辺境暮らしの付与術士

黄舞

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第5章

第104話

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「ところでこのグリフォンと意思疎通は難しいと言っていたが、どうやらきちんとできるようになったようだね。どうやったんだ?」

 しばらく空からの眺めを楽しんだ後、アオイはカインにそう聞いた。
 ゼロに乗って空を飛ぶのは正確には二回目だが、初めは景色など見る余裕もなかったため、楽しむのは今回が初めてだろう。

 その問いに少し考えた様子を見せたカインは、少し意地悪そうな顔を見せた後、アオイに向かってこう返した。

『聞こえますか? こうやったんですよ』

 突如頭の中に響いた声に驚き、アオイは声を上げた。
 その勢いで少し身体を傾けてしまったが、カインが咄嗟に支えたため問題なかった。

「なんだ!? 今の。カインさんがやったのか? 頭の中に、こう……直接聞こえてきたが」
「ええ。私も思い付きでやって成功したので嬉しかったですよ。念話って言うんですかね? 詳しい方法は省きますが、頭の中で考えたことを魔力に乗せて相手に送るんです」

 まるで面白いおもちゃを見つけたかのような顔を見せるカインを、アオイは呆れ顔で見返していた。

「まったく……カインさんはどこまでも人を驚かせるのが好きなようだ。もう何があっても驚かないぞ」
「あはははは。すいません。ちょっと自分でも嬉しくなっちゃって」

 二人が念話について話に花を咲かせている間に、ゼロは二人を目的のルシェルシュの街に続く広場へと運んでいた。
 カインは降りると、運び手を呼んでくるまで角の見張りを頼むようゼロに頼んだ。



 その頃ソフィはコハンと共にルシェルシュの街へ向かい歩いていた。
 道中コハンから聞いた限りでは、ララはコハンにとって呼称通り姉であり、また師匠でもあるようだ。

 しかし、ララが魔術師として冒険者となったのに対し、コハンはエルフの集落で錬金術士になったのは訳があるようだ。

「わしはな。魔力の探知や操作などには長けておった。これはたとえ姉様だとしても負けん自信がある。しかし、精霊との相性が悪かったんじゃ」
「精霊との相性?」

「なんじゃ。お主、精霊術士なのにそんなことも知らんのか?」
「ええ? 精霊術士が精霊の属性によって合う合わないがあるってのは知ってるけど……」

「ふむ……お主そもそも魔法がどうやって行使されるか分かっとらんようじゃのう」
「と言うと?」

「いいか? そもそも魔法と精霊の関係じゃが……」

 コハンの話によれば、魔術師などが使ういわゆる攻撃魔法と呼ばれるものは、全て精霊の力の具現化であるという事だった。
 魔術師は魔力と詠唱によって精霊に働きかけ、魔法を発動させる。

 また、ソフィが精霊と言っている形あるもの以外にも、人間には生まれもって精霊を体内に宿しているらしい。
 その精霊の種類によってどの属性の魔法が得意になるか決まるとのことだった。

「姉様などは凄いぞ。ほぼ全ての属性の精霊を身体に宿しておる。つまり不得手な属性がないのじゃ」
「ってことは、ララさんは全属性満遍なく使えるってことなのね。さすが師匠……凄いわ」

「そうじゃ。まぁ、それでも個人の好みや使いやすさでよく使うものそうじゃないものできるじゃろうがの。そういうお主も精霊術士という類まれな才能を持っておろう?」
「珍しいのは分かるけど、凄いことなの?」

 ソフィはコハンの方を向き首を傾げる。
 その様子にコハンは大きくため息をついた。

「じゃから、魔法を使うのは精霊に呼びかけることじゃと言ったじゃろう。精霊術士はそこの繋がりが太く短い。つまりかけた魔力がそのまま精霊に伝わるのじゃ。同じ魔力の持ち主が魔法を使った場合、ただの魔術師よりも精霊術士の方が何倍も威力が高くなる」
「あ……」

 言われて、ソフィは世間一般に言われていた事の間違いに気付く。
 今まで精霊術士は精霊によってその魔法の威力を増幅してもらっていると理解していたが、コハンの説明ではその逆なのだ。

「じゃが、残念なことにわしにはほとんど精霊がおらんかった。なので魔術師を目指そうとしても大成しないと分かっておったのじゃ」
「それでコハンさんは錬金術士に?」

「その通りじゃ。さっき言った精霊と魔法の関係じゃが、実は全ての魔法がそうな訳では無いのじゃ。例えばほれ、筋力をあげる魔法があるじゃろう? ああいうのは精霊は関係ない」
「補助魔法のこと?」

 補助魔法と言って、ソフィは真っ先にカインのことを思い浮かべた。
 カインは攻撃魔法が一切使えないと言っていたが、補助魔法はおそらくこの世の誰にも負けないだろう。

 しかしカインは自分の眷属となったマチのものだけではあるが、精霊魔法は使えたはずだ。
 それはどう説明がつくのだろうか。

「そうじゃな。わしが使うものもそうじゃが、この類の魔法は、術者の魔力をそのまま効果に変換する。精霊との相性も関係ない」
「へー。それにしてもコハンはよくそんなことを知っているのね」

「うむ。これはな。大きな声では言えんが、パイセーという道具を作る者に伝わる話でな。それを知らんことにはパイセーは作れんのじゃよ」
「え!? パイセーってあの魔力を測る?」

 ソフィはカインやサラと訪れた建物での出来事を思い出した。
 あの不思議な透明な板の作り方は確か門外不出だったはずだ。

「そうじゃ。知っておったか。あれを作っておるのは代々エルフの錬金術士じゃぞ」
「そうなの……知らなかったわ。あ! そうこうしているうちに街が見えてきたわよ」
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