118 / 133
第5章
第115話
しおりを挟む
リヴァイアサンは耳を塞ぎたくなるほどの声を上げながら、その巨体をよじらせた。
その影響で大小様々な波が引き起こされるが、シバのまさに体の一部として舵を取る船は、巧みにその波を捌いていく。
痺れからすぐに解放されたリヴァイアサンの双眸は、久しく感じたことの無い痛みを与えた一人の少女に向けられる。
その隙を狙ってゼロにまたがったサラが、リヴァイアサンへと近付き、こちらも強度と切れ味を最大限に強化した長剣でその眼球を切り付けた。
再び咆哮しながら首をくねらせるリヴァイアサン。
ゼロはぶつからないよう即座にその場から離れ、次の攻撃のタイミングを探る。
突如リヴァイアサンは頭から海中へと潜った。
しばしの沈黙の後、海中から再び顔を見せたリヴァイアサンは首を高く持ち上げる。
その全てを飲み込みそうなほど大きな口を目いっぱいに開けた。
そこから放たれたのは高圧で吹き出された海水だった。
海水でできた巨大な槍のごとく、それはカイン達の乗る船に向け一直線に伸びた。
辛くも直撃を逃れた船だが、その打ち付けられた海水によって発生した水流によって翻弄される。
カインとソフィがほぼ同時に魔法を唱えた。
カインの付与魔法で強化された帆にソフィの放った風が勢いよく吹き付ける。
船はまるで見えない手に押されるように、乱水流から勢いをつけて抜け出した。
恐らくあのままでは徐々に中心に引き寄せられ、最後は恐ろしい圧力の海水の直撃を受けていただろう。
全ての海水を吐き出したリヴァイアサンは再び海へと潜る。
しばらくして顔を見せると先ほどと同様に口から海水を吐き出した。
先程と違うのは、今度はまるで水弾のように単発で何度も吐き出すところだ。
水弾といってもそれは船ほどの大きさと、先ほどと変わらぬ勢いがある。
船に当たればただでは済まないだろうし、空を旋回するゼロに当たれば一溜りもないだろう。
器用に蛇行しながら海水の弾を避ける船だが、リヴァイアサンにもそれなりの知恵があるらしく、行く手を阻むように連続した弾を吐き出してきた。
とうとう避けきれなくなった弾が上空から迫る。
アオイはコハンから渡された薬品が入った瓶を空中へと投げ付けた。
水弾に当たった瓶は割れ、中に入った粘性の高い液体が海水に混ざる。
瞬間爆発音が聞こえ海水は跡形もなく蒸発した。
船とカイン達に吹き付けたのは熱風のみだった。
「咄嗟に投げたが、話以上にとんでもない威力だな! 錬金術というのも馬鹿にできん!!」
「何を投げたの?」
「よく分からんが、なんでも錬金術では欠かせない『触媒』というものらしい。水の触れるとその水を瞬時に消し去るほどの威力があるのだとか」
アオイはこの日のためにコハンからよく分からないものをいくつか受け取っていたが、今投げたのもその一つだった。
アオイは知らなかったが、運良く薬の量が水弾の海水の量に対して十分以上にあったため問題はなかった。
もし海水の量が多すぎれば、沸騰した熱水の弾を浴びることになり、事態はより悪化していただろう。
「さすがコハンさん! 私の姉弟子なだけあるわね!」
ソフィは嬉しそうに呪文を唱え始める。
何より厄介なのはリヴァイアサンが海に潜ってしまえば、こちらから一切手出しができなくなってしまうことだった。
「青は碧。揺蕩うは水の女王。その身は震え、久遠の時を紡ぐ。我、汝に求むは永久の沈黙!」
詠唱の終わりと共にソフィは舷から海中向かってに身を投げた。
海面に触れる瞬間、魔法を発動させた。
ソフィの右手が触れた海面からリヴァイアサンに向かって、海水が凍りついていく。
やがてリヴァイアサンの身体ををすっぽりと覆い尽くすまでその氷床は続いた。
自由な身動きが取れなくなったリヴァイアサンは水面から出た首をのたうちながら咆哮する。
遅れて急拵えの足場に降り立ったアオイは、その身体目掛けて愛用の剣を振るう。
アオイの剣もまた、カインによってミスリルのコーティングが施され、強度と切れ味を増強させる付与魔法がかけられていた。
そこにアオイの技術が加わる。それは先日戦ったベヒーモスの角さえ一刀両断させた秘技だった。
「ばかな!?」
痺れる腕を堪えながらアオイが驚愕の声を上げる。
アオイの放った剣撃はリヴァイアサンの肉に達することなく、外皮に防がれ傷一つ付けることが出来なかった。
「アダマンタイトよりも硬いというのかっ!」
この世界で最高の硬度を持つとされるアダマンタイト。
それを研ぐにも削るにも同じアダマンタイトを用いるしかないとされている。
そのアダマンタイトを削ったベヒーモスの角は、少なくともその最高硬度の鉱石と同等かそれ以上の硬度を持つことを示していた。
しかしリヴァイアサンの外皮はそれすらも上回る硬さを持つというのだ。
それはこの世界の人間が知る物質の中には、リヴァイアサンを傷付けることが出来る物が存在しないことを示していた。
その影響で大小様々な波が引き起こされるが、シバのまさに体の一部として舵を取る船は、巧みにその波を捌いていく。
痺れからすぐに解放されたリヴァイアサンの双眸は、久しく感じたことの無い痛みを与えた一人の少女に向けられる。
その隙を狙ってゼロにまたがったサラが、リヴァイアサンへと近付き、こちらも強度と切れ味を最大限に強化した長剣でその眼球を切り付けた。
再び咆哮しながら首をくねらせるリヴァイアサン。
ゼロはぶつからないよう即座にその場から離れ、次の攻撃のタイミングを探る。
突如リヴァイアサンは頭から海中へと潜った。
しばしの沈黙の後、海中から再び顔を見せたリヴァイアサンは首を高く持ち上げる。
