117 / 133
第5章
第114話
しおりを挟む
無数の泡沫を伴い海の底へとゆっくりと沈んでいくベヒーモスの角。
それを眺めていたカイン達を襲ったのは、巨大な渦だった。
突如発生した大渦は、船を流れの乗せ翻弄しながら中心へと誘う。
水面が船の高さの何倍も低くなった渦の中心に巨大なとぐろを巻いたような黒い影が見える。
「やばいぞ! 振り飛ばされるな! なんでもいいからしがみつけ!!」
アオイの檄を受ける前にみな近くの柱などに手をかけ、必死に踏ん張っていた。
「お父さん! あの渦の中心にいる生き物なに!! 恐ろしくでかいけど! もしかしなくてもあれって!!」
「ダメだ! 予想通りだがあれも視えない! 既に手遅れだったのかもしれん!」
やがて渦は徐々に収まり、それは長い首を水面から出し中空に掲げた。
その顔の巨大さから想像するに水面から出た部分は身体の極一部だろうが、船の帆先の高さをゆうに超えていた。
海水を滴らせ、一枚一枚が巨大な鱗に覆われた海蛇の様な長い体躯をくねらせながら、船など一口で食い壊せそうな口を開けた。
その口には、噛み殺されたバレーンや亜竜達の残骸が見えた。
「でかい! でかすぎる!! それにしてもあの身体の色はなんだ!? 闇のように真っ黒だ!!」
アオイが叫ぶ。
『シバさん! 一度出来るだけここから逃げてください!!』
カインが念話を飛ばす。
シバはその言葉に全開でオールを動かし、リヴァイアサンから離れるように船首を向けた。
リヴァイアサンが中空に出していた首を勢いよく海面へと打ち付ける。
その衝撃で爆発するような音と共に巨大な波が発生した。
逃げる船を追うような形で波はその高さを変えずに襲ってくる。
魔道具を通してその様子を確認したシバは、あえて船首を少しだけ角度を付け波の方へと向ける。
ちょうど船と波が向き合った瞬間、壁のような海水が船を襲った。
シバは波の流れに逆らわぬよう、徐々に船首を波の進行方向と垂直に変えていく。
船は波に流されながらも船はその海水でできた壁を滑るように登り、やがて勢いよく中空へと放り出された。
「掴まれーーー!!」
船はそのまま海面に大量の水飛沫と共に着水した。
カイン達の身体が掴まった位置を支点に勢いよく跳ねた。
「冗談じゃないわ! どうやって倒せばいいの!?」
波に流されてだいぶ離れてしまったが、その距離でもまるで近くにいるような錯覚を覚えるほど巨大な魔物を見据え、サラが叫ぶ。
あまりに巨大な体躯に有効な攻撃は限られ、そもそも攻撃のために海中に身を投げる訳にも行かない。
剣士のサラにとってはやはり事前に考えていた方法をとるしか無いが、それでもこの魔物を討伐するのは困難を極めるだろう。
しかし吐露した言葉とは裏腹に、サラは強い眼差しを持ってリヴァイアサンを見据えた。
「サラ! 今呼ぶから!!」
ソフィがフーに向かって目的を伝える。
フーが鳴くと上空からゼロが甲板に降り立ち、サラを背に再び空へと舞い上がった。
カインに強化を施された総ミスリル製の長剣を握りしめ、サラは息を一度吐くと自ら喝を入れた。
「行くわよ!!」
船と歩を合わせる様にサラを乗せたゼロはリヴァイアサンへと向かってく。
こちらの存在に気付いている、いや、恐らく先ほど沈めた残りの一本、船に積んだベヒーモスの角の気配を追っているのだろう。
異常とも言えるほど長い身体をくねらせながら、リヴァイアサンも船へと向かってきた。
船はカインの入念にかけた付与魔法により、今までの衝撃を受けても傷一つついていない。
だからといってリヴァイアサンの直接の攻撃に耐えられる保証もないため、これまでもそうだったが、シバの操船術がカイン達の運命を握る。
造船だけでなく船の扱いも一流のシバにまさに身体を預け、カイン達はこれから戦う強大な的に意識を集中した。
『いいか!? 狙うのはリヴァイアサンの背びれだ! 倒す必要は無い。その背びれさえ破壊し消滅できれば俺達の勝利だ』
カインが全員に向けて念話を送る。
ここからは会話をするのさえ難しい。
カインは痛む腕を抑えながら、念話が一方通行しか出来ないのを悔やんだ。
もし相互に意思の疎通が図れれば、これほど有用なものは無いだろう。
「永劫の刻、遥かより遠く、彼方より来る。祖は全き神霊、金色の王よ、汝に願う。我が眼前にあまねく骸を!」
迫り来るリヴァイアサンの脳天目掛けてソフィが最大限に強化された雷を打ち付けた。
カインによる瞬間的な魔力の底上げとオリハルコンに込めた強化、ミスリル自体にかけた永続的な付与。
今出来うる全ての力を込めた電撃は海水に濡れたリヴァイアサンの身体を、その恐ろしく長い尾の先まで駆け抜けた。
その電撃により大量の海水が飛散蒸発し、発生した塩の結晶がキラキラと空中に輝いた。
それを眺めていたカイン達を襲ったのは、巨大な渦だった。
突如発生した大渦は、船を流れの乗せ翻弄しながら中心へと誘う。
水面が船の高さの何倍も低くなった渦の中心に巨大なとぐろを巻いたような黒い影が見える。
「やばいぞ! 振り飛ばされるな! なんでもいいからしがみつけ!!」
アオイの檄を受ける前にみな近くの柱などに手をかけ、必死に踏ん張っていた。
「お父さん! あの渦の中心にいる生き物なに!! 恐ろしくでかいけど! もしかしなくてもあれって!!」
「ダメだ! 予想通りだがあれも視えない! 既に手遅れだったのかもしれん!」
やがて渦は徐々に収まり、それは長い首を水面から出し中空に掲げた。
その顔の巨大さから想像するに水面から出た部分は身体の極一部だろうが、船の帆先の高さをゆうに超えていた。
海水を滴らせ、一枚一枚が巨大な鱗に覆われた海蛇の様な長い体躯をくねらせながら、船など一口で食い壊せそうな口を開けた。
その口には、噛み殺されたバレーンや亜竜達の残骸が見えた。
「でかい! でかすぎる!! それにしてもあの身体の色はなんだ!? 闇のように真っ黒だ!!」
アオイが叫ぶ。
『シバさん! 一度出来るだけここから逃げてください!!』
カインが念話を飛ばす。
シバはその言葉に全開でオールを動かし、リヴァイアサンから離れるように船首を向けた。
リヴァイアサンが中空に出していた首を勢いよく海面へと打ち付ける。
その衝撃で爆発するような音と共に巨大な波が発生した。
逃げる船を追うような形で波はその高さを変えずに襲ってくる。
魔道具を通してその様子を確認したシバは、あえて船首を少しだけ角度を付け波の方へと向ける。
ちょうど船と波が向き合った瞬間、壁のような海水が船を襲った。
シバは波の流れに逆らわぬよう、徐々に船首を波の進行方向と垂直に変えていく。
船は波に流されながらも船はその海水でできた壁を滑るように登り、やがて勢いよく中空へと放り出された。
「掴まれーーー!!」
船はそのまま海面に大量の水飛沫と共に着水した。
カイン達の身体が掴まった位置を支点に勢いよく跳ねた。
「冗談じゃないわ! どうやって倒せばいいの!?」
波に流されてだいぶ離れてしまったが、その距離でもまるで近くにいるような錯覚を覚えるほど巨大な魔物を見据え、サラが叫ぶ。
あまりに巨大な体躯に有効な攻撃は限られ、そもそも攻撃のために海中に身を投げる訳にも行かない。
剣士のサラにとってはやはり事前に考えていた方法をとるしか無いが、それでもこの魔物を討伐するのは困難を極めるだろう。
しかし吐露した言葉とは裏腹に、サラは強い眼差しを持ってリヴァイアサンを見据えた。
「サラ! 今呼ぶから!!」
ソフィがフーに向かって目的を伝える。
フーが鳴くと上空からゼロが甲板に降り立ち、サラを背に再び空へと舞い上がった。
カインに強化を施された総ミスリル製の長剣を握りしめ、サラは息を一度吐くと自ら喝を入れた。
「行くわよ!!」
船と歩を合わせる様にサラを乗せたゼロはリヴァイアサンへと向かってく。
こちらの存在に気付いている、いや、恐らく先ほど沈めた残りの一本、船に積んだベヒーモスの角の気配を追っているのだろう。
異常とも言えるほど長い身体をくねらせながら、リヴァイアサンも船へと向かってきた。
船はカインの入念にかけた付与魔法により、今までの衝撃を受けても傷一つついていない。
だからといってリヴァイアサンの直接の攻撃に耐えられる保証もないため、これまでもそうだったが、シバの操船術がカイン達の運命を握る。
造船だけでなく船の扱いも一流のシバにまさに身体を預け、カイン達はこれから戦う強大な的に意識を集中した。
『いいか!? 狙うのはリヴァイアサンの背びれだ! 倒す必要は無い。その背びれさえ破壊し消滅できれば俺達の勝利だ』
カインが全員に向けて念話を送る。
ここからは会話をするのさえ難しい。
カインは痛む腕を抑えながら、念話が一方通行しか出来ないのを悔やんだ。
もし相互に意思の疎通が図れれば、これほど有用なものは無いだろう。
「永劫の刻、遥かより遠く、彼方より来る。祖は全き神霊、金色の王よ、汝に願う。我が眼前にあまねく骸を!」
迫り来るリヴァイアサンの脳天目掛けてソフィが最大限に強化された雷を打ち付けた。
カインによる瞬間的な魔力の底上げとオリハルコンに込めた強化、ミスリル自体にかけた永続的な付与。
今出来うる全ての力を込めた電撃は海水に濡れたリヴァイアサンの身体を、その恐ろしく長い尾の先まで駆け抜けた。
その電撃により大量の海水が飛散蒸発し、発生した塩の結晶がキラキラと空中に輝いた。
0
あなたにおすすめの小説
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
無能だと追放された「雑用係」のハル、現代の知恵(ライフハック)を駆使したら、呪われた魔王城が聖域化して伝説の賢者と呼ばれ始めた
ユネ
ファンタジー
「君のような無能な掃除係は必要ない!」
勇者パーティーからゴミのように捨てられた雑用係のハル。だが彼女には、前世で培った【家事のプロとしてのライフハック】があった。
移り住んだのは、誰もが恐れる『呪われた魔王城』。しかしハルにとっては、ただの「掃除のしがいがある大型物件」に過ぎなかった!
重曹とクエン酸で呪いを浄化し、アルミホイルで魔物を除け、ジャガイモの皮で伝説の鏡を蘇らせる。
魔法より便利な知恵で、お城はいつの間にか世界一快適な聖域に。
一方、ハルを失った勇者たちは、汚部屋と化した拠点と自らの無知に絶望することになり――。
これは、一人の「掃除好き」が知恵と工夫だけで異世界に革命を起こし、最高のスローライフを手に入れるまでの物語。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
主人公は高みの見物していたい
ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。
※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます
※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる