 答えなど一つしかないでしょう。まぁ、一応口にしてもらうのも必要ですかな。その答えとやらを聞きましょう」
「くっ。分かった。俺達はあんたに従う。ジュダールさんよ」
「よろしい。まぁ、初めから分かってた答えを聞くのに少々時間がかかりましたな。それと、ジュダール、様、ですぞ。そこを今後間違えないように。ああ、そこの女、私と一緒に来るのですぞ。切りたくもないものを切ってしまったから、今夜は尚更英気を養わなくては」
ジュダールは、何事も無かったかのように、女を一人連れ酒場から出ていった。
残された冒険者達はぶつけようのない怒りを胸に、それぞれがその場にあった机や椅子や壁などに当たった。
◇
「ドワーフの国まであとどれ位? マスター?」
「知るか! ミューにでも聞け!」
「むー。ミューぴょん。ドワーフの国まであとどれ位?」
「そうね。国境を超えるのにあと一日、ドワーフの国の街までもう一日ってところかしら」
「うへー。今夜は野宿かー。野宿はお肌の敵だから、なるべくやりたくないんだけどなー」
「お肌を気にするなら、夜食と夜更かしの方をまずは気にしなさいよ」
「ぎくっ。ミューぴょんなんで知ってるの?!」
「部屋が隣なんだから聞こえてくるのよ。色々とね。夜食に関して言えばルークちゃんもだけどね。咀嚼音が独特だからすぐ分かるのよねー」
「マスターの咀嚼音、なんかこう、シャクシャクシャクって一定だもんね」
「うるせー。飯をろくに食わずに酒ばっか飲んでる大男に言われたくねぇな」
「もぅ、ルークちゃん。私は女だって何度言えば分かってくれるんでしょうね。あ、そうそう。ララ。野宿はしないで済むわよ。国境を超えた辺りに村があるの」
「え? ドワーフの街って一つしか無いんじゃないの?」
「それがね。人間が作った村なのよ。ドワーフに断りもなく、採鉱するために作られた村」
「へー。やっぱり人間って図々しいなー」
三人が軽口を叩いている間、一緒に乗り合わせた他のクランのメンバーはほぼ無口だった。
彼らは緊張していたのだ。これから戦うことのなる敵を想像して。
彼らもそれなりに自分達の実力が高いことは自覚していた。
しかし、目の前にいるこの三人は別格だった。
恐らく、この場にいる九人総出で襲いかかったとしても、地面の砂を舐めることになるのは自分達の方だろうと思えた。
その規格外達がクランレイドをする相手。
マスターであるルークの話によると、マウンテンワームやギガンテスさえも手玉に取るような魔物らしい。
そんな魔物を前に自分達が果たして役に立つのか。
決して仲間を自分の盾にする様な人物では無いことを、クランのメンバーは十分理解しているからこそ、冒険者として尊敬の念さえ覚える三人の足枷とならないか、不安でしょうがないのだ。
ところで、伝令役のミューが妙なことを言っていた。
『作戦は全てルークが考える。戦闘中もルークの指示に従うこと。しかし、カインが発した言葉は、全て従うこと』
カインといえば、ルーク達パーティの幻の四人目、存在が曖昧だったため、陽炎と呼ばれていた男だ。
クランでは、魔術の指導を行ったが、全員に見限られたと聞いている。
そんな得体のしれない男の言う言葉に従えとはどういうことだろう。
そもそも今回のクランレイドはカインの発案らしい。
カイン自体はルーク達に不正のような手段で、Sランクを与えられた男だから、その実力の程はよく分からないが、同行している二人もSランクだったはずだ。
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クランのメンバー達はカイン達が実は大した実力も無いのに、彼らの手に負えないクエストを受けてしまい、その尻拭いを自分達にさせようとしているのではないかと勘繰り始めた。
そう考えると、そうそう遭遇情報の出ないマウンテンワームやギガンテスが一度に出て、しかもそれを凌駕する魔物が出たなど、眉唾の様な気がしてきた。
しかし、やがてクランのメンバーは知ることとなる。
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