その全てを飲み込みそうなほど大きな口を目いっぱいに開けた。
そこから放たれたのは高圧で吹き出された海水だった。
海水でできた巨大な槍のごとく、それはカイン達の乗る船に向け一直線に伸びた。
辛くも直撃を逃れた船だが、その打ち付けられた海水によって発生した水流によって翻弄される。
カインとソフィがほぼ同時に魔法を唱えた。
カインの付与魔法で強化された帆にソフィの放った風が勢いよく吹き付ける。
船はまるで見えない手に押されるように、乱水流から勢いをつけて抜け出した。
恐らくあのままでは徐々に中心に引き寄せられ、最後は恐ろしい圧力の海水の直撃を受けていただろう。
全ての海水を吐き出したリヴァイアサンは再び海へと潜る。
しばらくして顔を見せると先ほどと同様に口から海水を吐き出した。
先程と違うのは、今度はまるで水弾のように単発で何度も吐き出すところだ。
水弾といってもそれは船ほどの大きさと、先ほどと変わらぬ勢いがある。
船に当たればただでは済まないだろうし、空を旋回するゼロに当たれば一溜りもないだろう。
器用に蛇行しながら海水の弾を避ける船だが、リヴァイアサンにもそれなりの知恵があるらしく、行く手を阻むように連続した弾を吐き出してきた。
とうとう避けきれなくなった弾が上空から迫る。
アオイはコハンから渡された薬品が入った瓶を空中へと投げ付けた。
水弾に当たった瓶は割れ、中に入った粘性の高い液体が海水に混ざる。
瞬間爆発音が聞こえ海水は跡形もなく蒸発した。
船とカイン達に吹き付けたのは熱風のみだった。
「咄嗟に投げたが、話以上にとんでもない威力だな! 錬金術というのも馬鹿にできん!!」
「何を投げたの?」
「よく分からんが、なんでも錬金術では欠かせない『触媒』というものらしい。水の触れるとその水を瞬時に消し去るほどの威力があるのだとか」
アオイはこの日のためにコハンからよく分からないものをいくつか受け取っていたが、今投げたのもその一つだった。
アオイは知らなかったが、運良く薬の量が水弾の海水の量に対して十分以上にあったため問題はなかった。
もし海水の量が多すぎれば、沸騰した熱水の弾を浴びることになり、事態はより悪化していただろう。
「さすがコハンさん! 私の姉弟子なだけあるわね!」
ソフィは嬉しそうに呪文を唱え始める。
何より厄介なのはリヴァイアサンが海に潜ってしまえば、こちらから一切手出しができなくなってしまうことだった。
「青は碧。揺蕩うは水の女王。その身は震え、久遠の時を紡ぐ。我、汝に求むは永久の沈黙!」
詠唱の終わりと共にソフィは舷から海中向かってに身を投げた。
海面に触れる瞬間、魔法を発動させた。
ソフィの右手が触れた海面からリヴァイアサンに向かって、海水が凍りついていく。
やがてリヴァイアサンの身体ををすっぽりと覆い尽くすまでその氷床は続いた。
自由な身動きが取れなくなったリヴァイアサンは水面から出た首をのたうちながら咆哮する。
遅れて急拵えの足場に降り立ったアオイは、その身体目掛けて愛用の剣を振るう。
アオイの剣もまた、カインによってミスリルのコーティングが施され、強度と切れ味を増強させる付与魔法がかけられていた。
そこにアオイの技術が加わる。それは先日戦ったベヒーモスの角さえ一刀両断させた秘技だった。
「ばかな!?」
痺れる腕を堪えながらアオイが驚愕の声を上げる。
アオイの放った剣撃はリヴァイアサンの肉に達することなく、外皮に防がれ傷一つ付けることが出来なかった。
「アダマンタイトよりも硬いというのかっ!」
この世界で最高の硬度を持つとされるアダマンタイト。
それを研ぐにも削るにも同じアダマンタイトを用いるしかないとされている。
そのアダマンタイトを削ったベヒーモスの角は、少なくともその最高硬度の鉱石と同等かそれ以上の硬度を持つことを示していた。
しかしリヴァイアサンの外皮はそれすらも上回る硬さを持つというのだ。
それはこの世界の人間が知る物質の中には、リヴァイアサンを傷付けることが出来る物が存在しないことを示していた。
0
あなたにおすすめの小説
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
無能だと追放された「雑用係」のハル、現代の知恵(ライフハック)を駆使したら、呪われた魔王城が聖域化して伝説の賢者と呼ばれ始めた
ユネ
ファンタジー
「君のような無能な掃除係は必要ない!」
勇者パーティーからゴミのように捨てられた雑用係のハル。だが彼女には、前世で培った【家事のプロとしてのライフハック】があった。
移り住んだのは、誰もが恐れる『呪われた魔王城』。しかしハルにとっては、ただの「掃除のしがいがある大型物件」に過ぎなかった!
重曹とクエン酸で呪いを浄化し、アルミホイルで魔物を除け、ジャガイモの皮で伝説の鏡を蘇らせる。
魔法より便利な知恵で、お城はいつの間にか世界一快適な聖域に。
一方、ハルを失った勇者たちは、汚部屋と化した拠点と自らの無知に絶望することになり――。
これは、一人の「掃除好き」が知恵と工夫だけで異世界に革命を起こし、最高のスローライフを手に入れるまでの物語。
主人公は高みの見物していたい
ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。
※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます
※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる