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第1章
第28話【ダンジョン攻略-4-3】
目の前の魔人カルラにしっかりと目を向ける。
地面を滑るように移動しながら攻撃してくる姿は、まるで舞踏をしているようにも見える。
攻撃を仕掛ける際に発する合成音声は魅力的で、かつ現実の人間のものとは違った声色だった。
今まで倒した亜人種族のどれとも違う、まさにユニークな見た目をしている。
俺は今飲んだ「滋養強壮薬」の効果が切れる前に、「複利計算」を使う。
【滋養強壮薬】
スタミナみなぎる魔法薬。スキルの持続時間が2倍になる。
これで「複利計算」の効果は2分間に延長された。
そしてレベル60までに得たポイントを全て知識につぎ込んだ俺の知識は300、それが跳ね上がる。
「な、なんだよ、今使ったスキル! 聞いたことないぞ!? そのHP一体どうなってんだよ!?」
「複利計算」のおかげで桁違いに上がった知識に押し上げられた装備の効果で、俺のHPはマザースライムすら軽く凌駕した。
文彦だけでなく、よく見ればロキも顔が笑っていない。
続けて俺はヒミコが作ってくれた装備の固有スキル「ドッペルゲンガー」を使う。
【ドッペルゲンガー】
自身の分身を作り出す。分身は直後に行ったスキルを繰り返し、消える。ドッペルゲンガーが消えた直後に使用者は瀕死になる。
使った瞬間、隣に俺と全く同じアバターが出現する。
装備しているものまで一緒だ。
「そっちは知ってるぞ。馬鹿だなぁ。いくらHPを上げたって『瀕死』になったら意味ないのに。さっきも言ったけど、僕は絶対たすけてやらないからね!」
後ろで独り言を言っている文彦は放っておく。
あと一手で長いようで短かった俺の目標が達成される。
俺は一度深呼吸をする。
そして、使用する金額を上限値の10万ジルに設定した「銭投げ」を魔人カルラに使った。
無数のコインが魔人カルラに向かって飛んでいく。
俺が放ったコインに並ぶように同じ量のコインを分身が放つ。
その全てが魔人カルラの大きいとは言えない身体に襲いかかった。
千万を超えるのダメージが4回表示され、動き回っていた魔人カルラがピタリと止まる。
青いまるで青磁のような顔の肌に無数のヒビ割れが生まれ、剥がれ落ちるように崩れていく。
これで終わりだ、と思っていた俺に思わぬ事態が発生した。
無機質な人形のような顔をしていた魔人カルラの崩れ去って皮膚の中には、憤怒の形相をした般若のような顔が隠されていたのだ。
その顔があらわになった瞬間、魔人カルラの背中が割れ中から膨れ上がった異様とも言える身体がせり出してきた。
その頭の上には新たな名前が表示されていた。
「魔神カルラステギ」、これがこのボスの本当の名前らしい。
オーバーキルをたたき出した先ほどのダメージは全てリセットされているらしく、満たんに回復している。
しかし俺は焦ることなく、念の為にと瀕死に陥った俺のHPを回復するために「金を食う」を使う。
「ドッペルゲンガー」はクールタイムのせいでもう使えないが問題ない。
俺はさっきと同じように「銭投げ」を使った。
元々「ドッペルゲンガー」は必要の無いスキルだったが、せっかくヒミコが作ってくれた装備のスキルだと使っただけだった。
再び無数のコインが魔神カルラステギを襲った。
困ったことに変容を遂げた魔神カルラステギの種族は、今までのどのモンスターも属さない「神」だった。
一撃では倒すことができず、俺は数度「銭投げ」を使った。
ようやく魔神カルラステギのHPは0まで下がり、部屋全体が大きく揺れた。
エメラルドのような肌に変わった魔神の色が服も含めて灰色に染る。
そしてダンジョンの壁と同じように透明になり、全身にヒビが入ると、粉々に砕け散った。
キラキラと輝きを放ちながら、最難関ダンジョンのボス「魔神カルラステギ」はその姿を消した。
次の瞬間、通知が来たので俺はそれを開く。
『おめでとうございます。【神殺し】を達成しました! 特典として一度だけアバターのカスタマイズができます!』
なるほど。これはむしろベータ版からのプレイヤー向けの特典だな。
アバターカスタマイズシステムが未熟な時に始めたプレイヤーへの救済策ってわけだ。
どうやらこいつはこの特典だけで、宝箱はないらしい。
