インフィニティ・オンライン~ネタ職「商人」を選んだもふもふワンコは金の力(銭投げ)で無双する~

黄舞

文字の大きさ
6 / 46
第1章

第6話【2回攻撃】

しおりを挟む
「他の方、いらっしゃいませんか? よろしいですか!? それではこれで締め切らさせていただきます! 落札価格1024万!! ありがとうございました!!」


 危ない、危ない。間に合った。
 俺は会場に着いて慌てて目の間のリストを確認してからほっと一息つく。

 狩りに時間を忘れて、気が付くと狙いのアイテムのオークション、入札時刻が差し迫っていた。
 急いで街に帰り手に入れたドロップアイテムを全て売り払い、俺は所持金を1400万まで上げた。

 それにしても俺が狙っているのは、使いようによってはかなり有用になる装飾品だと思う。
 今持っている所持金でも果たして買えるかどうか……。

「それでは次の商品に移ります。次はこのアイテム! 『隼のグローブ』でございます!!」

 NPC、つまりゲームの中のAIキャラが、本物の人間のように滑らかな動きで司会を進める。
 面白いのはここで商品の効果から、このアイテムの見所を紹介してくれるところだ。

「この装飾品。な、なんと!? 2回攻撃が可能になる優れものです!!」

 司会は大袈裟な身振り手振りで商品の説明を続ける。
 テレビで一度オークションの映像がある映画を見た事があるが、もっと粛々としていた気がする。

 そこら辺はゲームをするプレイヤー向けなのか。
 それともオークションによって雰囲気も違うのか。

「しかし、お気をつけ下さい。いくら2回攻撃ができても、攻撃力は半減してしまいます!!」

 司会は右の手の平を額に当て、わざとらしく首を左右に大きく振った。

「ところが、ところがですよ? 逆にいえば攻撃力が関係ないスキルなどはデメリットを受けることなく、2回攻撃ができちゃうんです!」

 やっぱり!!
 俺は思わずガッツポーズを取ってしまった。
 思った通りの性能らしく、是が非でも欲しくなった。

「さぁ! 盗賊になって『盗む』の回数を増やすも良し。補助魔法を一度に2度がけしても良し! 皆様の活発な入札をよろしくお願いします!!」

 司会の掛け声を皮切りにその場にいた色々なプレイヤーが入札の声を上げる。
 オークション会場自体は誰でも入れるため、俺と同じような初心者の姿もチラホラある。

 しかし当然のごとく入札を叫んでるのはみんな強そうな格好をしている奴らだけだ。
 おそらくこいつらはベータ版からの継続プレイヤー。しかもかなりのガチ勢だろう。

 そんな中、俺は周りにバレないように入札を繰り返していた。
 やっているのは腕を前に組み、右手の人差し指を伸ばしているだけ。

「510万! 520万! 550万!!……」

 価格はまだまだ上がりそうだ。
 それでも俺は所持金ギリギリまで指を下げないつもりだ。

 ちなみに、この仕草はオークションに参加を決めた時に画面が現れ説明があった。
 声を上げてもいいし、上昇分を先に指定して、仕草を決めると、司会がその仕草を確認して自動的に入札を受け付けてくれるらしい。

 もし無事に落札できても、俺が買ったということはなるべく知られたくない。
 この前のあいつらは同レベルだから何とかなったが、ここで競り合ってるのは間違いなく所持金だけじゃなく強さもトップのやつらだ。

 もし俺が落札したのがバレてドロップ狙いのPKを挑まれたら敵うわけがない。
 なるべく大人しくしていないとな。

「1005万! 1020万! 1030万! ……1030万! 他にいらっしゃいませんか? それではこれで落札です! 落札価格は1030万!! ありがとうございました!!」

 俺はいそいそと会場を後にした。
 向かったのはオークション会場の出口。

 キョロキョロと周りを見渡し、誰も近くにいないことを確認した後、アイテム画面を出して、新しく表示されているアイテムを選ぶ。
 装備すると黒い皮でできた指なしグローブが俺の手にはめられた。

 甲には鳥のような意匠が浮き彫りされている。
 俺はその手で数回握ったり開いたりを繰り返す。

「よーし。ひとまず。あいつで試してみるか」

 俺はロックビートルの出る狩場に足を運ぶ。
 相変わらず人気がないようで、周りには狩ってるプレイヤーはいない。

「まずは試しに通常攻撃で攻撃してみるか。えい!」

 俺はそろばんを握りしめ、ロックビートルを殴った。
 すると当たる瞬間そろばんが二重に見え、ダメージ0が2回表示された。

「よしよし。これはきちんと効果通りだな。問題はこの次だ。ちゃんと司会が紹介してたから大丈夫だと思うが……」

 俺はロックビートルに向かって「銭投げ」を使う。
 使用する金額は30ジル。ダメージアップの効果を含めても一撃で倒すことはできない。

 スキルを使った瞬間、10と書かれたコインが枚現れ飛んでいく。
 いや。よく見ると、重なって見えるくらい近くにコインが並んでいる。

 合計6枚のコインがロックビートルに当たる。
 スキルの効果が乗り、ダメージ4が2回表示されロックビートルはポリゴン化し消える。

「おおー! やっぱり思った通りだ!! これはいい買い物をしたぞ。これで実質消費する金が半分じゃん!」

 喜び勇んで周りにいるロックビートルをなぎ払った後、俺はレベル上げも合わせてできる適正狩場へと進んだ。
 モンスターのレベルも上がりHPもさらに増えたが、何しろこっちは以前の半分の消費で済む。

 俺は飽きるまで狩りを続けた。
 そしてさすがに朝からずっとやり続けたせいで眠たくなり、ログアウトして固くなった布団に寝転がる。

「よーし。なんだ。『商人』でも全然稼げるじゃん。要はやりようだな。しかし装備とステータスはどうするかな……まぁ、明日考えりゃいいか。明日も休みだし。また一日中できるしな。おやすみなさーい」

 俺は部屋の電気を消して心地よい眠りについた。



【無限】インフィニティ・オンライン速報 Prat.122

930 名前:名無しさんファイト
くっそおおおおお!
犬っころ商人にボス武器盗まれた!!
あいつ絶対チートだろ!!

931 名前:名無しさんファイト
>>930
もふもふ?

932 名前:名無しさんファイト
>>930
嘘乙w
盗むは商人じゃなく盗賊のスキルだろww

933 名前:名無しさんファイト
>>932
嘘じゃねぇって
俺レベル13の大剣使い戦士職なんだが
同じ狩場で見かけた初心者装備の犬っころ商人に一撃で殺られた
ぜってぇチートだろ?

934 名前:名無しさんファイト
>>933
返り討ち乙wwww
商人に負ける戦士職wwww

935 名前:名無しさんファイト
>>933
雑魚乙wwww

936 名前:名無しさんファイト
そんな雑魚の愚痴よりさ
今日、素材の相場が一瞬だけおかしくなかった?

937 名前:名無しさんファイト
>>936
それは既出
盛り上がりすぎてスレがかなり流れた

938 名前:名無しさんファイト
>>936
なになに?
何があったの?

939 名前:名無しさんファイト
>>938
いきなり不人気素材の相場が跳ね上がった
すぐに下がったけどな
俺は転売でめっちゃ儲けた
ごっつぁんですwwww

940 名前:名無しさんファイト
>>939
いいなぁ
俺>>930だけど、武器買い直すための資金調達しようとして爆死
俺が買い占めた途端、誰も買わんくなった(´;ω;`)

941 名前:名無しさんファイト
>>940
雑魚乙wwww
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...