インフィニティ・オンライン~ネタ職「商人」を選んだもふもふワンコは金の力(銭投げ)で無双する~

黄舞

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第1章

第8話【ゴスロリ生産系乙女】

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 あ、そうだった。
 すっかり目の前の地面にうずくまっているロキを忘れてた。

「おい。ロキ。大丈夫か? 踏まれるぞ?」
「あはははは……あー、お腹痛い。ショーニン。あんたほんとに最高だよ」

 前回同様涙目になりながらロキは起き上がった。
 くっそう。イケメンはどんな顔でも様になるな。こいつの本当の顔は知らないけど。

「ごめんごめん。それでさ。カスタマイズ知らないんだっけ? 教えてあげるよ。その代わりさ」
「お。いいのか? でも、その代わりが気になるな」

 俺は何を要求されるか身構えた。
 金ならなんとかなるが、それ以外だと困るな。

 ん? 俺今サラッと凄いこと考えたな。
 金ならなんとかなるなんて、現実だったら絶対出てこない言葉だぞ。

「ちょっとさ。ショーニン。君の頭撫でさせてよ」
「はぁ!?」

 そう言いながらロキは右手を俺の頭に伸ばし、いわゆる「なでなで」をしてくる。
 とっさのことで俺も対応が遅れたが、こいつの動き、素人じゃない……。

「うわぁ! もふもふだね。すっごい撫で心地がいい。あんたを見かけた時から実は目を付けてたんだよね」

 ロキはうっとりした目をしながらひたすら俺の頭をなでなでしていた。
 気持ちが悪……くはないが、俺には例えイケメンであっても男に頭を撫でられる趣味はないぞ!

「も……もういいだろ!? それで! 約束だからな。カスタマイズを教えてくれよ」
「えー。もう終わり? まぁ。いいか。えーっとね。カスタマイズって言うのは……」

 ロキが教えてくれた内容はこんな感じだ。
 プレイヤーが手に入れられる装備は、主にドロップや宝箱からの入手、他に生産職が作った物がある。

 基本的に同じ装備は見た目も同じだが、カスタマイズによって見た目を多少、プレイヤーの技能によっては大幅に変えられるらしい。
 熟練のプレイヤーになると更に効果を付与できるようになるとか。

「俺のこの鎧もさ。いじってんの。かっこいいでしょ? 難点は見た目変わっても性能上がる訳じゃないけど結構金がかかるのと、ユニーク化して売れなくなることだなぁ」
「え!? 売れなくなるの?」

「そうそう。でもさ。逆にいいでしょ。自分のためだけの一点物。もし興味あるならさ。知り合い紹介するよ。きっとあんたならかなり融通聞いてくれると思うよ。俺と一緒だから」

 最後の俺と一緒ってのが気になるが、見た目よりも効果が付与できるって方に興味があるな。

「あ。でもカスタマイズするにしても元になる装備がないな」

 俺は肝心なことを忘れていた。
 この「初心者の服」をカスタマイズしてもたかがしれているだろ。

「うーん。そうだねぇ。フルカスタマイズって言うのもできるよ」
「なんだそれ?」

「できるプレイヤーはそれこそ限られるけど、一から装備を作ってくれるんだよね。今から教えるヒミコちゃんはフルカスタマイズできる子だよ」
「まぁ、よく分かんないけど、とにかく行ってみるよ。どこ行けば会えるんだ?」

「えーっと、ちょっと待ってね。ああ。今、イストワールにいるって。良かった。街にいるみたい」
「それここからどのくらいで行けるんだ?」

 俺の問いにロキは一瞬だけ分からない、といった顔を見せたが、思い出したように頷いた。

「ああ。ごめんごめん。すっかり仲間内で話している気になってたけど、ショーニンは初心者だったね。あ、じゃあ。カスタマイズする金なんてそもそもないか」

 カスタマイズがどのくらい必要なのか分からないが、おそらく金はまた稼げばどうにかなるだろう。
 問題はロキにそのことを教えるかどうかだ。

「まぁ、いいや。きっとあんたなら見せるだけでもヒミコちゃん喜ぶだろうからさ。えーっと、ああ。今からこっちに来てくれるって」
「うん? イストワールってこことは別の街なんだろ? そんなにすぐに移動できるのか?」

 少なくとも今までの狩場に向かう途中で街は一つも無かった。
 そう考えるとそんなにすぐ到着できる距離ではないはずなんだが。

「大丈夫、大丈夫。ポーターでひとっ飛びだからさ。ショーニンはまだイストワールに訪れたことないみたいだからこっちからは行けないけど」
「あ。なるほどな。ワープみたいなことができるのか」

「そういうこと。あ、来たみたいだよ。おーい! ヒミコちゃん。こっち、こっち!」
「え? あの人?」

 俺はロキの目線の先、こちらに向かい手を振りながら駆け寄ってくる女性に目が釘付けになった。
 長いストレートの黒髪、黒目がちな大きな目と小さな鼻と口。

 昔ながらの日本人形のような容姿だ。
 しかしその格好は、かなり洋風だった。

 白を基調としたふりふりのフリルの付いた豪奢なドレス。
 足元は何センチあるのか分からない厚底の白色ブーツ。

 手にも白色の肘まである手袋をはめ、頭にはよく分からないこれも白いヒラヒラが乗っている。
 それがすごい勢いでこちらに近づいてくるのだ。正直かなりの威圧感だ。

「きゃあああ! この子ね!? いやーん。可愛い! すごーい。もふもふ!」
「紹介するよ。生産職のヒミコちゃん。防具が専門でフルカスタマイズもできる凄腕だよ」

 ひたすら頭や顔を撫で付けるゴスロリ系美少女に俺はどうすればいいのか分からず、その場に佇んでいた。
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