部屋の中心にいつも通りダンジョンの入口に戻るために魔法陣ができた以外は何も無い。
「あっはっはっは! 驚いたな! 本当に倒しちゃったよ! でも、馬鹿だなぁ。お前は僕が憎いんだろ? お前のおかげで僕もこのダンジョンの初達成者だよ!」
「ああ。そうだな。俺一人で倒したが、パーティである以上、お前も達成したことになるな」
「ありがとう。お馬鹿くん。これも僕のブログに載せてあげるよ。きっと前より見に来る人多いんじゃないかな。ま、こんな攻略法なんて誰にも真似できないから意味ない攻略法だけどね」
「なるほどな。好きにしろ」
俺はそれだけ言うと魔法陣へ進む。
ロキも慌ててこちらに駆け寄ってくる。
俺が一足先に戻ると、すぐあとからロキも同じようダンジョンの入口に現れた。
プレイヤー全員に向かって通知が表示される。
『【カルラの神殿】攻略を【ショーニン】たちのパーティが初めに成し遂げました!!』
俺はロキと喜びのハイタッチを交わし、忘れないように文彦を俺のパーティから蹴り出した。
本当はボスを倒した後すぐに外そうと思ったのだが、それはできなかった。
おそらくクリアした判定をキャンセルできないようにのシステム的なものなのだろう。
まぁ、もうすでに終わっていることだから、問題ないだろう。
そんなことよりも早くヒミコに伝えに行かないと。
俺はヒミコが待つ、イストワールのヒミコのアトリエへ急いだ。
☆☆☆
『あっはっは。意味分かんなかったけど、結局僕にとっては結果オーライだね。それにしてもあいつらほんとに馬鹿だなぁ。ボスを倒した後どんなことができるか検証して動画を載せるだけですごいビューが付いて儲かるのにね』
『あ、あれ? いきなり強制ログアウトしたぞ? なんだ? 再ログインできないな。サーバーが落ちたか? マジかよ。使えねぇ運営だな。えーと、あれ? なんの通知も話題も上がってないな』
『は? なんだよこれ! 垢BANって! 何考えてんだよ、クソ運営!! 僕が何したって言うんだよ!! くそ! 僕があのキャラ作り上げるのにどれだけの時間と金をかけてると思ってるんだよ! 返せよ。返せよ!!』
『なんだよこれ……アンチコメントばっかりじゃないか。僕のブログだぞ! お前らがありがたがって見に来てたじゃないか! なんだよ、嘘つき野郎って!』
地面を滑るように移動しながら攻撃してくる姿は、まるで舞踏をしているようにも見える。
攻撃を仕掛ける際に発する合成音声は魅力的で、かつ現実の人間のものとは違った声色だった。
今まで倒した亜人種族のどれとも違う、まさにユニークな見た目をしている。
俺は今飲んだ「滋養強壮薬」の効果が切れる前に、「複利計算」を使う。
【滋養強壮薬】
スタミナみなぎる魔法薬。スキルの持続時間が2倍になる。
これで「複利計算」の効果は2分間に延長された。
そしてレベル60までに得たポイントを全て知識につぎ込んだ俺の知識は300、それが跳ね上がる。
「な、なんだよ、今使ったスキル! 聞いたことないぞ!? そのHP一体どうなってんだよ!?」
「複利計算」のおかげで桁違いに上がった知識に押し上げられた装備の効果で、俺のHPはマザースライムすら軽く凌駕した。
文彦だけでなく、よく見ればロキも顔が笑っていない。
続けて俺はヒミコが作ってくれた装備の固有スキル「ドッペルゲンガー」を使う。
【ドッペルゲンガー】
自身の分身を作り出す。分身は直後に行ったスキルを繰り返し、消える。ドッペルゲンガーが消えた直後に使用者は瀕死になる。
使った瞬間、隣に俺と全く同じアバターが出現する。
装備しているものまで一緒だ。
「そっちは知ってるぞ。馬鹿だなぁ。いくらHPを上げたって『瀕死』になったら意味ないのに。さっきも言ったけど、僕は絶対たすけてやらないからね!」
後ろで独り言を言っている文彦は放っておく。
あと一手で長いようで短かった俺の目標が達成される。
俺は一度深呼吸をする。
そして、使用する金額を上限値の10万ジルに設定した「銭投げ」を魔人カルラに使った。
無数のコインが魔人カルラに向かって飛んでいく。
俺が放ったコインに並ぶように同じ量のコインを分身が放つ。
その全てが魔人カルラの大きいとは言えない身体に襲いかかった。
千万を超えるのダメージが4回表示され、動き回っていた魔人カルラがピタリと止まる。
青いまるで青磁のような顔の肌に無数のヒビ割れが生まれ、剥がれ落ちるように崩れていく。
これで終わりだ、と思っていた俺に思わぬ事態が発生した。
無機質な人形のような顔をしていた魔人カルラの崩れ去って皮膚の中には、憤怒の形相をした般若のような顔が隠されていたのだ。
その顔があらわになった瞬間、魔人カルラの背中が割れ中から膨れ上がった異様とも言える身体がせり出してきた。
その頭の上には新たな名前が表示されていた。
「魔神カルラステギ」、これがこのボスの本当の名前らしい。
オーバーキルをたたき出した先ほどのダメージは全てリセットされているらしく、満たんに回復している。
しかし俺は焦ることなく、念の為にと瀕死に陥った俺のHPを回復するために「金を食う」を使う。
「ドッペルゲンガー」はクールタイムのせいでもう使えないが問題ない。
俺はさっきと同じように「銭投げ」を使った。
元々「ドッペルゲンガー」は必要の無いスキルだったが、せっかくヒミコが作ってくれた装備のスキルだと使っただけだった。
再び無数のコインが魔神カルラステギを襲った。
困ったことに変容を遂げた魔神カルラステギの種族は、今までのどのモンスターも属さない「神」だった。
一撃では倒すことができず、俺は数度「銭投げ」を使った。
ようやく魔神カルラステギのHPは0まで下がり、部屋全体が大きく揺れた。
エメラルドのような肌に変わった魔神の色が服も含めて灰色に染る。
そしてダンジョンの壁と同じように透明になり、全身にヒビが入ると、粉々に砕け散った。
キラキラと輝きを放ちながら、最難関ダンジョンのボス「魔神カルラステギ」はその姿を消した。
次の瞬間、通知が来たので俺はそれを開く。
『おめでとうございます。【神殺し】を達成しました! 特典として一度だけアバターのカスタマイズができます!』
なるほど。これはむしろベータ版からのプレイヤー向けの特典だな。
アバターカスタマイズシステムが未熟な時に始めたプレイヤーへの救済策ってわけだ。
どうやらこいつはこの特典だけで、宝箱はないらしい。
部屋の中心にいつも通りダンジョンの入口に戻るために魔法陣ができた以外は何も無い。
「あっはっはっは! 驚いたな! 本当に倒しちゃったよ! でも、馬鹿だなぁ。お前は僕が憎いんだろ? お前のおかげで僕もこのダンジョンの初達成者だよ!」
「ああ。そうだな。俺一人で倒したが、パーティである以上、お前も達成したことになるな」
「ありがとう。お馬鹿くん。これも僕のブログに載せてあげるよ。きっと前より見に来る人多いんじゃないかな。ま、こんな攻略法なんて誰にも真似できないから意味ない攻略法だけどね」
「なるほどな。好きにしろ」
俺はそれだけ言うと魔法陣へ進む。
ロキも慌ててこちらに駆け寄ってくる。
俺が一足先に戻ると、すぐあとからロキも同じようダンジョンの入口に現れた。
プレイヤー全員に向かって通知が表示される。
『【カルラの神殿】攻略を【ショーニン】たちのパーティが初めに成し遂げました!!』
俺はロキと喜びのハイタッチを交わし、忘れないように文彦を俺のパーティから蹴り出した。
本当はボスを倒した後すぐに外そうと思ったのだが、それはできなかった。
おそらくクリアした判定をキャンセルできないようにのシステム的なものなのだろう。
まぁ、もうすでに終わっていることだから、問題ないだろう。
そんなことよりも早くヒミコに伝えに行かないと。
俺はヒミコが待つ、イストワールのヒミコのアトリエへ急いだ。
☆☆☆
『あっはっは。意味分かんなかったけど、結局僕にとっては結果オーライだね。それにしてもあいつらほんとに馬鹿だなぁ。ボスを倒した後どんなことができるか検証して動画を載せるだけですごいビューが付いて儲かるのにね』
『あ、あれ? いきなり強制ログアウトしたぞ? なんだ? 再ログインできないな。サーバーが落ちたか? マジかよ。使えねぇ運営だな。えーと、あれ? なんの通知も話題も上がってないな』
『は? なんだよこれ! 垢BANって! 何考えてんだよ、クソ運営!! 僕が何したって言うんだよ!! くそ! 僕があのキャラ作り上げるのにどれだけの時間と金をかけてると思ってるんだよ! 返せよ。返せよ!!』
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